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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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【年始SS 紳士さまは恥ずかしがり屋?】

明けましておめでとうございます!


そしてやっぱり一昨年、昨年のお正月同様今年もSSを挟んでみました。

なので年始SSは作者の作品を読んでくださっているみなさまへ一年最初のご挨拶と、今年もよろしくお願いしますとの気持ちとして読んで頂ければ幸いです。


ではアクセスありがとうございます!



 新年を迎えた最初の日、ロロベリアはお昼前に目を覚ました。


 昨夜は数年ぶりの年越し祭を楽しんでいたので遅い起床……まあ途中でアヤト(とマヤ)が何も言わず姿を消したのにはもやもやしたが、それでも楽しい時間を過ごしたのは確か。

 なので短い睡眠時間でも目覚めよく、ロロベリアは手早く身支度を済ませて使用人に挨拶を。


「リースとユースさんは?」

「まだお休み中ですよ」


 一応程度の確認をしてみれば予想通りの返答。

 もちろん無理なく休んで欲しいと声をかけず、朝食兼昼食を済ませるなり外出。

 年越し祭後特有の静かな街並みを歩きつつ向かった先は商業区の広場で。


「おはようございます。ミューズさん、レムアさん」


 既に到着していたミューズとレムアを見つけるなり駆け寄り挨拶を交わす。

 今日はミューズに誘われて王都の教会に行く約束をしていた。

 教国に赴いた際、子どもとの接し方が上手いロロベリアに良かったら王都の教会にいる子どもたちと遊んで欲しいとミューズに頼まれたのだ。

 神に対する複雑な気持ちはあれど、教会で暮らす子どもたちには関係ない。一緒に遊ぶのも楽しいのでロロベリアも笑顔で了承。

 ちなみにニコレスカ姉弟も行くと言っていたが、起きられたらとも言っていたりする。そして結果は言わずもがな。

 なのでロロベリアのみ参加することにしたのだがそれはさておき。


「ラナクスだけでなく王都の教会にも行ってたんですね」

「頻繁ではありませんが……帰省するには王都に立ち寄るので、せっかくならと」


 それでも教会の子どもたちの為に何かをしたいと、わざわざ時間を作る辺りはさすが聖女と呼ばれるだけある。教国であのような事件に巻き込まれようと変わらないミューズの博愛精神にロロベリアも関心していた。

 まあ神に対する複雑な気持ちがあろうと教会で暮らす子どもたちには関係ないのと同じ。ミューズの向ける博愛精神も変わらないのだろう。

 故に少しでも子どもたちに楽しい時間を過ごして欲しいと、ロロベリアは張り切っていたのだが――


「ロロお姉ちゃんもアーメリさまと恥ずかしがり屋な紳士さまにお手紙を書こうよ!」

「…………」


 子どもたちとすぐさま打ち解けたまではいい。しかし一緒に遊ぶ前に提案された時間にロロベリアの笑顔は固まっていた。


「ミューズさまも!」

「もちろんです」


 対するミューズは変わらずぽわぽわ笑顔で了承。


「……ああ、ロロベリアさんは恥ずかしがり屋な紳士さまをご存じないですよね。実は去年の年越し祭からアーメリさまと一緒に王国の教会や孤児院に多くの寄付をしてくださっている方がいるらしいんです」


 からの、ロロベリアの反応からミューズは子どもたちの言う『恥ずかしがり屋の紳士さま』に疑問視していると説明を始める。


「ですがアーメリさま以外の方がどなたかは分からなくて……ニコレスカ商会の方が恥ずかしがり屋な紳士からと寄付を届けて下さるので、子どもたちもそう呼んでいるんですよ」


 なのでせめてものお礼にと、子どもたちが率先してお礼を綴った手紙をニコレスカ商会に渡して欲しいとお願いしているらしく、ミューズも去年は王都とラナクスの教会両方の子どもたちと一緒に手紙を書いたそうだ。

 またラタニとその人物の寄付は年に二度、その一度は年末で理由も子どもたちが楽しい年越し祭を過ごせるようにと必ず届くらしい。

 ちなみにそのお手紙も事前に渡して欲しいと寄付を届けに来たニコレスカ商会の職員に伝えているので、明日回収に来てくれるのだがそれはさておき。


「ニコレスカ商会を介しているのであれば……もしかして恥ずかしがり屋な紳士さまをロロベリアさんはご存じなのでしょうか?」


 説明しながら繋がりを察してミューズが期待に満ちた瞳で問いかけるのも無理はない。ニコレスカ商会と言えばロロベリアの義母、クローネが代表を務めているのだ。義娘なら何か聞いているかもしれないと思うわけで。

 

 その問いかけにもの凄くご存じですとの言葉をロロベリアはとりあえず飲み込んだ。

 つまりロロベリアは恥ずかしがり屋な紳士の正体を知っている。また何故そう呼ばれているかもだ。

 というのも去年、親善試合に向けて王都に帰省した際、クローネと色々な話をした流れで知ることになった。

 ラタニと違いその人物は目立つ行動を控えているのもある。また何故その人物が王都にある教会や孤児院に寄付が可能なのかを説明が出来ないからだ。

 しかしせっかくの善行。せめて子どもたちの喜びや施設職員の感謝をその人物に伝えたいとクローネが恥ずかしがり屋な紳士と名付け、お礼の手紙なら届けられると配慮したのだが――



『おいクローネ。この手紙の山はなんだ』

『教会や孤児院の子どもたちからの手紙だけど?』

『……なぜそんな物が送られてくる。つーか寄付はニコレスカ商会からでいいと言ったはずだが、なんなんだこの恥ずかしがり屋な紳士さまってのは』

『だって良いことをしてるのだから、せめて感謝の気持ちくらい受け取ってもいいでしょう? でも名前を出せないから私が付けたの。それに寄付の食料や生活必需品、絵本をうちの商会で購入してくれてるのに、善行までこちらにされては儲けすぎよ』

『俺は善行なんざしているつもりはねぇんだよ。たく……まるで善人扱いじゃねぇか』



 自らの意思で行っていれば充分善人なのに、そう扱われるのを嫌がり反感があったと教えてくれた。

 そして実のところ、その人物の影響でラタニが寄付をし始めたのも知っている。

 ラタニと暮らしていた際に使わせた費用を国王の依頼などを熟して速攻で返済を終えたその人物が、以降の依頼料半分を寄付に回すようクローネと交渉したからで。

 その人物が子どもたちの為に寄付をしているなら姉もするべきとラタニも始め、同じくニコレスカ商会からの寄付と自分の名を伏せるようクローネに頼んでいたが――



『クーちゃん、なんであたしの名前で寄付送るんよ。クーちゃんとこの商会からにしといてっていったじゃまいか』

『だってラタニちゃんは名を明かしても問題ないでしょう?』

『問題ないけどなんかあたしが良い人みたいで嫌なんよ。だからクーちゃんの商会からの寄付にしてくれんかね』

『だーめ。嫌ならしなければいいの』

『しないとお姉ちゃんの名が廃るでしょうに。だから頼むよクーちゃん』



 という意味不明のやり取りがあったとも教えてもらった。良い人みたいも何も、触発されて始めた善行だろうと寄付するなら良い人。なのに拒否る辺りがラタニで、それでも寄付を続けているのなら姉のプライドを優先したのだろう。


 それはさておきラタニはともかく、その人物は諸事情から名前を明かせない以前に自身の行いで善人扱いされるのをとても嫌がっている。

 しかしロロベリアとしてはその人物の行いを少しでも多くの人に知ってもらいたい。

 不遇な過去や事情から公に出来ない功績が多くあるだけに、せめて事情を知っても特に疑問を持たず素直に受け入れてくれるミューズになら良いのではないか。

 また秘密を打ち明けてくれたミューズに対し、ロロベリアはまだ打ち明けていないその人物の秘密が多くある。仕方がないと言えば仕方ないが、これくらいの秘密なら打ち明けても問題はないはず。

 なにより年越し祭で声もかけず途中で抜け出したその人物にもやもやしている。ちょっとした意趣返しも兼ねて、誠意を示してくれたミューズに誠意のお返しをロロベリアは決意した。


「……ミューズさん、少し良いですか」

「はい?」



 その決意から数日後――



「ミューズから恥ずかしがり屋の紳士宛に手紙が来たんだが……どうも俺だと察しているような内容に思えてならん」

「…………」


 初めて自室に招かれたロロベリアの顔がテーブルに積まれた手紙の山を見るなり青ざめる結果を招いたのは言うまでもなく。


「そして何故かお前からも恥ずかしがり屋の紳士宛の手紙が来ているんだが、弁解があるなら聞いてやるぞ」

「……ありません。その手紙に書かれていた謝罪が全てです」


 追求されたロロベリアは自主的正座でミューズに打ち明けたと正直に認めた。

 というよりミューズに打ち明けた後、子どもたちと一緒に書いた手紙に事情を全て綴っているので今さら。

 そもそも嫌がりながらもこの手紙全てに目を通しているなら子どもたちの気持ちを喜んでいるはずなのに、不機嫌そうに追求してくる辺りが何とも捻くれている。


「でもね……ミューズさんも秘密にしてくれるし、別に恥ずかしがらなくても――」


「あん?」


「……本当にごめんなさい」


 故に凄まれたロロベリアは深々と頭を下げつつ、恥ずかしがり屋の紳士より捻くれ者の紳士に改名した方が良いと内心愚痴を零していた。




年末SSがしんみりした内容だったので、年始SSは明るい内容にしてみましたが如何でしょうか?

ちなみに本人の希望から『恥ずかしがり屋の紳士』の名前は最後まで伏せていますが、正体は分かりますよね(笑)。


そして次回更新から本編も再開。

どうか本年度も『白き大英雄と白銀の守護者』をよろしくお願いします!


読んでくださりありがとうございました!

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