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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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回想 知る為に 前編

アクセスありがとうございます!



 新入生に向けたレクリエーションが発表される二日前。


「――申し訳ありませんでした!」


 講習開始前、ファルシアンに向けてエランは頭を下げた。

 昨日の決闘は秘密裏に行われたもの。故に人目の付かない場所で謝罪する為、校門でアヤトを待ち伏せしていたファルシアンを校舎裏に呼び出している。

 ただ約束を違えたというより、自身の勝手な判断で約束したからこそアヤトに頼めなかったと正直に。またファルシアンを侮辱した発言の撤回もしていた。


 約束しておきながら頼まないのはエランの勝手な言い分、それでもファルシアンが許してくれるなら出来る限りの要望に応える覚悟で深く頭を下げたまま返事を待つ。


「私と君の決闘を伝えた上で、アヤト=カルヴァシア殿は私と会うつもりはないと言ったんだね。ならばこれも一つの口添えさ」


 しかしファルシアンから批判はなく、むしろ約束を果たしたと捉えた。


「だから謝罪は必要ないよ。顔を上げてくれないか」

「……いいのか」

「いいもなにも言った通りさ」


 言われるままエランが顔を上げるも予想外の反応に訝しむも、ファルシアンは優美な笑みを浮かべて人差し指を立てた。


「でもそうだね、もし君がそれでも納得がいかないなら、代わりに一つだけ私の質問に答えて欲しい」

「アヤト兄ちゃんのことは俺も知らないことが多いんだ」


 その申し出にエランは先回りの牽制。

 モーエンからクギを刺されているのもあるが、エランはアヤトについて詳しい情報を持っていない。


「昨日、私たちは決闘をした。ならば私の実力を知ってもらえただろう」


 対するファルシアンは関係ないと首を振り、前置きから質問に入る。


「それでも尚、アヤト=カルヴァシア殿が強いと言えるかな?」


 昨日はファルシアンの実力を知らずアヤトの方が強いと決めつけたなら、知った今なら答えが変わるかとの意味合い。

 そんなに持たぬ者が持つ者を超えるのが信じられないのかと思う反面、本来の常識ならファルシアンの疑問の方が正しいとエランも判断できる。

 加えて既に明かした情報なら問題ない。なにより約束を違えたのは自分だ。


「……お前は強いよ。俺よりも全然……」


 故に悔しさを露わにしつつ、ファルシアンの実力を認めた上で。


「でもアヤト兄ちゃんの方が遙かに強い」


 答えは変わらないとハッキリ告げた。

 迷いも疑いもないエランの返答にファルシアンは僅かな間を空け、何かを確信したようゆっくりと頷く。


「これで私たちの間に遺恨はなくなったね。では今日から友として共に青春を謳歌しようじゃないか!」

「なんでだよ!?」


 そのまま満面の笑みで肩を組んでくるファルシアンにエランはすかさず突っこんだ。


「おや? 私たちは本気でぶつかり合った者同士、ならばもう友と呼んでも過言はないだろう?」

「あるよ! だいたいなんで遣り合ったらダチになるんだよ!」

「それが青春!」

「意味わかんねーから! ていうか離せって!」

「おやおや、どうやら君はシャイなようだ。照れることはないんだよ?」

「照れてないっての!」

「私のことはファルとでも呼んでくれたまえ! いやいや、君のような友が出来て僕も嬉しいよ。なんせ不思議と誰も僕に近づこうとしないからね」

「不思議も何もお前が問題ばっか起こしてるからみんな面倒……いいから離せって!」

「ふ……高貴なオーラが隠せないが故の孤独か」

「俺の話ぜんぜん訊いてないのなお前!」

「だからファルで良いと言ったじゃないか! むしろ呼ぶまで絶対に離さないよ!」

「ああもう……ファル! これで良いんだろ!」

「満足!」

「こいつマジうぜぇ……とにかく謝罪したからな!」


 からの、ひとしきり絡まれたエランは解放されるなり早々に立ち去った。


「ところで君のことはどう呼べばいいだろうか? やはり友らしくフランクな呼び名がいいね」

「なんで付いてくるんだよ!」

「そうだね……私は君をエライストと呼ぶよ!」

「なんでだよ!?」

「姓のユナイストとかけたのさ。それとも別のが良いかな?」

「もうエランでいいから付いてくるな!」


 結局教室に向かう間どころか、講習が始まってもファルシアンに絡まれ続けたエランが苦労したのは言うまでもない。


 ただ午後の実技講習を終えてからファルシアンが絡んでくることはなく、エランはむしろ助かったと機嫌良く無視。

 普段の奇行が奇行なだけにクラスの面々も関わりたくないと距離を空けられているので誰にも声をかけられることなく、ファルシアンは足早に教室を後にした。

 いつもならアヤトとの接触を試みて学院中を彷徨うも、今日は真っ直ぐな足どりで目的地に向かう。

 辿り着いたのは序列四位の専用訓練場。周囲に人気が無いのを確認して施錠されていないのを確認してドアを開けた。

 更に誰もいないリビングルームを抜けて室内訓練場のドアを開け――


「よう」


 壁にもたれ掛かり、あやとりをしながら視線も向けずアヤトが出迎えた。


 というのも実技講習後、ファルシアンの鞄に手紙が入っていたからで。

 差出人はアヤト、内容も『学院終了後、内密に序列四位の訓練場に来い』とだけ書かれていた。突然の呼び出しにファルシアンも怪訝になりながらも指示に従ったが、本当に居るとは思いもよらず。

 そもそもエランからは会うつもりはないと訊いている。なのに自ら呼び出す真意が掴めない。

 それでもようやく対面が叶ったなら、まずは謝罪と気持ちを切り替えた。


「謝罪の必要はねぇよ」


 しかし先読みしたのかアヤトは謝罪を拒否、あやとりをやめず更に続ける。


「わざわざ呼び出してすまんな」

「……いえ、こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ありません」

「必要ねぇと言ったんだがな。まあいい」


 結局謝罪を口にするファルシアンに苦笑しつつ、アヤトは指に絡めていた紐をコートのポケットへ。


「俺の専用らしい訓練場にはお前のように付け回す奴が張り付いているんでな。内密に遊べんとの配慮でここを借りた」

「遊ぶ……?」

「俺と遊んで欲しいんだろう」


 そのまま室内中央に移動したアヤトは月守を抜いてお約束の構えを。


「いつでもいいぞ」

「まさか遊ぶとは……模擬戦、でしょうか」

「そうとも言うな。つーかお前が望んだんだろ、さっさと掛かってこい」


 呼び出した理由が勝負と知り、ファルシアンも戸惑いを隠せない。

 なぜ今まで頑なに会おうとしなかったアヤトが呼び出したのか。

 なぜ今まで拒否していた勝負をしてくれるのか。


「私はエランくんから会うつもりは無いと訊いています! しかも序列四位殿に頼んでまでこの場を用意したのは何故ですか!?」


 募った疑問をぶつけるもアヤトは月守の峰で肩を叩きつつ一蹴。


「たく……どうだって良いだろ」

「良くありません! そもそも私は遊びではなく真剣にあなたと勝負をしたいのです! 受けて頂けるなら相応しい場で戦いましょう!」

「なんだ序列が欲しいのか。なら勝てばくれてやるぞ」

「そんな簡単に……。そもそもいくら序列保持者だろうとあなたの一存で決められませんし、私はただ本当にあなたが精霊力を持つ者を超える強さがあるのかを知りたいだけ。序列入りなど考えてもいません」

「それなら場なんざに拘る必要もないんだが……やはりな」


 続く訴えも適当にあしらっていたが、最後は月守を鞘に納めた。


「優秀な先輩さまと天才さまの読み通りか」

「……? あなたはなにを仰っているのですか」

「さあな」


 疑問もお約束で交わしたアヤトはゆっくりと歩み寄り、手の届くギリギリのところで立ち止まる。


「先ほどお前は真剣な勝負がしたいとほざいたな」

「……もちろんです! あなたの実力を知るのであれば遊びではなく真剣勝負だからこそ知られるでしょう! それとも私の考えは間違っているでしょうか?」

「お前はそれ以前の問題だろ」


 嬉々として両手を広げるファルシアンを否定した上で、嘲笑交じりにアヤトは告げた。


「つーか随分と必死のようだが、そんなに()()()()()()()()()



 

まずは敗北後のエランの対応となりましたが、ファルシアンに振り回される結果になりましたね。

ですがこれまで周囲を振り回していたファルシアンもアヤトくんには通じません。なんせ周囲を一番振り回していますからはさておいて。

ラストでアヤトが告げたファルシアンの奇行に繋がる真意については次回で。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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