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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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読み解く変革

アクセスありがとうございます!



 学院代表を伏せていた変わりにエキシビションマッチの試合形式は新入生代表が自由に決められる。

 ただ自由といっても個人戦やタッグ戦、学院代表を一人ずつ指名して二人で挑むといった対戦方法について。決して序列の座を自由できるわけではない。


「……ファルシアンさん、学院生会としてその決闘は容認できません」


 故にレガートが責任者として当然の却下。


「なぜですか!? 試合形式についての決定権は私にあると仰ったのはあなた方学院生会です!」

「試合形式、つまり対戦方法を自由にしても良いとの意味です」

「自由ならば私の決闘も容認するべきです!」

「自由にも限度があるでしょう。そもそも学院序列に関する顕現は学院生会にはありません。今回のエキシビションマッチは学院生会主催のレクリエーションなのをお忘れですか?」

「しかし――」


「勝手に決めるな!」


 淡々と反論するレガートに屁理屈で食い下がるファルシアンを咎めたのはレイティだった。


「決定権はお前と私にある、なのに一方的に進めるんじゃない!」

「一方的とは心外だね。タッグ戦では精霊術士や精霊士がサポートに加わり実力が本物かどうかの証明にならないと異議を唱えたのは君だよ」

「私が異議を唱えたのはアヤト=カルヴァシアの実力だ!」

「イルビナ=フィン=シーファンス殿も持たぬ者だ。君の望んでいた通り持たぬ者が持つ者を超える実力があるのか、個人戦で存分に見定めることができるね」

「……だが私はアヤト=カルヴァシアの不正を暴くとも――」

「言っていたね。しかしイルビナ=フィン=シーファンス殿を選んだのは序列保持者の総意だよ。なら序列保持者の方々は彼女もアヤト=カルヴァシア殿と同じく常識を覆せるだけの実力があると判断しているはずだ。つまりアヤト=カルヴァシアがイルビナ=フィン=シーファンス殿に変わっただけさ」

「それは……っ」

「アヤト=カルヴァシア殿の不正については完全に、とはいかない。だがイルビナ=フィン=シーファンス殿が君と同格以上なら、少なくとも私たちが問題視していた持たぬ者が持つ者を超えられるのか、という証明にはなるね。それとも、証明する相手がイルビナ=フィン=シーファンス殿では不都合な理由でもあるのかな?」

「…………っ」


 しかしファルシアンの言い分に反論が続けられず、レイティは忌々しげに睨み付けることしかできない。

 確かにファルシアンやレイティはアヤトに挑戦状を叩きつけた動機は、本当に持たぬ者が持つ者を超える実力があるのかだ。

 今までこの常識を覆したのがアヤトなだけ。このエキシビションマッチに精霊術士ファルシアン精霊士レイティが出ると分かった上で、序列保持者が学院生の模範となる強者を選んでいる。

 ならアヤトに拘らず、本当に持たぬ者が持つ者を超える実力があるのかを確かめればいい。サクラが不正はないと断言した舞台は絶好の機会、レイティに拒む理由はないはず。


「ないのであれば私の要望取り個人戦で構わないね。そしてロロベリア=リーズベルト殿に決闘を申し込むのは私の自由、君に異議を唱えられる謂われはないよ」

「……なら言わせてもらうが、お前はアヤト=カルヴァシアに挑んだのは興味があるだけで、序列入りを企んでいないと言ったな」


 故に勝ち誇るファルシアンにせめてもの抵抗か、レイティは話題転換。


「それが?」

「ではロロベリア=リーズベルトに序列一位を賭けた決闘を申し込むのは矛盾している! それとも相手が持たぬ者でなければ姑息な挑戦ではないとでも言うつもりか!」

「私は本当に序列入りなど考えていないよ。ただ今は楽しい楽しいレクリエーション、私なりに盛り上げようとしているだけさ。こうした余興も良いスパイスになるからね」

「白々しい……っ。結局お前は序列の座が欲しだけの卑怯者だ!」

「なんとでも言いたまえ」


 軽蔑の眼差しもファルシアンは肩を竦めて交わし、レイティからロロベリアに視線を向けた。


「学院生の模範となる強者、しかも学院最強の序列一位殿がまさか私のような新入生の挑戦を拒むはずがないでしょう?」

「あのね――」


「はいはーい。ちょっとタンマね」


 明らかな挑発に呆れつつロロベリアが答えようとするも、今まで静観していたラタニが割り込んだ。


「おや? ラタニ=アーメリさまも決闘に不服でしょうか」

「内輪もめしててお客さんを置いてきぼりにしてるのが不満かにゃー。観覧席を見てみんさい」


 ラタニが嘆くようファルシアンの暴走によって静まり返っていた観覧席が今は戸惑いでわざついている。

 なんせ声を拡張する精霊器を使用しなければフィールドの声は聞こえない。故に観覧席にはレイティの怒声が辛うじて聞こえる程度、いまいち状況が掴めないのだ。


「今は楽しい楽しいレクリエーションだ。いくらキミたちが代表でも他のガキ共ほったらかしも違うでしょ」


「申し訳ない」

「すみません……」

「……ち」


 今さらながら自分たちの置かれている立場を理解して謝罪するファルシアンとロロベリアに対し、レイティもばつが悪そうに視線を反らす。

 ちなみにイルビナは変わらず棒立ちのままなのはさておいて。


「うむ。大いに反省なさい――てなわけで」


『パチン』


 反省を促したラタニは不意に精霊力を解放して指を鳴らす。


「よく聞けガキ共! こっからは審判任されたラタニさんが仕切ってやるから大いに盛り上がれい!」


「これは……っ?」

「まさか精霊術……しかし言霊ではなく音による発動など……」


 ラタニの声だけでなく自分たちの声まで闘技場全体に響き渡りレイティは唖然、精霊力の流れから精霊術を発動したと理解したファルシアンもさすがに驚愕を隠せない。

 指鳴らしによる発動はラタニのオリジナル、加えて声を拡張する程度の精霊術とはいえ周辺の声も拡張させて維持しているのだ。

 知る者からすればラタニの規格外は今さら、しかし知らぬ者からすれば困惑して当然。


「さてほて、これ以上ケンカを伸ばしても仕方ないんでまずはロロちゃんや」


 だがそこはラタニ、さらっと無視して宣言通り仕切り始めた。


「なんかファーちゃんが負けたら序列一位よこせって言ってるけど、ロロちゃんはどう思う?」

「どうもなにもレガートさんが言っていたように――」

「細かいこたぁ気にすんなし。あたしはロロちゃんがファーちゃんに売られたケンカをどうしたいかって聞いてんの」

「……はぁ」


 意見も無視して急かすように返答を求めるラタニにロロベリアからため息が漏れてしまう。


「私個人としてなら構いません」


 しかし改めて答えるロロベリアに観覧席から歓声が上がった。

 学院のルールでは却下なだけで、ロロベリアには受ける意思がある。


「……つまり決闘の申し出を受けて頂けると?」

「ええ」


 故にファルシアンからの再確認に迷わず肯定。

 この態度に感心したようにファルシアンは頷くも、すっと細めた瞳をロロベリアに向けた。


「なるほど……さすが序列一位殿。私のような新入生に勝利して当たり前との自信があるようだ」

「自信はどうかな? 勝負事なんてやってみないと分からないもの」


 挑発染みたファルシアンの態度にロロベリアは苦笑しつつ謙虚に返す。

 それでも言葉とは裏腹にロロベリアからは一切の不安が感じられない。


「負けたら私は序列一位に相応しくなかった。それだけのことでしょう?」

「……ですね」


 清々しいまでの正論にファルシアンも挑発を続けられず、しかし目だけは反らすことなく見据えたまま。


(ほーん……何となく分かってきたさね)


 ファルシアンの好戦的な視線にも平然な表情を崩さないロロベリアに感心しつつ、ラタニはこのレクリエーションに込められた真の狙いを読み解いた。

 ファルシアンの挑発をロロベリアらしく謙虚に対応。ただそのらしさに変革が感じられた。

 加えて一度もイルビナに視線を向けようとしないレイティの不自然さ、つまり自分の役割は場を整え見守ること。


「良いね良いね、ラタニさん好みの展開だ」


 しかしただ整えるだけでは面白くないとラタニはニンマリ。


「てなわけであたし権限でロロちゃんとファーちゃんのケンカは勝った方が序列一位に決定だ!」

「アーメリ特別講師! あたなはなにを勝手に――」

「学院序列に関する権限は学院生会にはなくて学院講師にある。そんでもってあたしは講師代表でガキ共のケンカを見守ってる、つまりあたしが講師代表だ!」


 早速やりたい放題に講師陣席から制止が入るもファルシアン以上の屁理屈で一蹴。


「つーかあたしがこんな愉快な場面で火に油注いでむしろ面白可笑しく堪能する問題児なのはあんた達も分かってるでしょうに。なのにお祭りを取り仕切る役をあたしに許したあんた達が悪いさね!」


「「「「自分で言うな!」」」」


 更に開き直りから罪を押しつけられた多くの講師が突っこんだ。


「そんでもってあたしにお守り任せた学院生会にもとやかく言わせんけんのう! レーちゃん、シーちゃんも分かったかい!」


「……仕方ありませんね」

「面白そうなので任せるです」


 対しレガートとシエンは早々に降参。

 こうなったラタニを止められる者はいない。むしろ余計酷くなると講師陣も諦めたのか、ため息は聞こえても反論はなく。


「よろしい。んじゃ、ロロちゃんとファーちゃんは決定っと」


 周囲の反応もどこ吹く風、ラタニの一存で序列一位の座を賭けた二人の決闘は受理。


「こうなると自動的にイルちゃんとレイちゃんのケンカになるけど、せっかくだから二人も何か賭けるかい? 明日のおやつとか」

「ふざけないで下さい! これ以上付き合ってられません!」


 続いて残る二人の意見を求めればレイティは不満を爆発、そのままフィールドから立ち去ろうと背を向ける。


()()()


「――――っ」


 しかし拡張されても尚、小さな呟きがレイティの肩を振るわせた。

 それはフィールドに現れ、初めて発したイルビナの声で。

 人形のように表情一つ変えず、感情がこもっていない声。


「……どうしても、ですか」

「やろう」


 にも関わらず惹かれるよう振り返ったレイティにイルビナはもう一度主張。

 しばし見つめ合うも最後は根負けしたのか、レイティが無言で中央に戻った。


「イルちゃんとレイちゃんのケンカも決定と」


 試合形式は個人戦。ファルシアンの相手をロロベリアが、レイティの相手がイルビナに決定。


「つーわけで楽しい楽しいケンカはどっちが先にやるさね?」


「ワタシ」

「早急に終わらせる」


 そして初戦は両者の申し出によってイルビナ対レイティに決定した。



 

予想されていたかもですがイルビナVSレイティ、ロロVSファルシアンとなりました。

その中でラタニが感じ取ったロロの変化、またレクリエーションに秘められた真の狙いについては後ほどとして。

次回からイルビナVSレイティをお楽しみに!


ちなみにですが読み取った上で協力したラタニさんですが、それはそれと素で楽しんでいます(笑)。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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