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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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言伝と願い

本編再開!


アクセスありがとうございます!



 元々入学直後から周囲と距離を置いていたレイティは、学食の騒動で周囲も敬遠されるようになった。


 レイティと同じく持たぬ者の序列入りを疑問視してもファルシアンのように強引な手段を取れば煙たがれる。特に生会長を勤めるエレノアに目を付けられたくないと、なるべく近づかないようにしていた。まあ身分も気にせず主張できるレイティは学院の理念に則っているとも言えるが、精霊力の有無による差別意識の行動から悪目立ち。

 

 それでもレイティは周囲の目や関心も無視、学院終了後は教室を出るなりまっすぐ訓練区間に向かい、序列十位の訓練場でアヤトを待ち伏せしていた。



「そんなところで何してんの?」

「……あなたは序列四位の」



 しかしやって来たのはアヤトではなくユース。

 入学当初は現序列一位のロロベリアと現序列九位のリースに比べて特出したものがなく、平均的と評価されていたが今は序列四位と学院内でも上位の実力者。

 本来の実力が明るみに出たのは親善試合の代表を決める選抜戦らしいが、なぜその実力を隠していたのかレイティは知らない。

 ただ姉のリースやロロベリアと一緒にアヤトと暮らしている、くらいは噂で聞いているので余りいい印象がなかった。


「ユース=フィン=ニコレスカ。気軽にユースくんと呼んでもいいぜ? オレも気軽にレイティちゃんって呼ばせてもらうからな」


「…………」


 加えて初対面なのに馴れ馴れしく、軽薄な態度から心証が更に悪くなった。


「私に何かご用ですか。ユースさん」


 相手が子爵家だろうと学院内で身分差は関係ない。故にレイティは後輩として最低限の礼儀を払いつつ、軽蔑した眼差しを向ける。


「ユースくんでいいんだけど……まあいいや。そう警戒しなくてもいいぜ?」


 それでもヘラヘラと締まりのない笑顔を浮かべて歩み寄るユースにレイティは敵意を込めて睨み付けた。


「オレはアヤトの言伝を伝えに来ただけなんで」

「アヤト=カルヴァシアの……?」


 しかしその要件に困惑するレイティに構わずユースは言伝を口にした。


「遊んで欲しいならそのうち遊んでやるから今は大人しくしてろ。あ、遊んでってのは言い換えると勝負って意味な」


 わざわざ言い直されてもレイティの疑問は深まるばかり。

 ファルシアンの要望を含めてアヤトは無視を貫いている。にも関わらずなぜ自分の要望を叶えるというのか。

 もしかして精霊術士よりも精霊士の方が御しやすいからか。

 その内とは入れ替え戦のことか。

 そもそもいつ勝負をするのか。

 アヤトの真意が読めず苛立ちを募らせたレイティはギリッと奥歯を噛みしめ――


「なぜアヤト=カルヴァシアが直接伝えに来ないのですか!」


 ついに不満を露わに声を荒げた。


「あなたもあなたです! 持たぬ者に負けておきながらヘラヘラとしていて悔しくないのですか!? 挙げ句使用人のように使われて何も思わないのですか!?」


 またユースの態度が許せないと捲し立てる。

 レイティの剣幕を前にしてもユースは軽薄な態度を崩すことなく、苦笑交じりにため息一つ。


「オレを知ってるなら姉貴も知ってるよな」


 しかし返ってきたのは不満に対する反論ではなく、唐突な話題変換。


「オレたちが入学した当初は姉貴の方が評価されてて……ま、自分で言うのもなんだけど実はオレの方が強かったんだわ」

「……なにを」

「実力隠してたのはオレなりの理由っていうか色々とあったというか……その辺はいいとして。序列選考戦での遣り合いもオレが勝った。姉貴自身がオレより弱いって認めてる」


 戸惑うレイティを他所にユースは自分自身に言い聞かせるよう一方的な私見を述べる。


「オレも……姉貴より実力はあると認めてる。でもよ、姉貴より強いと思ったことは一度もない」

「…………」

「実力は上でも姉貴には勝てない。それが悔しいとか辛いとか以上に誇らしいんだわ。そんな風に思わせてくれるからオレにとって姉貴は英雄で……マジでスゲー人だなって憧れる」

「…………」

「とまあ、最初はくっだらねー理由で実力隠してたけどよ、素直に自分の方が実力上だって認めた方が余計に姉貴の強さを知れたんだわ。だから今なら無理矢理な形でもガチで遣り合ってよかったなって思う。開き直りとかじゃなくて純粋に……ほんと姉貴ってのは格好いいわ」


 また一方的な私見に口を挟まず最後までレイティは呆然としながらも聞き入れる中、ユースは満足したのか小さく笑った。

 その笑みは先ほどと違う柔らかさで、言葉通り姉に対する誇らしい弟の感情が読み取れる。


「念のために言っておくけど、これはアヤトの言伝じゃなくてオレの独り言な。それと今の話は姉貴に内緒で頼むわ。いや、本心なんだけどやっぱ気恥ずかしさはあるんで」


 ただ最後はここに来た時と同じヘラヘラとした締まりのない笑みに戻っていたが、それ以前にユースの独り言にレイティはハッとなる。


「なぜ私にそのような話を……まさかあなたは――」


「だから、オレの独り言だって」


 真意を問いただそうとするもユースは被せるように否定。


「とにかくアヤトの言伝は伝えたんで大人しく待ってるように」


 以上――と、ユースは一方的に話を切り上げ背を向けた。


「……以上じゃないっての」


 だが立ち去る途中で思い出したように肩を落として振り返り、レイティに軽薄な笑みを向けたまま。


「大人しく飯食うなら学食の出禁も解除するってよ。これもアヤトの言伝な」


 忘れていた言伝を伝えて今度こそ去ってしまう。

 残されたレイティは呼び止めることなく。


「…………くっ」


 しばしユースを見送っていたが、最後は悔しげに表情を歪ませて訓練場から立ち去った。



 ◇



「一先ず上手くいったかな」


 対するユースはレイティの気配が遠ざかるのを感じるなり安堵の表情。

 レイティも素直に従ってくれると予想していたが所詮は予想。助言も込めた牽制が効いたようだ。

 とにかくレイティの反応からアヤトの読みは正しかったと確信した。今回はレガートの協力もあったらしいが、相変わらずの読みに尊敬を通り越して呆れてしまう。

 まあその読みを信頼していたからこそ独断で助言もしたが、果たしてレイティに伝わったのか。


「それは後のお楽しみか」


 ただ伝わっても伝わらなくてもレイティにとって良いイベントになって欲しいと願うばかりだ。



 学院生会から新入生向けの新たなイベントが発表されたのは、それから二日後のことだった。



  

アヤトくんの言伝役になってますが、個人の助言も忘れないのがユースです。

そして学院生会が発表した新入生向けのイベントが今章のメイン、詳しい内容は次回で!


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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