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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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異なる反応

アクセスありがとうございます!



 レクリエーションの一環から序列一位を賭けた試合となったロロベリアとファルシアンの一戦。


 静かな立ち上がりから見せたロロベリアの先手、咄嗟に回避はしたがファルシアンは状況が呑み込めないでいた。

 現象からして精霊術、しかし忠告とやらを告げている最中で発動させた。

 言霊でもない、精霊力の集約すら感じられないあの精霊術は何なのか。


「今のはいったい……」


 口から漏れる疑問にロロベリアは僅かな間を空け、今度はいたずらっ子のように笑った。


「これから序列の座を賭けて戦う相手に、自分の手の内を明かすように見える?」

「……失礼ながら、多少は明かしてもらえそうに見えます」


 その返答には一理あるも、あどけない笑顔に追求すれば答えてくれそうな容易さを感じてファルシアンの緊張が解れてしまう。

 お陰で冷静さを取り戻したのか、今の現象を分析できた。

 レクリエーション前、ラタニが解説した音による精霊術の発動。自身の精霊力を世界に干渉させるなら声ではなく音でも可能。

 音で干渉できるなら、精霊術に必要なイメージを言葉で表現する必要もなくなる。つまりロロベリアは自分に語りかける声に、言霊のように精霊力を込めて発動させた。


 音の発動についての説明を事前に訊いたお陰で今の発動法も理解できた。だが発動の予兆すら感じさせない精霊力の集約、語りながらでも正確なイメージなど王国最強の精霊術士、ラタニ=アーメリだからこそ可能と感心していた技能。

 そんな技能を僅か一つ上の、学院生でしかないロロベリアが可能とは予想外。


 ただファルシアンが警戒するのは技能以外の部分。

 飄々としながらも実力に裏付けされた自信、名声に恥じぬ堂々とした風格がラタニにはある。

 イルビナとレイティの一戦を共に観戦した時、何かを学ぼうと集中するロロベリアは声をかけられないほどの雰囲気が合った。

 また昨年の序列戦でミューズと対峙した際の勇敢な姿勢も一学生ながら序列入りを果たしただけはあると感心していた。


「私ってそんなお人好しに見えるんだ……」


 なのに今のロロベリアは妙に頼りなく、脅威の技能を披露した学院序列一位の風格は微塵もない。

 にも関わらず度々感じる妙な風格が薄ら寒く、自然と流れる冷や汗を拭ったファルシアンの目がすっと細まり――


『朱の彗星よ!』


 お返しと言わんばかりに不意打ちの精霊術。頭上に顕現された四つの火球がロロベリア目がけて真っ直ぐ襲いかかる。


「早速忠告を訊いて『くれたのかしら』!」


 だが不意打ちを読んでいたのか、左斜めに駆け出し回避しつつロロベリアも精霊術で応戦。


『熱き盾よ!』


 手の平サイズの水球をファルシアンは火壁で防ぎ、更に追撃の精霊術を放つべく疾走するロロベリアを見据えた。


『パチン』

『パチン』


「な――!?」


 しかし言霊を紡ぐより先に水弾と氷鏃が()()()()()、異なる速度で左右から迫る精霊術を大きく後方に飛んでギリギリ凌いだ。


「さすがは新入生代表さん。簡単にはいかないか」


 距離が開いたことで追撃を諦めたのか、ロロベリアは立ち止まり称賛。

 先制の精霊術からロロベリアも音の発動が可能と頭に入れてたから回避できたが、連射ではなく同時発動はファルシアンにとって未知の領域。


「それは私の台詞です……」


 故にファルシアンは警戒を更に上げつつ称賛を返す。


「さすがは序列一位殿。一筋縄ではいかないようですね」

「そう言ってもらるなら、少しは自信になるかも」



 ◇



 静かな立ち上がりから一変、精霊術の応酬に初戦と同じく観覧席は静まり返っていた。

 フィールド中央で対峙する二人の会話は聞こえず先手の精霊術に対するファルシアンの反応の鈍さに首を傾げていたが、ラタニと同じ発動をロロベリアが披露したことで驚きから言葉がない。

 水と変換術を用いた氷の同時発動。頭で理解しても、ラタニと同じ技能を学院生のロロベリアまで習得していれば当然の反応。


「よくよく考えれば、リーズベルトが習得しても不思議じゃないんだよなぁ」

「ベルーザ殿下も習得してたもんね……音の発動はどうか知らないけど」


 しかし来賓席の序列保持者や学院生会の面々は素直に受け入れていた。

 今回も精霊力を耳に集約したユースの通訳でロロベリアが言霊を使わず精霊術を発動させたと承知している。

 これまでもロロベリアは精霊力の部分集約に集約防御、外部に流し込む技法や精霊力の剣、更には新解放の部分集約や分配調整と常識を越えた技能の数々を短期間で習得、または編み出した。

 その才覚はカナリアら上位精霊術士ですら敗北を認め、ラタニに精霊術士の申し子と評価されている。加えて天才精霊術士と名高いベルーザが習得している前例がある。

 今さらロロベリアが習得しても驚きはなく、むしろ遅いくらい。


「あの…………みなさまはロロベリア=リーズベルト……さんが、習得していると存じていたのですか」


 まあなし崩しに来賓席で観戦しているレイティは別。他の学院生や講師陣のような反応を見せていたが、先輩方の様子から戸惑いに変わった。

 同じ序列保持者として、また関わりある学院生会として交流も深ければ知っていても不思議ではない。ならこの落ち着きようも納得できる。


「私は知らなかった」

「僕もね。だから君と同じで、これでも驚いているよ」


 しかしジュートとルイは肩を竦めて否定。


「ワタシもびっくり」

「同じくです」

「ロロベリアさんを過小評価していましたね」


 更にイルビナ、シエン、レガートも同じく知らなかったらしい。


 そもそも二日前のロロベリアは()()()()()()()()()()()()()()


 ただロロベリアと付き合いの浅い面々でも、ある程度の変化を予想していたのでレイティほどの衝撃はなかった。逆に良く知る者はこの一戦で必ず化けると確信があったからこそ驚きはない。

 特にユースは意識が変われば音の発動も可能とラタニの見解を聞いている。

 この意識改革を狙ってアヤトが手厳しい挑発をしたなら。


「望み通りの成長ですか」

「白いのが単純なのは今さらだろ」


 真意を知らずとも応えるのがロロベリアだ。


 


二日前は習得していなかった発動をロロが習得した意識の変化。

序列保持者や学院生会の面々が化けると予想できた理由、アヤトくんの挑発については次回で。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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