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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
522/781

最後の役割

アクセスありがとうございます!



「勝者ロロちゃんねん」


 ラタニお約束のゆるっとした宣言でロロベリアとファルシアンの序列一位を賭けた決闘も決着。

 予想外な精霊術戦でも勝敗は予想通り。

 ファルシアンも善戦したが序列一位の風格を見せつけたロロベリアの圧勝と、初戦ほどの盛り上がりはない。

 まあ盛り上がりに欠けたのは勝敗以前の問題か。


「ほんとこの天才さまは……やってることが高等すぎてお客さんがポカンってしてるじゃまいか」


 故に観覧席の反応にラタニがやれやれと苦言を漏らす。

 言霊を使わない発動や音の発動と、ラタニの真似とは言え常識外れな技能を披露したことで観覧席は度々困惑。特に勝敗を決めた駆け引き、鍔音の発動は観覧席だと感知できない上に一瞬過ぎて興奮よりも戸惑いが先行してしまう。

 これまでも序列戦で部分集約で聴覚を強化した決め手や入れ替え戦で蒼月の顕現と、ロロベリアは学院生どころか常識を超えた技能で決着を付けるからこそ観覧側は理解が追いつかない。


「お陰でお姉ちゃんは審判以外のお仕事をする羽目になるんよ」

「……ごめんなさい」


 謝罪をしつつもロロベリアはどこか釈然としなかった。

 ただラタニとしては学院生だけでなく講師陣も理解できるだけの能力を備えて欲しくもあり、今後の成長の一端になればと声を拡張させて説明を始める。


「私の完敗です。ロロベリア殿」


 その間に改めて向き合おうと微妙な表情で精霊力を解除するロロベリアにファルシアンは声をかけた。


「今回は私のわがままにお付き合い頂き感謝を」

「どういたしまして。でも私にとっても意義はあったから」

「序列一位に相応しい自分になる挑戦、ですね」

「ええ。お陰で少しは自信が持てた」

「あの神業を成功させて少しですか……?」


 ロロベリアの自己評価にファルシアンは唖然。

 この一戦で披露した脅威の技能。特に剣と鞘を合わせた鍔音の発動は神業と言っても過言ではない。


「私に序列一位の重みや心の在り方を説いてくれた人がいるんだけど……判定が厳しいから」


 しかし追い続ける背中を知るからこそロロベリアは自惚れない。

 今回の挑戦で一つ上に行けたと実感しても、その背中はまだ遙か先を歩いている。

 なによりロロベリアの最終目標はその背中を超えて守ること。

 大切なもの全てを守れる大英雄、この程度で満足するわけにはいかない。


「少しは楽しんでくれたと思うから少しは、かな」


 故に感想を求めて『多少は楽しめた』と評価してくれれば御の字なのだ。


 そして僅かな達成感で済ませる、ロロベリアの貪欲な挑戦心の根本を察したファルシアンは首を振る。

 ロロベリアと向き合わせてくれた感謝と、改めて迷惑をかけた謝罪をした上で是非とも挑ませてもらいたい。


「あなたにそこまで言わせる御方なら、私もゆっくりお話しさせて頂きたいものです」

「何だかんだで優しいから相手してくれるけど、気難しくて捻くれてもいるから覚悟はしておいて」

「しておきます」


 だがその前に今回学んだ心の在り方を胸に、まずは大切な人たちと向き合うことから始めると決意して、新たな一歩として手を伸ばす。


「色々と学ばせて頂きました。序列一位、ロロベリア=リーズベルト殿」

「こちらこそ。強かったわ、ファルシアン=フィン=クォーリオさん」


 試合前とは裏腹に、晴れやかな気持ちでロロベリアと握手を交わした。



 ◇



 ラタニの状況説明で勝敗を分けたロロベリアの駆け引きを知った観覧席はどよめいていたが、健闘を称える両者の握手に遅れながら大きな拍手が送られていた。

 学院最強の序列一位に相応しい実力を示したロロベリアだけでなく、新入生ながらも諦めず最後まで果敢に挑んだファルシアンにも温かな声がかけられる中――


「厳しい厳しいカルヴァシアも、少しは楽しめたか?」

「それとファルシアンの相手をするの? 優しいけど気難しくて捻くれ者さん」

「……たく」


 来賓席ではユース伝手に二人のやり取りを知ったディーンとランにアヤトが茶化されていたりする。

 ちなみに序列保持者の面々は説明されなくともロロベリアの高度な駆け引きを理解していたが、学院生会やレイティは別なので終了後すぐにユースが説明と、今回のレクリエーションである意味最も貢献したのは彼かもしれない。


「エレノアさまやミューズ先輩はどう見ます?」


 そのユースと言えば、説明を終えるなり二人に端的な問いかけを。


「勝負事はやってみなければ分からないが……恐らく最初に課題を達成するのはロロベリアだろうな」

「二〇メル以内と範囲は限定されても、本来のスタイルが合わされば退ける自信はありません」

「オレも同感っす」


 やはり二人も同じ考えのようで苦笑交じりに頷く。

 ファルシアンクラスの精霊術士を精霊術のみで圧倒したロロベリアだが、本来のスタイルは近接戦と精霊術を組み合わせたもの。それこそ今回は部分集約すら使用していない。

 アヤトがロロベリアに出した課題は新解放の部分集約や分配調整を封じて、この三人から二連勝すること。

 いくらこの二種を封じたところで、新たな技能を習得したロロベリアの動きをユースは読み切る自信はない。また精霊力の消費量を抑え、持ち味の発動速度を更に向上させたなら尚更だ。

 つまりエレノアの言うようにアヤトの課題を最初に達成するのはロロベリアだろう。むしろ二連勝どころかアヤトを除く序列保持者から八連勝しそうな勢いもある。


 それほどまでに正しい自信を身に付けたロロベリアは強い。まさに学院最強に相応しい強者となったが、だからこそだ。


「でも諦めないんすよね?」

「当然だ」

「はい」


 元より先を行くロロベリアを追いかける側、突き放されても諦めず食らいつけば自ずと自分たちも成長できる。

 なによりアヤトを追いかけているのはロロベリアだけではない。

 独走など許さないと三人だけでなく、残りの五人も覚悟を改めさせられた。

 序列保持者の競争心に新たな火種を灯した意味でも、今回のレクリエーションは成功と言えるだろう。

 

 後は閉幕宣言でレクリエーションも終了。

 しかしエレノアにはまだやるべき事が残っていた。

 開始前に伏せたイルビナ、ロロベリアの選出理由を代表して学院生に改めて伝える。二人の雄志で充分伝わっていようと学院の意識改革には必要で。


「エレノアさん、お願いします」

「任せておけ」


 故にレガートから精霊器を受け取ったエレノアは立ち上がり、最後尾に座るアヤトを視界に入れた。

 エレノアの視線から決意を感じ取ったアヤトはため息一つ。


「好きにしろ」

「言われなくとも好きにさせてもらう」


 ただ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と前を向いた。



 

ファルシアンもロロから学んだ気持ちで逃げるのを止め前を向きました。

そしてラストの一文については後ほどとして、レクリエーションもエレノアが纏めて次回で一先ず終了となります。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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