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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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厳しい意見と捻くれ者

アクセスありがとうございます!



 エランの急な訪問後にユースが、少し遅れてアヤトとリース、他の面々に配慮して姿を現せていたマヤが帰宅。

 ニコレスカ姉弟と同じくマヤもエランの訪問に首を傾げていた。エランが居るとは気づけても要件までは知らないので無理はない。

 またエランもサクラやミューズたちの訪問を知らないので面食らっていたが、アヤトは一声かけただけでそのままキッチンに立っていたりする。

 まあ当初の予定はアヤトの食事をみんなで楽しむこと。つまり予定通りに夕食の準備に取りかかっているのだろう。

 アヤトの対応に苦笑しつつエニシとレムアが手伝う中、とりあえず詳しい事情を聞くために招き入れたが――


 

「……だからアヤトに謝罪なのね」


 ロロベリアは納得しながらも眉根を潜める。

 挑発に乗ってアヤトへの口添えを約束したなら当然の謝罪。しかしエランの実力を知るだけにファルシアンに敗北したのが驚きだ。

 また同じく実力を知るリースや、実際にエランの実力は知らなくとも事前情報からミューズも驚いているのか戸惑いを感じる。


(……ありえると言えばありえるか)


 ただユースは特に驚きもなく冷静に受けいれていた。

 エランの実力は一学生でもトップクラス、序列保持者にも匹敵する実力がある。また体術と精霊術を上手く取り入れた戦法も充分脅威。

 しかし弱点もある。上手く取り入れてもエランの戦法はあくまで近中戦特化型、精霊士と同じで遠距離からの攻撃に弱い。単純な攻略法として精霊術の火力で押し切るのも可能だ。

 そしてファルシアンは四大で最も攻撃特化の火の精霊術士。二人の保有量に大きな差があるならエランは強みを活かせないまま敗北するだろう。


 ただ単純でもエランの速度、特に間を詰める技能はかなりのもの。言霊の習得だけではその攻略法も難しい。故にユースの見立てでも学院生の中でその攻略法が可能な、精霊術を主力とする精霊術士はディーンとミューズのみ。

 つまりファルシアンは少なくともディーンクラスの精霊術士になる。


(ただの変な奴ってわけでもなさそうだな)


 加えてエランと競い合える基礎能力、ファルシアンも序列保持者を脅かす実力者と認めざる得ないがユースは敢えて私感を伝えない。

 エランも自身の戦法にまだ改善する余地はあると自覚している。単純に相性が悪かった、などと伝えたところで慰めにもならない。

 なにより慰める必要はない。厳しいかもしれないが今回の一件はエランの自業自得、本人も理解しているなら尚更だ。


「……アヤトはどうするの?」


 そう判断するユースを他所に、ロロベリアはキッチンで調理を続けるアヤトに問いかける。

 決闘で敗れたエランは約束通りファルシアンとの対面をアヤトに頼まなければならない。アヤトを慕っているからこそエランは許せなかった、そんな心情も踏まえて同情しているようで。

 ロロベリアだけでなくミューズやリースも同じ気持ちなのか、向ける視線に期待が込められている。


「どうするもこうするも――」


「アヤトには関係ない話じゃ」


 だがアヤトの返答を遮るようサクラが一蹴。


「そもそも今回の一件はファルシアンの口車に乗せられ、勝手に約束を交わしたエランが悪い」

「ですがエランさんは――」

「アヤトを思うからこそ引き受けた決闘とでも言うつもりか? それこそ関係なかろうて」


 すかさずミューズが弁護するもサクラは被せるように否定、そのままエランを見据えた。


「妾が薄情と思うのなら思うがええ。しかしな、どんな事情があろうとお主が勝手に交わした約束じゃ。それをアヤトが叶えておったらキリがない。それともアヤトの為に戦いました、敗北したから同情して叶えて欲しいとでも言うつもりか?」


 厳しい批判をしながらもサクラの視線には優しさが感じられて、唖然となるエランに微笑みを浮かべた。


「などと説教する必要もないんじゃがのう。なんせお主は自身の過ちを反省しておる。故に最初からアヤトに懇願するつもりはないんじゃろう?」

「……どうして分かったんですか」

「約束を守ろうとするなら、最初からお願いがあって来たと口にするはずじゃ。しかしお主は謝罪をしに来たと言っておった。なら勝手に約束してごめんなさい、と伝えたかったんじゃろう?」

「……それと、アヤト兄ちゃんに鍛えてもらってるのに、簡単に負けたのが申し訳なくて……ですけど」


 サクラの推測にエランも弱々しく笑みを返し補足するよう、ユースも察していたからこそフォローしなかったのだが。


「……そうなの?」


 やはりロロベリアを含めてエランに同情していた二人も気づいていなかったようでキョトンとしている。

 まあエランの言動を深く読み取るよりも心配を優先して気づけなかったのだろう。そういった優しさも三人の美徳。

 対し気づいた上で敢えて厳しい言葉をかける辺りはさすがは皇女というべきか。深謀だけでなく、厳しさに秘めた優しさはサクラらしい。


「まあ可愛い弟分の敵討ちをしたいのであれば止めはせんぞ? それはそれで楽しそうじゃ」


 また妙なところで茶化すのもサクラらしいというべきか。心底楽しそうに改めて問えば調理を続けながらアヤトはため息一つ。


「誰が敵討ちなんざするか。つーかエラン、謝罪なんざ必要ねぇよ」

「でも……俺は勝手に――」

「勝手なのは俺も同じだ。お前の振る舞いにどうこう言える立場でもないからな」


「自覚してるんだ……」

「自覚してた」

「自覚してるのかよ……」


 苦笑交じりに告げるアヤトにロロベリアとニコレスカ姉弟は思わず突っこんだ。


「それよりもあやつ、可愛い弟分というのを否定しておらんぞ? ほんに捻くれておるわ」


 更にサクラが茶化すもアヤトは無視。


「故に謝罪は必要ねぇが、お前の為にあの愉快な天才さまと会うつもりはない」

「……分かってるよ。でもアヤト兄ちゃん……勝手にあいつと約束して……負けて……ごめん」


 改めて拒否されてもエランは素直に受け入れ、変わりに立ち上がりアヤトに向けて深々と頭を下げた。


「必要ねぇと言ったんだがな。ま、それもお前の勝手か」

「だからアヤト兄ちゃんも勝手に受け取ってて」

「へいよ」


 最後まで顔を向けずアヤトは適当に返すもエランの表情にようやく笑みが戻り、ならばとユースも立ち上がる。


「とりあえずアヤト兄ちゃんは置いといて、オレたちこれからエニシさんとレムアさんに遊んでもらうんだけどエランくんもどうだ?」

「……いいんですか?」

「いいもなにも要件済ませてバイバイも違うだろ。せっかく来たんだから飯も食ってけよ。アヤトも構わないよな」

「お前が飯抜きになるなら構わんぞ」

「せめて減らすにしろよ! とにかく良い機会だし……ただ今まで自重してたからここに来たのを気づかれなようにしないとだ」

「ならば妾の馬車で寮の近くまで送ってやるぞ。なんせエランも妾のお友だちじゃ、別に見られても構わんじゃろう」

「皇女さまとお友だちも充分悪目立ちだけど……どうする?」

「……ですね。俺ももっと強くなりたいんでお願いします!」


 サクラのお陰で懸念も解消されたことでエランもやる気に満ちている。

 敗北が悔しいなら強くなればいい。単純でも変に引きずるよりはずっと有意義な思考だ。

 前向きなエランの申し出にロロベリアたちも歓迎。


「手伝いはもういいぞ。それよりもひよっこ共の相手を頼む」

「「畏まりました」」


 対するアヤトはエニシとレムアに予定通り訓練を頼み、そのまま調理を続けるようで。


「エランくんの為に会うつもりはないって……ほんと不器用な奴」


 大所帯で訓練場に向かう中、一人黙々と調理を続けるアヤトを尻目にユースは呆れてしまう。

 

 なんせアヤトは予定通りに事が運べば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 エランの為ではないので間違ってはいない。

 しかし無駄に捻くれた物言いで突き放せば呆れもする。

 ただアヤトのやり方に口出しも、邪魔もするつもりはない。むしろ協力者として使われている立場だ。



 故に翌日の学院終了後――



 今ごろファルシアンと接触しているアヤトに変わり、ユースも目的の人物を探して序列十位の訓練場に向かっていた。


「……ご苦労なことで」


 予想通りというべきか、訓練場の物陰に目的の人物はいた。

 アヤトが来るまで張り込んでいたのか、ファルシアンと違い目立つ行動は控えているも不審者にしか見えない。

 その執念に賛同はできないが、人気のない場所は好都合と声をかけた。


「そんなところで何してんの?」

「……あなたは序列四位の」

「ユース=フィン=ニコレスカ。気軽にユースくんと呼んでもいいぜ?」


 いきなり声をかけられた相手は肩を振るわせ警戒しているが笑みを絶やさずユースは続けた。


「オレも気軽に()()()()()()()って呼ばせてもらうからな」

「…………」


 軽薄な態度にレイティの警戒が更に増したのは言うまでもない。


 


普段は親しみあるサクラさまですが皇女としての厳しい一面も持ち合わせています。ですが基本はノリ良い皇女さま、アヤトを茶化す際は活き活きでした。

それはさておき、ファルシアンの実力はディーンなみと分析したユースがアヤトくんのお手伝いとしてレイティと接触しました。

その目的や狙いは次回で! ……ファルシアンと接触したアヤトサイドは後ほどのお楽しみとなります(汗)。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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