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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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先延ばせない事態

アクセスありがとうございます!



 ――私はちゃんと笑顔で見送った。

 だから今くらいはもやもやしても問題ないからとりあえずもやもやしよう。だってミューズさんはレクリエーションで頑張った私を労って欲しいとアヤトに頼んでくれた。なら私もミューズさんのデートを快く見送らないとフェアじゃない。だからミューズさんとデートをするアヤトをちゃんと笑顔で見送った。だから今くらいもやもやしても許されるからもやもやします。

 アヤトは義理堅いから教国でお世話になった借りを返すのは当然だし、そんなアヤトを何だかんだで好きだから全然良いしむしろ変にミューズさんを蔑ろにされる方がイラッてするからもやもやなほうがいいけどそれはそれ。たしかお茶をする約束をしたはず(←これ大事。決してデートではない(←アヤトの中で。現に出かける時もデートは否定していた)でもミューズさんや私はデートと認識しているもやもや)のになぜなにをプレゼントするか、みたいな呟きをしていた? 聞いてもさあなで交わされたもやもやはさて置こう、置きたくないけどとにかくお茶をするなら茶葉、または茶菓子の用意ならまだ分かる。外出ならお土産持参も違うけどでもお茶でプレゼントとはこれいかにもやもや。例えデートでもプレゼントを用意する必要があるのだろうか? その辺りがちょっと分からない。なんせ私はアヤト以外とデートしたことがないにまにま……ではなく、私とのデートではプレゼントなんて用意していなかったはず。変わりにサクラとのデートではなぜか私にお土産という名のプレゼントはしてくれたけどもちろんそのハンカチは大事に使っている真っ白のハンカチ……アヤトの中ではどうしても私は白色が印象になるらしいそれは構わないけどそうじゃなくて……そうでもない。確かサクラとのデートではサクラにプレゼントを買ったと聞いている。ご馳走になったお礼という名のプレゼントだならミューズさんにもプレゼントは必要か? 教国では色々お世話になったしご馳走もしてもらったならプレゼントは必要だ、うん、ならプレゼントはこの際もやもやの対象外にしよう。それに私はアヤトに何かしてるわけじゃないしデートもユースさんに勝ったからであって借りとかじゃないから私とのデートでプレゼントしてくれなかったのも仕方ない……別に仕方ないし……むう。

 よくよく考えれば私はアヤト以外とデートしたことないのにアヤトは私以外でサクラ、今回はミューズさんとデートしたことになる……もや……それこそ仕方ない。それはアヤトの自由だし私は他の人としたいとは微塵も思わない……うん、それに私はアヤトと王都デート以外でも精霊祭デートをしている……ユースさんには否定したがこの際初めて霊獣地帯に行ったアレもデートの内に入れよう。つまり三回、一緒に暮らしてるから買い出しとかも含めれば更にだ、ならやはりもやもやする必要は無いのか? 思えば私は結構恵まれているし――



「ロロ動かない」

「表情は動きまくりだけどな」


 玄関先で固まったままのロロベリアを不思議そうに見詰めるリースと呆れるユース。

 まあミューズへの拝領として、引きつった笑みではあったが最後までアヤトを見送ったなら好きなだけもやもやしても構わないとユースは放置。

 それよりもと、わざわざ姿を顕現して共に見送ったマヤに注目。


「てっきりワクワクしながら観察すると思ってたんだけど。マヤちゃんがアヤトとミューズ先輩のデートを観察しないのはどうしてだ」

「興味はありますがミューズさまはわたくしが近くに居ると察するようなので。せっかく兄様とデートをされるのであれば、心から楽しんで頂きたいのですよ」

「……それはまた随分なお気遣いで。にしてもミューズ先輩はなんでマヤちゃんを察することが出来るんだ?」

「それは聖女さまだかでしょう」

「聖女さまねぇ……マヤちゃん、なにか隠し……まくってるか」

「隠し事は女性をより魅力にするスパイス、とシャルツさまが仰っていましたよ」

「神さまにも性別とかあるんですかね……ていうか、神さまの隠し事とか怖いだけなんだが」

「それはなによりです」

「……マジ怖いんですけど」


 明確な理由が全く読めないだけにユースはため息一つ。ただ元よりマヤは気まぐれ、そのうち気が変わって観察しに行くだろう。


「……よし」


 などと考えている間にロロベリアも折り合いを付けたのか表情が引き締まった。


「もう満足か」

「お待たせしました。では行きましょうか」


 今日はサクラの屋敷でお茶会とエニシに訓練を付けてもらう約束をしている。もちろんメインはエニシの訓練……皇女を蔑ろにする約束もどうかだがサクラとの間では今さら。むしろ休養日に遊びに来る友人がいるのを嬉しく思っているほどだ。


「ほんと切り替えの良さは一級品だな」


 それはそれとしてお茶会はお茶会、訓練は訓練、もやもやはもやもやとその都度気持ちを切り替えるロロベリアにユースは関心していた。


 まあその都度切り替えるからこそ今日は度々もやもやしていそうだが……。



 ◇



 ロロベリアがもやもやしていたように、アヤトはミューズと外出の予定。

 卒業式前の約束だったが以降は選考戦に参加、入学式からはファルシアンやレイティの一件で学院内が慌ただしくとても外出する余裕がなく遅れに遅れた結果で。

 加えてもうすぐ序列入れ替え戦や遠征訓練が控えている。三学生のミューズは当然、二学生の序列保持者も参加するので更に忙しくなる前にと決まったのだが――


「本日はありがとうございます」


 学院近くで待っていたミューズはやってきたアヤトに恭しい一礼を。

 ただデートにしては軽装で、当初の予定では二人きりの外出にも関わらず背後にレムアを加えた従者が三人控えていた。

 というのも入学式後の一件で学院生の間でアヤトの知名度は良くも悪くも更に上がっている。学院内とはいえ王侯貴族に対して無礼な対応、聖女と慕われているミューズと懇意にしていることで元より印象が悪い。

 しかしエレノアの独断で学院生が目標とする真の学院最強という印象で少しだけ緩和されている。本当に微々たるものだがアヤトの悪評が落ち着いたのも確か。


 にも関わらずアヤトとミューズが二人きりでラナクスの街並みを歩く、つまりデートをすればどうなるか……言うまでもなくミューズのファンが再びアヤトを敵視、印象も元通りどころかより悪化する可能性が高い。

 せっかく学院が落ち着いたところで新たな火種は起こしたくないとエレノアが慮り――


『たのむミューズ……しばらくカルヴァシアとの外出は控えてくれ』


 生会長の立場から泣く泣く親友に願ったのは言うまでもない。

 だが楽しみにしていた外出を更に先延ばすのも心が痛む。故に二人きりの先延ばしする変わりにミューズの手伝いをして欲しいと事前にアヤトに直談判していた。

 二人きりではないが、アヤトと過ごす時間が少しでも増やせればとの配慮で、意外にもアヤトはすんなり了承。肩すかしを食らうも親友を悲しませずに済むとエレノアが感謝したのも言うまでもない。


 つまり今日は急遽予定を変更して教会の奉仕活動をするミューズの手伝いをする為の外出。レムアたちと一緒なら二人きりでもなく、奉仕活動の手伝いを目撃されてもせいぜいアヤトが心を入れ替えた……とまでは思われなくても嫉妬される事態にはならない。むしろこの機会に他の学院生が率先して奉仕活動に参加すれば良いとの狙いもあった。


 ちなみにただでさえ言葉足らずなアヤト。予定変更をわざわざ報告するハズもなく、ロロベリアたちはエレノアの直談判でデートが先延ばしになったのを知らない。

 そして報告されずとも普段からアヤトを観察しているマヤはもちろん知っているからこそ、奉仕活動の手伝いを観察するよりもロロベリアがどんな心理状況で過ごすか興味がありそちらを優先しただけで、デートはしっかり観察して楽しむつもりだった。


「どういたしまして。ま、エレノアの言い分も理解できるし、この程度であいつにカリを返せるなら安いものだ」

「エレノアに借りですか……?」

「とにかく俺はなにをすればいいんだ」

「教国の教会で振る舞って頂いたお菓子を作って頂ければと。常々ラナクスの子どもたちにもアヤトさまのお菓子を食べて欲しいと思っていたので」

「なら材料の買い出しが先か。他は」

「……本当に宜しいのですか?」

「俺は手伝うと約束したはずだ。遠慮される方が気に入らん」

「そうですね……子どもたちと一緒にお花を植える予定なので花壇造りを手伝ってくれませんか」

「他にも建物の補修や掃除など雑務はたくさんあります」

「レムアさん、さすがにそこまでして頂かなくても――」

「アヤトさまが遠慮なくと仰っているなら遠慮するほうが失礼ですよ、ミューズさま」

「とまあレムアの言う通り、存分にこき使え」

「では……お願いします。アヤトさま、改めて感謝を」

「感謝が好きな奴だ」


 それはさておきミューズに対して不躾な対応をされてもレムア以外の従者が微笑ましく見守っているのも今さら。

 むしろ出来るだけアヤトと二人きりで作業できるよう打ち合わせ済みで。


「まずは商業区ですね。みなさん、行きましょう」


「「「畏まりました」」」

「へいよ」


 精霊力の視認で感情を読めても、従者の思惑までは読み切れないミューズはもやもやで忙しいロロベリアと違って想像以上に楽しい一日を過ごした。


 しかし翌日――


「ミューズ、久しぶりだな」

「おっす」


「……どうしてお二人が?」


 突然王国に訪れたダリヤとフロッツからアヤトの両親に関する情報を聞かされるとは想像すらしていなかった。




十二章オマケ最後はミューズとのデート……が先延ばしになった内容です。

もちろんロロのもやもやシリーズを入れたかったわけではありません。確かにオマケとはいえ十二章にももやもやシリーズを入れられて作者的には満足していますが……それでもなにかすみません(汗)。

とにかく読んでいただけて分かるようにラナクスでアヤトとミューズが二人きりでデートをするのは難しく、また次章にも関わるのでミューズさんには申し訳ないですが先延ばしにさせていただきました。

ちなみにエレノアへのカリですけど、学院に残る独断をしてくれたものです。つまり捻くれているだけでアヤトくんも感謝してるんですね。

それはさておき、先延ばしたデートは後ほどとして、これにて十二章も本当に終了。


そして次回更新から第四部及び新章開始。

ダリヤとフロッツがもたらしたアヤト母の情報。これまでオマケなどで少しだけ話題に出ていた両親について色々と明かされます。

母の出生を知ったアヤトがどう動くか。同時に『もう一人の終章』ついても触れていきます。


では第十三章『叶わぬ夢を花束に編』をお楽しみに!



少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!


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