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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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出航前のやり取り

アクセスありがとうございます!



 入れ替え戦の翌日早朝、まずロロベリアが寄り合い馬車で王都へ。

 更に翌日、ミューズも家の馬車で王都に向かう予定と二人が日程をずらしたのは単にクローネやサーヴェルに公国へ行く前に食事でもと誘われたからだ。

 遠征訓練を休んで公国に行けるのは二人のお陰。以前アヤトのことで何かあれば相談して欲しいとの言葉通り、学院側に家の事情という理由付けでロロベリアの望みを叶えてくれたのだ。

 故に二人の優しさに感謝しつつ、久しぶりに両親との時間をロロベリアは楽しみ――


「ミューズちゃんに感謝する気持ちは分かるけど、それはそれ。アヤトちゃんとの距離を縮めるのよ」

「……はい」


 しっかり発破を掛けるのも忘れないクローネだった。

 確かに今回の公国行きはミューズが申し出てくれたお陰でもある。もちろん感謝している反面ライバルとして遠慮するつもりはないが、この手の発破は気恥ずかしい。

 そもそも今回の公国行きは事情が事情、距離を縮める云々よりもアヤトの血縁に会ってみたい気持ちが勝っている。

 なんせアヤトが両親を慕っているのはクロ時代から良く聞かされていた。ロロベリアとしては例え肖像画でもワカバがどのような人だったのか見てみたい。また曾祖父の知るワカバやアースラの話を聞ければと思うわけで。


「でもアヤトちゃんのお母さまがヒフィラナ公爵家だったなんてね。私も彼の所作からもしかして貴族の方なのかも、とは感じていたけど驚きだわ」

「私も驚きました……所作については分かりませんけど」

「ロロはその手の教育をほとんど受けなかったものね」

「我の娘だけあって武術にばかり関心を示していたからな」

「あなたが好きにさせるからリースやユースも疎いのだけど……今後はもう少し学ばせるべきかしら」

「まあその話はまたの機会で良いだろう。それよりもロロベリア、この後手合わせをするであろう?」

「もちろんです」

「うむ! 音の発動を習得も含めて楽しみにしているぞ」

「……ウチの夫も子どもたちもこれだから」


 などと最後はクローネに呆れられたが、二人からヒフィラナ公爵家の情報も聞けてロロベリアにとって有意義な団らんを過ごした。



 そして翌日昼前――



「ロロベリアさん、お待たせしました」


 予定通りミューズが王都のニコレスカ邸に到着。

 他にはレムアやダリヤ、フロッツもいる。

 休暇が終わるダリヤは昼食後に帰国するが、フロッツはレムアと共に公国へ同行するメンバーだ。

 というのもフロッツの同行がミューズの公国行きの条件の一つ。教会派のダリヤと違ってフロッツは国王派でリヴァイの右腕、護衛を兼ねた同行を頼まれたらしい。


「ミューズちゃんが心配なのも分かるけど、旦那も人使いが荒いぜ……」

「普段はろくに働かない奴が文句を言うな」

「そう言いながらダリーも俺と一緒に帰国できなくて寂しいんだろ?」

「お前と別行動になれて清々している。なんなら二度と教国の地を踏まなくてもいいぞ」

「……まあまあ」


 相変わらずなやり取りにロロベリアが間に入りつつ食堂に案内。

 ダリヤが帰国する前に昼食を一緒にするつもりで、更にラタニとカナリアも既に到着していた。遠征訓練の引率に合わせて軍務を優先していたラタニは公国に同行するフロッツに直接アヤトを頼むと伝えておきたいと時間を作り、カナリアは久しぶりに会いたいと同伴。

 二人もカナリアとの再会を楽しみにしているが、やはりラタニに興味があるらしい。

 他国にその名を轟かせる王国最強の精霊術士でありアヤトの師となればむしろ願ってもないと、快く受けてくれたが――


「あんたらが剣聖さまとフーちゃんかい? アヤトやカナちゃんから色々と聞いてるよん」


「あ、ダメだ。この人アヤトくん並みにヤバイ」

「失礼な発言をするな……気持ちは分かるが」


 名声とは裏腹なフランク対応よりも、ラタニを見るなり二人は表情を歪ませてしまう。

 顔を合わせただけで何か感じ取ったのか。思い返せば二人やエニシもアヤトと会った際、ある程度実力を察していた。やはり修羅場を潜った強者となればそういった嗅覚も培われるらしいとロロベリアは感心。

 ただ相手はラタニ、そんな反応を見せればどうなるかとの怖さもある。


「なんだいなんだい。そんなにラタニさんと遊びたいのかい? ならリクエストに応えちゃうぞー」

「そんなリクエストしてないから!」

「アヤトを任せるフーちゃんの実力試しも兼ねてかかってこいやー」

「俺はミューズちゃんの護衛であってアヤトくんの護衛でもないし必要ないでしょ! ていうかあんたと遣り合うくらいなら上位種にケンカ売った方がまだマシだ!」


 予想通り悪ノリするラタニに全力で拒否するフロッツという展開に。


「……隊長、フロッツさんが困っています」

「私としては困らせて構わないが」

「それはないってダリー!」

「お気持ちは分かりますが出立前にフロッツさんが使い物にならなくなります。そうなればミューズさまやレムアさんに迷惑がかかるでしょう」

「……仕方ない」


 しかしさすがはカナリアと言うべきか、ラタニの悪ノリを押さえ込み場を取り繕う手腕は見事の一言。


「隊長、まずはちゃんと自己紹介をしてください」

「ほいな。つーわけで、あたしがラタニ=アーメリさね」

「ダリヤ=ニルブムです」

「……フロッツ=リム=カルティだ」

「カナリア殿も久しぶりだ」

「ですね。あなたも息災のようでなによりです」


 そのままカナリア主導でようやくまともな対面を果たし、続けてダリヤとカナリアは笑顔で再会の握手を交わす中、フロッツが神妙な顔つきで口を開く。


「ところでカナリア殿。アヤトくんやラタニ殿を見事押さえ込めるあんたにお願いがあるんだけど……アヤトくんと公国に行く俺になにかアドバイスとかない?」

「ありません」

「ねぇのかよ……」

「そもそもアヤトさんや隊長を私が押さえ込んでいるという認識が間違いです。そして全てにおいて規格外な二人の手綱を握れるはずがありません。なので握るよりも後手後手になろうと諦めず叱り続け、時には諦めるのをお勧めします」

「それ矛盾してるだろ」

「でなければ病むので……ああ、ですがフロッツさんには頑張って頂かなければアヤトさんがなにをやらかすか――」

「……今さらながら俺、とんでもない役目を押しつけられたんじゃね?」


 などと助言どころか不安を煽るカナリアにフロッツは心底後悔していたが、時間は限られているので改めて昼食の席に就く。

 まあラタニが場を引っかき回してはカナリアが叱りを繰り返してはダリヤやフロッツを呆れさたが、それはそれで楽しい時間を過ごした。



 ◇



「ロロベリアお嬢さま。そろそろ出発の準備を」

「もうそんな時間か」


 ラタニとカナリアが軍務に戻るに合わせて出発したダリヤを見送ってしばらく、夕刻になりロロベリアたちも出発の時間となった。

 公国には船で向かうのでニコレスカ家の馬車で港に。

 そしてギリギリまで学食の仕事をしていたアヤトとは港で合流する予定で。


「よう」

「マジで走って間に合うのかよ……」


 教国行き同様、船着き場から少し離れた岩場であやとりを興じているアヤトを見るなりフロッツは肩を落とす。昼過ぎにラナクスを出発して夕刻に到着するには馬車では不可能。言わずもがなアヤトは馬車を使わず走ってきたので間に合うも、ラナクスから王都の港まで走って当然の状況にフロッツが呆れるのも無理はない。 


 ちなみに義兄の母の実家とはいえ、公爵家に滞在するのは緊張するのでマヤは留守番を主張。ニコレスカ姉弟の遠征訓練に合わせて王都でラタニの住居でお世話になる予定だが、実際は顕現したままよりアヤトを観察しやすいとの理由。なので今も姿を消してどこかにいるハズで。


「アヤトさま、ロロベリアお嬢さまをお願いします」

「願うならフロッツだ。なんせ今回の保護者だからな」

「……ロロちゃんなら構わんけど、お前のお守りはなぁ……」


 それはさておき見送りに来た使用人の一礼もアヤトは一蹴。ロロベリアを押しつけられるよりもカナリアに変わってアヤトのお目付役を任されたフロッツは実に気が重い。


「では行くか」

「そんでもって一人でさっさと行くし……」


 そんなフロッツの心労も無視、レムアから乗船券を受け取るなりアヤトは早々に船着き場へ。


「アヤトさまですから」

「ミューズちゃんは全部それで済ませない」

「カナリアさまも時には諦めも必要と言ってましたよ」

「微力ながら私も協力しますから共に頑張りましょう」

「……頑張るしかないか」


 ミューズはさておき、ロロベリアやレムアに励まされながらフロッツも重い足どりで乗船した。




今回の被害者……もとい同伴者はフロッツとなりましたが、今回免れたカナリアも王国で一喜一憂してるでしょうね。

そしてギリギリですが公国に出発。次回から舞台は公国に移りますが、まずは久しぶりの人物と再会します。

なのでアヤトくんたちとヒフィラナ公爵家との顔合わせはもう少しお待ちを。


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読んでいただき、ありがとうございました!




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