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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十三章 叶わぬ夢を花束に編
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葛藤に続く展開

アクセスありがとうございます!



 ヒフィラナ公爵家現当主に孫娘の忘れ形見、アヤトと引き合わせる為にギーラスはダリアやフロッツを説得要因として王国に向かわせた。

 しかし元より気難しい性質から説得は難しいと思われていた中、アヤトの両親に対する想いを知り、当主の仕打ちから印象は良くないだろう。


「今回ばかりは面倒で済ますわけにもいかんか」


「「……あれ?」」


 より困難と内心悩みつつ持ち出してみれば、説得せずとも前向きな姿勢にダリヤとフロッツは肩すかし。


「なんだ」

「いや……俺はてっきり面倒だーとか、なぜ俺が会わねばならん、みたいに突っぱねると思ってたからよ」


 なので訝しむアヤトに予想していた返答を声真似しつつフロッツは疑問視。


「バカにしてんのか」

「してないしてない。でも意外だわ、受け入れてくれるんだ」

「無闇に調べるつもりはなかったが、偶然でも知ったからな。面倒でも会う価値はある」

「……そうか」


 もしかして当主に思うところはないまでも、敬愛していた両親の話を聞きたいのかもしれないと判断したダリヤは安堵の笑みを浮かべる。どのようなことがあろうとダリヤにとってギーラスは恩人、出来る限り恩返しをしたい気持ちはあるのだ。

 またアヤトにも多大な恩がある、両者の望みを叶えられるなら喜ばしいことはない。


「だがま、母は元公爵令嬢でも俺は根っからの平民だ。加えて周囲から心配されるほどに礼儀正しい作法なんざ知らん不作法者とは爺さんにも伝えている」


「…………」


 故に早速日取りなどの打ち合わせに入ろうとするも、不敵に笑うアヤトに寒くもないのに悪寒が走った。


「それ知った上で俺と引き合わせようとしていると捉えても構わんな」


「……なあダリー。ギーラスさまには無理でしたって報告した方が良くないか?」


 どうやらフロッツも感じたようで耳打ちしてきた。


「私にギーラスさまに嘘の報告をしろというのか」

「だってアヤトくんだぞ? いくら忘れ形見でも当主殿にケンカ売るのはヤバイだろ」

「それは……いや、だがしかし……」


 即座に拒否するが起こりうる危険性を囁かれてはダリヤも揺らいでしまう。

 なんせ相手が誰だろうと関係なくアヤトは不敬な態度を取りまくる。現に教国ではリヴァイやギーラスにも初対面から自分たちとの対面時と同じような対応をしたと聞く。

 そして両親に対する仕打ちから当主に思うところがあれば関係なく辛辣な言葉責めをする可能性は非常に高い。会う価値とやらも両親に変わって糾弾するとの意味合いか。


「テメェら聞こえてんぞ。つーか無駄なケンカなんざ誰が売るか」


 苦悩するダリヤを他所にアヤトはキッパリ否定。

 義理堅いアヤトのことだ。一度口にしたなら守るとダリヤは前向きに捉えて――


「むろん売られれば買うかもしれんがな。舐められるのは趣味じゃねぇ」


「ダリー……マジで無理でしたって報告しないか?」

「後悔している当主殿がアヤト殿にケンカを売る理由はない。それにお前もアヤト殿が無闇に力を誇示しないのは知っているだろう」

「知ってるけどアヤトくんだぞ? 売らなくても売られたら相手が教会だろうと買ったんだぞ? 当主殿じゃなくても周りが売るかもしれないじゃん」

「それは……いや、だがしかし……」


 ――いたのにほくそ笑むアヤトとフロッツの耳打ちに再び揺らいでしまう。

 アヤトの強さは大切ななにかを守る為。本人は自分の為と言い張るも周囲の為に振るうのはダリヤも知るところ。

 しかしやられたら遠慮なくやり返すのもアヤトだ。

 当主がアヤトの振る舞いを好意的に受け入れても周りは違う。相手が誰だろうと不遜な態度を崩さないもあるが、公爵家の正統な血筋を持つ者を周囲がどう捉えるかは予想に容易い。

 特にアヤトが敬愛する母は当主の意向に背きヒフィラナ公爵家を廃嫡された身、そして敬愛する父はその母と身分違いの恋をした身。

 もし周囲が両親の行いを持ち出してアヤトを批判するものならどうなるか。

 教会派をたった一人で無力化してしまった実力があればヒフィラナ公爵家など脅威ですらない。つまり相手が大貴族だろうと大切な両親の尊厳を守る為ならアヤトがその実力を大いに振るう可能性は非常に高い。両親の尊厳ではなく自分の為だと言い張って。


「だから、聞こえてんぞ」


 などと苦悩するダリヤにため息一つ、残るお茶を飲み干したアヤトは気怠げに告げた。


「別に無理にとは言わんぞ。価値はあるが面倒でもあるからな」

「少し……待ってくれ」


 その行動からこれ以上判断を先延ばしにすれば話し合いは終わりと捉え、決断を迫られたダリヤは思考をフル回転させた。

 フロッツの指摘通りアヤトと当主を引き合わせれば色んな意味で危険なのは確か。

 しかし過去を過ちとして後悔している当主にせめてもの救いとしてアヤトを引き合わせたいとギーラスは願っている。もしかするとアヤトにとっても有益な時間になるかもしれないのだ。

 なによりアヤトが色々な意味で規格外なのはギーラスも知っているはず。それでも尚、こうして自分たちを説得に向かわせたのはギーラスもアヤトがなにもやらかさない……多少はやらかすかもしれないが国際問題に発展するようなやらかしまではしないと信頼したからこそだろう。

 ならばダリヤの決断は一つしかない。


「……………………………………私はアヤト殿を信じる」

「信じるわりにはずいぶんな長考だ」


 まあダリヤが最終的に信じたのはアヤトではなくギーラスだがそれはさておき。

 決断したなら後には引けないとダリヤも腹をくくって今後の打ち合わせに挑むのみ。出来る限りやらかさないよう相手側にアヤトの性質を伝えて理解という覚悟をさせておく必要がある。また教国でカナリアが請け負ったフォロー役なども必要だろう。

 今さらながらカナリアの苦労を大いに理解し、尊敬の念を抱くダリヤを無視してアヤトは我関せずと話を進めていく。


「面倒事は早く済ませたい。入れ替え戦が終わり次第、こちらからお邪魔すると爺さんに伝えてくれ」

「入れ替え戦後って……まさか遠征訓練サボるつもりか?」

「二学生の序列保持者は特別枠だろ。それに家の事情で学院を休むのは正当な権利だ。問題ねぇよ」


 ユースの質問を一蹴するように遠征訓練は本来三学生の行事。そもそもアヤトに実地での訓練など今さら、むしろ不参加のほうが目立たなくて済む。

 またマイレーヌ学院では家庭の事情で試験を受けない学院生もいる。亡き母の祖父との面会なら家庭の事情として扱われるだろう。


「広めるつもりはねぇがエレノアには一応事情を説明しておくか」

「それとラタニさんにもな。お前の保護者だろ」

「保護者関係なく話すつもりだ。その二人になら構わんな」

「元より内密に引き合わせるつもりはない。アヤト殿が信頼しているなら事情を話してもいいだろう」


 早速アヤトに振り回されるダリヤにも策はあり、要望通りの入れ替え戦後までに調整する自信はあった。


「……フロッツ」

「面倒事が終わったらデートで受け持つぜ」


 故に協力を求めれば足下を見られると散々な状況。

 しかしこれもギーラスやアヤトの為。


「…………仕方ない」


 苦渋に満ちた表情で受け入れた。


「アヤトさま……宜しいでしょうか」


 後は詳しい日程や対策を煮詰めていくはずが、静観していたミューズが突然割って入る。


「厚かましいお願いで恐縮ですが、公国行きにわたしも同行させてもらえないでしょうか」

「あん?」


 思わぬ申し出に首を傾げるアヤトに構わずミューズは続ける。


「それとロロベリアさんもご一緒に……どうかお願いします」


「……へ?」


 同じく静観していたロロベリアは展開に追いつかず目を丸くしていた。




アヤトくんは別に煽っているわけではありません。

そしてフロッツやダリヤの心配や葛藤も大いに分かりますが、カナリアは苦労はこんなものではありません。

それはさておきアヤトの公国行きにミューズが名乗りを上げ、更にロロも加えられましたがミューズの真意、また二人の同行が許可されるか否かは次回で。



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