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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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暴走再び

アクセスありがとうございます!



 新入生代表のファルシアンとレイティに続いて伏せられていた学院代表の二人がフィールドに姿を現すなり観覧席は喧騒に包まれていた。

 ロロベリアの選出はある程度予想されていた。学院序列一位はそのまま学院最強の称号、学院の模範となる代表に相応しい。

 しかし誰もが予想していたアヤトは選出されず、イルビナが代表として選ばれたのだ。


「予想はしてましたけど……凄いですね」


 観覧席の反応に前を見据えながらロロベリアはぽつり。

 持たぬ者という共通点はあれど序列保持者でもない彼女の登場は完全に不意を突かれた形なので無理はないが、想像以上の反応に笑うしかない。

 対するイルビナは周囲の反応にも動じず眉一つ動かさない。さほど交流はないが、彼女が感情を表に出したのを見たことがないので普段通りと言うべきか。

 それでもこの状況下でも普段通りを貫けるのは尊敬できる。特にロロベリアは表に出やすいので尚更だ。


 ただ中央で待つレイティはロロベリアと同じタイプなのか、イルビナからは動揺が見て取れて。


「――なぜアヤト=カルヴァシアが出てこないっ!」


 ロロベリアやイルビナが中央に到着するより早く来賓席に向けて声を張り上げた。

 その声は闘技場内に響き渡り、気圧された観覧席が静まり返るほどの剣幕。


「学院生会は学院生の模範となる代表を伏せたままあなたに打診しました。その場や昨日の発表でも私たちは彼が出るとも、代表二名が序列保持者とも口にしていません」


 だがレイティの怒りの訴えも素知らぬ顔でレガートは対応。


「そしてイルビナさんは学院生会の騎士クラス代表、学院生の模範となる代表として選ばれてもおかしくはないでしょう」


「しかし――」


「そもそもです。あなたが拘っていたのは持たぬ者が本当に持つ者に匹敵する実力があるのか、だったと記憶しています。ならイルビナさんでもあなたの疑問は解消されるのではないでしょうか」


「…………っ」


 淡々と説くレガートを憤怒の形相でレイティは睨み付ける。

 しかし正論だからこそ反論できない。

 学院生側は最初から()()()()()()()()()()()と説明しただけで序列保持者だとは口にしていない。

 そして学院生の模範は序列保持者だけでなく学院生会も同じ。加えて代表に選ばれたイルビナは騎士クラスでもトップクラスの実力者、強者の内に入っても間違いではない。

 要は代表二名の内一人はアヤトが出てくるとレイティを始めとした学院生が()()()()()()()()()()


 またレクリエーション参加の打診の際、レイティとファルシアンはあくまで表向きのイベントと打ち明けられている。狙いは公の場で疑問を払拭させるともだ。

 しかしその疑問を払拭させるならアヤト以外の持たぬ者でも問題はない。


 つまり学院生会側の説明に偽りはないと学院生らも受け入れるしかない。

 しかしトップクラスの実力者だろうと騎士クラスのイルビナが精霊術士(ファルシアン)精霊士(レイティ)と戦えるのか。

 また序列一位のロロベリアはともかく、なぜイルビナが学院生の模範となる強者なのか。

 このレクリエーションの裏に秘められた狙いを知るレイティやファルシアンはまだしも、勘繰っていただけの学院生としては疑問はある。

 持たぬ者に拘らないのならそれこそ生会長で序列二位のエレノア、または精霊騎士クラス代表で序列六位のランでもいいはずと観覧席から不服の声が上がり始めた。


「レガート。これは新入生向けのレクリエーションです。レイティの疑問とか関係ないです」

「そうでした。もちろんそういった意図でこちらも開催していますが、楽しんで頂くならレイティさんだけでなく、みなさんの疑問も払拭した方がいいでしょう」


 もちろんそちらの対策も用意しているレガートとシエンは若干白々しいやり取りで注目を向けさせる。


「今回のレクリエーションは私とシエンさんが責任者として任されていますが、代表選考に関しては序列保持者に一任しています。仕官クラス代表としてお恥ずかしい話ですが、やはり模範となる強者に相応しい代表を選ぶのなら、直接相まみえた者同士だからこそ知る何かはあるとの判断です」

「自分たちは武芸についてさっぱりですからね。俯瞰で見ると実際に対峙するとでは感じられるものも全く違うので仕方ないです」

「私たちもみなさんと同じでイルビナさんが選出されたのには驚きました。なので理由は直接確認して下さい」


 そうレガートが纏めるなり来賓席にエレノア、ラン、ディーンと残りの学院生会三人とアヤトを除いたミューズ、ユース、ジュード、ルイ、リースの序列保持者が姿を現す。


「事前に付け加えておくがアヤト=カルヴァシアは業務で不在だ。終わり次第こちらに合流する」


 タイミングから待機していたのか、レガートから精霊器を受け取ったエレノアの発言に誰もが静聴。

 序列保持者と同時に特別学院生として学食の業務でアヤトは遅れているらしく。


「学院を代表する強者という条件ならロロベリア=リーズベルト、アヤト=カルヴァシアを選出しただろう。それが私を含めた序列保持者の見解だ。しかし今回のレクリエーションで学院生会から要望されたのは学院生の模範となる代表だ」


 自分はあくまで生会長としてでなく、序列保持者としてイベントに携わったと主張してから改めて観覧席を見回す。


「この条件ならロロベリア=リーズベルト、イルビナ=フィン=シーファンスが相応しいと()()()()()()。そしてみなも納得したからこそお前たちの前に立っている」


 続いてファルシアンとレイティを見据え、いま対峙しているのは学院生会の要望通りの代表で、序列保持者の総意と断言。


「なぜこの二人が相応しいのかについては、今は伏せよう。私の言葉よりもまず各々で感じ取ってもらいたい」


 しかし選出理由は告げぬまま精霊器をレガートに返して着席。


「私も詳しい理由まで聞かされていないので、今後に必要な経験としてしっかり見定めようと思います」

「安易に答えをもらうより自分で考える方が勉強になるですからね」


 そのまま引き継ぐレガートとシエンの私見に不服を漏らしていた者も静かになる。

 理由は気になるも学院生の今後を思うからこそ控えるとエレノアから言われれば今は受け入れるしかない。


「…………くっ」


 対峙するロロベリアとイルビナに目も向けずレイティも悔しげに引き下がり、予定通りの展開に満足しつつレガートは進行に戻る。


 エキシビションマッチの試合形式を決めるのは新入生代表。個人戦やタッグ戦、または学院代表を一人ずつ指名して二人で挑むことも可能だ。

 まあ自由にしてもファルシアンとレイティがアヤトを指名して同時に挑むはずもなく、そもそも学院生会はアヤトが代表ではないと知っている。

 要は学院代表を伏せていた分、イベントとして公平な条件にしただけのこと。

 故にレガートが新入生代表に試合形式を確認――


「待ってください!」


 ……する前に今まで静観していたファルシアンが声を上げた。


「まだ何か不満でもあるのでしょうか」

「不満などとんでもない! むしろ私たち新入生の為に先輩方が様々な思いを胸にこのような場を用意して頂けたことに感涙しているほどです」


 とりあえずレガートが問えばファルシアンは膝を突き、胸に手を当てながら感動を表現。

 相変わらずな芝居臭さに冷ややかな視線が集まる中、ファルシアンは立ち上がり改めて来賓席に向けて訴える。


「試合形式は新入生代表に決定権があるならば、私たちは個人戦を希望します! そして私はロロベリア=リーズベルト殿を指名する!」

「な……っ」


 同じ決定権を持つレイティの意見も聞かず一方的な要望。

 しかしファルシアンは止まらない。

 レイティが抗議するより早く、天に向けて伸ばした右人差し指をロロベリアに振り下ろす。


「ロロベリア=リーズベルト殿、私はあたなに()()()()()()()()()()()()()()()()()!」


『…………』


 ファルシアンの入学式再来といわんばかりの大暴走に、闘技場内が静まり返ったのは言うまでもない。




学院の強者ではなく模範となる強者、この違いがアヤトではなくイルビナになった理由は後ほどとして。

今まで大人しくしていたファルシアンが再び暴走、この挑戦状にロロがどう対応するのか。また試合形式も含めて次回で。


ちなみにですがエレノアが告げたようにアヤトくんはサボりではありません……序列保持者として学食の仕事をケーリッヒに任せたのは否定しませんけど。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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― 新着の感想 ―
[一言]  ファルシアンが勝てるとは思わないけど、それは別としてロロには折角手に入れた称号を手放して欲しくないな。
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