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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
531/779

乙女の時間 再び

アクセスありがとうございます!



 同日夜――


 夕食や訓練を終えれば後は就寝。

 部屋割りはエレノアとミューズ、ロロベリアとマヤ、ランとリース、イルビナとレイティとなっている。マヤは普段ロロベリアと同室、故にリースはランと同室になったが、異議を唱えず了承したリースも精神的に成長しているのだろう。

 また男性陣は女性陣が宿泊する客間の一階下を利用。部屋割りはユースとディーン、ジュードとルイ、レガートとシエン、ファルシアンとエランが同室、アヤトは一人で一室とサクラの配慮で貴族平民よりも同年代を優先、立場を気にする間柄でもないので今さらだった。


 そして皇女が一風変わっているのも今さら。つまり皇女の屋敷だろうとお泊まり会を開いて素直に就寝するはずもない。


「お待たせー」

「お待たせです」


「二人とも、待っておったぞ」


 ランとリースの訪問にサクラはワクワク顔でお出迎え。

 またエレノア、ミューズ、ロロベリアも居る。それぞれ入浴を済ませて寝衣の姿でサクラの寝室に集まったのは女子会の為。

 発案者はもちろんサクラ。親善試合やそれ以降も女子会を開いているとロロベリアやランから訊いて羨ましかったのだろう。故にお泊まり会に招待したのだが――


「……なにこの状況」


 室内を見るなりランは唖然。

 寝室の広さはまだしも、豪華なベッドが隅に追いやれ室内中央に円を描くよう敷き詰められた布団が九組。数は女性陣の人数にしてもまさかの光景。


「ベッドやテーブルよりもこの方が気兼ねなくお茶や菓子を楽しめるじゃろう。しかも眠くなればすぐに寝られる」

「まさかあたし達……ここで一緒に寝るの?」

「今まで散々、妾を除け者にしておったんじゃ。今夜くらい付き合ってもよいではないか」


 サクラの批判にエレノアやロロベリアは苦笑い。

 というのも夕食後はアヤトとエニシを教官とした序列保持者とイルビナの強化合宿状態。サクラの相手をしていたのはレガートとシエン、後はマヤくらい。

 更に入学してからは色々あってサクラとの交流はほぼない。特にランはエニシとの訓練目的で訪れているだけに耳が痛い。

 それでも床敷きの布団で王女や皇女、貴族令嬢と雑魚寝をする日が来るとは思いもよらず、この女子会にかけるサクラの意気込みを舐めていた。


 しかしこの一年、立場を超えた付き合いを経験したラン。サクラやエレノアが良いというなら覚悟を決めるしかなく。


「……後はイルビナとレイティだけど……マヤちゃんは?」


 全く気にせずロロベリアの横を陣取るリースを他所にランは質問を。覚悟を決めてもせめて同じ平民のマヤの隣りにしたいのに姿がない。


「マヤちゃんはもう寝てます」

「もう?」

「早く寝る子なんで……」


 そう返すロロベリアだが実のところマヤは観察優先で参加しなかっただけ。要は自分たちの時間やアヤトたちの時間を気兼ねなく楽しむつもりで――


『ロロベリアさま、感謝します』


『……どういたしまして』


 ……脳内に響くクスクスとの笑い声に心内で返答。


「残念じゃが無理させるわけにもいかんからのう」

「だよねぇ……」


 故にマヤの不参加を残念がる面々になぜかロロベリアの胸が痛んだ。


「お待たせ」


 それはさておきランがリースの隣を選んだところでイルビナも訪問、しかし同室のレイティの姿が無い。


「レイティ起きない」


 問う前にイルビナから予想通りの返答が。

 レイティだけでなくファルシアンやエランも夕食時から疲労困憊、夕食後の訓練には姿を見せなかったほど。アヤトとの模擬戦でぼっこぼこにされ、心身のみならず精霊力も消耗すれば無理もない。

 最終的に月守を抜かせたが結果は惨敗。ただ心が折れず闘志を燃やしていた三人の今後は楽しみでもある。

 つまり同学年との交流はほとんど叶わなかったがサクラも不満はなく。


「一学生は妾のみか。少しばかり肩身が狭いのう」

「それは唯一平民のあたしでしょ。だから率先してお仕事しましょうか」

「手伝う」

「なら私はお茶を煎れます」

「ではわたしはロロベリアさんのお手伝いを」

「私が煎れるから二人は座っていろ」

「もぐもぐ」


 マヤとレイティ分の布団を片付けるランとイルビナ、エレノアにお茶の用意を断られるロロベリアとミューズ、フライングで茶菓子を頬張るリースでサクラ希望の女子会が始まった。

 ちなみに最終的な寝床は主催者のサクラから時計回りでエレノア、ミューズ、イルビナ、ラン、ロロベリア、リースの順に決定。

 学院でも最上位に位置する王女と皇女に教国の伯爵令嬢、子爵令嬢三人(内一人は養子だが)の集う女子会となれば唯一平民のランはとても肩身が狭い。


「そう言えばアヤトはグリードさんに頼まれてイルビナを鍛えてたんだよね」


 ……わけもなく、これまでの経験からすっかり度胸がついたお陰でむしろ率先して話題振り。


「ならイルビナの実力を知ってたことになるけど……実力を隠してたのにどうしてグリードさんは知ってたの?」

「一度手合わせしたから」

「したの?」

「グリードさんも学院の施設で訓練してた。度々顔合わせてたら卒業前にやろうって」

「……隠してたのに本気を出したの?」

「ちゃんと負けた。だからびっくり」

「グリードさんも実力者で、後輩を良く見ていた先輩だ。驚くことでもないだろう」


 無表情で感情を口にするイルビナにエレノアがしみじみ呟く。

 恐らく手を抜かれたと察した上で、実力を隠すイルビナに多くを訊かず敢えてアヤトに託した。後輩思いで陰ながら尽力するグリードらしい配慮だ。


「ただアヤトはワタシが望まなければ知らないって断ったらしい」


「「「ああ……」」」


 また頼まれたからと言って素直に協力しない捻くれ者のアヤトらしい返答にエレノア、ロロベリア、ランも納得。まあアヤトは本人の意思を重視する傾向がある。自ら強くなろうとしなければ意味がないと断っても仕方がない。


「でもワタシが斬りかかったら遊んでくれるようになった」


「「「斬りかかった!?」」」


「全力で後ろから斬りかかったけど振り返りもせず防がれた。通じないと分かってても悔しかった。ぐぬぬ」


「「「ぐぬぬじゃない(ありません)!」」」


「イルビナさん。いくらアヤトさまには通じないと分かっていても失礼です」

「ちゃんとごめんなさいした」

「……そうですか。なら心の広いアヤトさまのこと、お許しになったのですね」

「許してもらえたから遊んでくれた」

「よかったですね」


「「「…………」」」


 ミューズのお叱りも間違ってはいないが、注目するのはそこではないと三人は脱力。


「よかった。早起きは大変だったけどお陰でちょっとだけ強くなれた」

「……早起き? いつも早朝稽古してたの?」

「レクリエーションまで毎日してた。ただ今後はたまにしか遊んでくれないのが残念。しょんぼり」

「ま、まあ今後はあたしたちとも一緒に訓練すればいいじゃない。同じ学院生会なんだから時間も合うし、あたしはイルビナの剣術に興味あるのよね」

「ありがとう」


 とりあえず疑問が払拭されたランは早速お誘い。剣術の基礎を伸ばすにはイルビナの剣術に触れておくべきなのでお互いの為になる。

 しかしイルビナの話を聞いたサクラの目が怪しく光った。


「つまりお主はアヤトと毎朝二人きりでおったと」

「立ち合いしながらだとお喋りしてくれるから。でも半分以上はさあなで交わされた」

「じゃろうな。しかし稽古とは言え毎朝二人きりとはのう……」

「なに?」

「いや、お主もアヤトを知る内にロロベリアやミューズ殿のようになんらかの感情が芽生えておらんかとな」


「「サクラ!?」」


 突然の話題変更に名指しされたロロベリアはともかく、なぜかエレノアが驚愕。


「口が悪く捻くれておるが、何だかんだであやつは良い奴じゃ。知れば知るほど惹かれることもあろうて」

「そこんとこどうなの? イルビナ」


 もちろんサクラは無視で悪ノリを続け、この手の話が大好きなランも興味津々で詰め寄った。


「アヤトは意地悪だけど良い人。でもそれだけ」


「「……ちっ」」


「サクラはどうして舌打ちしたの?」

「ランもだ」


 からの、イルビナの返答にとても残念がる二人にロロベリアとエレノアが詰め寄る結果に。


「ならお主は好意を寄せている者はおらぬのか」

「今までいっぱいいっぱいで考える余裕なかった。ただ実家の問題が解決したら、ちょっとだけ考えてみたい」

「そっか……でもそれもいいかもね。じゃあイルビナってどんな人がタイプ?」

「アヤトみたいな奴はどうじゃ?」


「「どうしてサクラはアヤトに拘る(んですか)」」


「アヤトさまですから」


「「ミューズ(さん)は全部それで済ませない(でください)」」


 突っこみに忙しいエレノアやロロベリアを他所にランの質問に思考を巡らせていたイルビナは――


「グリードさん?」

「え? じゃあ――」

「レイティ以外でワタシを認めてくれた。嬉しかった」


(((…………理由が重い!)))


 そもそも恋愛感情とは別物だが、イルビナの過去が過去なだけにとても意見できる空気ではなく、とりあえずラン、エレノア、ロロベリアは内心で突っこんだ。

 ただそれとは別に微妙に面白くないとサクラは歎息しつつ、一人もくもくとお茶菓子を頬張るリースに狙いを定めた。


「リースはどうなんじゃ。以前よりもアヤトと過ごす時間も増えておるんじゃろう?」

「むぐ? むぐむぐ……ごくん。増えたけどそれが?」

「蟠りも無くなっておるようじゃし、気持ちの変化もあったのか、と思うてのう」

「だから、サクラはどうしてアヤトに拘るの?」


 意地でも恋バナに持っていこうとするサクラにロロベリアが突っこむもやはり無視。


「最初は嫌いな者ほど後に好意的感情を向けると物語にもよくある話じゃ。実際はどうなんじゃ?」

「師匠はわたしの憧れ。それだけ」

「やはりか……つまらんのう」

「ならリースのタイプってどんな人?」


 リースのアヤトに向ける感情はあくまで憧れ、予想通りとはいえ残念がるサクラに代わりランが引き継ぐ。


「お父さま」

「…………」

「もちろんロロも大好き」

「ありがとう、リース」

「……仲良しさんだね」


 姉妹のようなロロベリアとリースにほっこり空気が漂うも、とりあえずリースには早すぎる話だったとランは諦めたが――


「ほんにつまらん……仕方ない。こうなればエレノア殿やロロベリアで我慢するか」


「「私で我慢!?」」


 どうしても恋バナを諦めきれず妥協案を出すが、妥協でターゲットにされた二人には堪ったものではない。


「むろんミューズ殿でも構わんが、弄ってもあまり楽しめそうにない」


「「そんな理由で!?」」


「……申し訳ありません」


「「ミューズ(さん)も謝罪しない! そもそもラン(さん)だって弄れる(ます)!」」


「あたしに飛び火するな! だ、だいたいサクラはどうなの!? さっきからアヤトに拘ってるけど実は惚れてたりするんじゃないの!?」

「あやつは良き友人じゃ。それにアヤトに拘っておったのも、ロロベリアの反応が楽しいからのう」

「そんな理由で!?」

「して、妾は答えたがお主はどうなんじゃ? ディーンとの仲は順調か?」

「なんでディーンが出てくるのよ!」

「なにを今さら。エレノア殿と同じで、少し見ておれば丸わかりよ」

「……私の気持ちは丸わかりなのか」

「とにかく妾は普通の乙女のように恋バナでキャッキャしたいのじゃ。時間は十二分にある……存分に、楽しもうではないか」


「「「…………」」」


 皇女としての風格を無駄に見せるサクラに結果ターゲットにされた三人は後の展開に息を呑む。


「こんな時間も楽しい。うきうき」

「はい」


 対する初参加のイルビナと除外されたミューズは同年代との夜更かしを純粋に楽しんだ。


「ZZZZ……」


 そして最初に夢の中に入ったのはやはりリースだった。




本編でグリードがイルビナをアヤトに託した理由について触れる目的もありますが、彼女たちも学院生なのでリラックスした時間も必要ですからね。

ただサクラさま強し。女子会にかける意気込みもですが、自身の恋心を隠したままエレノア達を手玉に取る辺りはさすがでした。

ちなみに欠席したレイティですが、彼女も恋バナに疎くイルビナ大好きっ子です。


そして次回のオマケは女子会の裏側、つまりあちらがどう過ごしているかになります。捻くれ者が参加してるかどうかは次回をお楽しみに。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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