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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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動き始める

アクセスありがとうございます!



「今年の新入生は本当に……」


 学院終了後、学院生会室でエレノアは嘆いていた。

 なんせ今日の昼休憩時、アヤトに挑戦状を叩きつけた新たな新入生が現れたのだ。ファルシアンの一件から懸念していたが、生会長として頭が痛くなるのも仕方がない。


「それで、今回はどうなったの?」

「噂は広まってるけど、乱闘騒ぎにはならなかったんだろ」


 生会長になって立て続けに問題が起こるエレノアを不憫に思いつつ、ランとディーンは詳しい情報を求める。

 二人や他の学院生はロロベリアやニコレスカ姉弟、ミューズと違ってたまにしかアヤトの学食を利用しない。昼休憩時から一気に噂が広まってはいるが、講師陣が動いていないなら大きな問題になっていないだろう。

 詳しい顛末を知らなければ対処を話し合うことも出来ない。故に居合わせたであろうミューズから事情を聞いているエレノアに確認するも、呆れきったように盛大なため息が漏れた。


「……最終的にその新入生とクォーリオ、そして先生が学食から出入り禁止になったそうだ」


「「ちょっと言ってる意味が分からない」」


 その顛末にランとディーンは即座に反応。

 問題の新入生が出入り禁止になるのはまだ分かる。

 そして停学開けから学食を利用しているファルシアンも大人しくしているらしいが、度々注意を受けているので最終的に出入り禁止になるのもまだ分かる。

 しかし何故ラタニまで出入り禁止になるのか。ファルシアンの対応も含めて、アヤトは今回どんな対応をしたのか予想もできなかった。


「では私が詳しく説明をしましょう」


 お疲れのエレノアに変わりレガートが口を開く。

 居合わせてはいないが噂を聞きつけるなり情報収集していたのだろう。こういった手腕や人脈はさすが仕官クラス代表と言ったところか。

 それはさておき、エレノアも任せるようで視線で促せばレガートは咳払いを一つ。


「まず問題の新入生は精霊騎士クラスの一学生、レイティ=フィン=アランドロスです」

「……うちのクラスだったんだ」


 精霊術クラスではなく精霊騎士クラスと知り呆れるランを他所にレガートは学院生会のメンバーを見回す。


「ちなみにイルビナさんはご存じですか?」

「なぜワタシ」


 そのままイルビナに質問するも普段通り抑揚のない声と共に小首を傾げる。


「別にあなただけではありませんよ。彼女は男爵家の子女、貴族同士の繋がりもあるかとの確認です。ちなみに私はありません」

「ワタシに貴族の繋がりはない」

「ではエレノアさんは?」

「アランドロス家は知っているが、さすがに面識はない」

「そうでしたか。では私が知る彼女について説明します」


 イルビナやエレノアに確認した上でレガートは続けた。


「レイティさんは入学試験の実技試験は主席、まあ精霊騎士クラスの中で、ですが」

「だから、なんでお前が入学試験の結果まで知ってんだ?」

「そして面接では身分による差別意識はそれほどないとの評価です」

「いやだから――」

「ですが精霊力の有無による差別意識があるようで、今回の暴走はそれが原因と付け加えておきます」

「……こいつの情報網が怖いんだけど」


 本来知ることが出来ない試験結果を平然と述べるレガートにディーンが突っこむも無視されたが、根本的な問題は理解できた。

 レガートの言う通りなら持たぬ者の序列入りに不満があり、ファルシアンを切っ掛けに自分もと名乗り出たのか。

 ただレイティの行動からラタニが出入り禁止になるまでの繋がりは未だ理解できないと、ディーンも疑問を抑えて続きを促す。


「そして一連の流れですが、レイティさんの挑戦に対してまず食事中のファルシアンさんが異を唱えたそうです。アヤトさんに挑戦するのは自分だと」

「入れ替え戦の挑戦権を得てからにしろって……」

「ですがレイティさんはファルシアンさんに『あなたのように持たぬ者なら安易に序列を勝ち取れるとの姑息な理由ではない。自分は持たぬ者が精霊力を持つ者に勝利した不正を暴きたいだけだ』と反論したそうですが……」

「……本当に差別意識はあるみたいね」


 不正を前提とした反論からレガートの情報通りレイティは精霊力の有無による差別意識はあるようだ。信じられない気持ちは分かる。自分たちもアヤトの実力を知るまでは受け入れられなかった。

 それでも入れ替え戦を前に公衆の面前で挑戦状を叩きつける行為は違う。レイティ以外からも挙がってはいるが、公式戦は講師陣が事前にチェックをしているので不正はあり得ないと分からないのか。

 なによりアヤトに挑戦したいなら来月の入れ替え戦で挑戦権を得ればいい。にも関わらずファルシアンといいレイティといい、なぜ先走るのか。


「後のリスクを無視して感情のまま動くのは理解できないです」


 シエンも呆れるように規則から逸脱すれば学院側の心証も悪くなる。例え有望株だろうと問題を起こせば将来を棒に振るのも分からないのか。


「ファルシアンさんも興味深いだけでそのような野心はないと反論、そのまま二人は言い争いを始めたので今回も言伝役としてシルヴィさんが仲裁に入ったらしいのですが……そこにアーメリ特別講師が現れたそうです」


 などと疑問視している中、更に読めない人物が登場。


「二人の言い争いを居合わせていたロロベリアさんから事情を聞くなり――」


『今年のひよっこ共は元気があってよろしい。てなわけで、アヤトへの挑戦権はケンカで勝ちとれい!』


「「なにがてなわけ……?」」


 やはり予想斜め上の対応にランとディーンの気持ちは一つになった。

 特別講師がまさかの火に油を注ぐ言動もまた後のリスクを無視している。


「アーメリ特別講師の許可を二人は本気にしたようで……ですが、再びアヤトさんの言伝を伝えたシルヴィさんが――」


『カルヴァシアからの言伝だ。入学したてのひよっこ共、さっきからギャーギャーうるせぇんだよ。テメェらは出禁だ。つーかラタニ、バカを煽るテメェもしばらく出禁だ。逆らえば今後二度と酒のつまみを作らんからそのつもりでいろ』


「その剣幕は学食内が静まり返るほどで……まあレイティさんはシルヴィさんに恐れて、ファルシアンさんは嘘くさい反省から従いました。アーメリ特別講師はアヤトさんの言伝が効いたのでしょう。それは困るとほとぼりが冷めるまでは従うようです」


「「…………」」


 ここでも予想斜めの顛末に二人は言葉がない。

 恐らくファルシアンの一件から相当ストレスが溜まっていたのだろう。ラタニ相手にも引かずに言い切ったシルヴィにむしろ同情した。


「その後、講師舎でアーメリ特別講師は二人を煽ったことを咎められたそうですが、二人は未遂ということも含めて注意を受けたくらいですね」


 そしてラタニも含めて三人には一切同情できなかったがとにかく。


「もしアーメリさまが仲裁に入らなければカルヴァシアが介入していたです。それはそれで面白そうですが、学院生会としては期待するわけにはいかないです」


「「個人的にもダメな期待だから……」」


 目を輝かせるシエンにジト目を向けるランとディーンには同意だが、ラタニが来なければさすがにアヤトも厨房から出てくる。そのまま強制的に退場させようとすれば、元より対戦を望んでいた二人がどう出るか。

 アヤトは無駄な争いや面倒事を嫌うも非常に口が悪い。考え無しな二人が煽られてより悲惨な顛末を迎えていた可能性が高い。そういった意味ではラタニが介入した分だけマシなのかもしれない。

 また講師陣が注意したなら学院生会として処分する必要もないが、このまま放置するわけにはいかなくなった。

 新入生の暴走を早急に治めなければ未だアヤトの序列入りに不満を抱く二、三学生が黙ってはいないだろう。


(……お兄さまならどう対処するだろうか……いや、違うな)


 こういった問題もレイドなら上手く対処すると考えていたエレノアだがすぐさま首を振る。

 今は自分が生会長なら不器用なりに出来ることをするべき。

 先代からアヤトという起爆剤を含めて学院の未来を託されたなら、ここで上手く対処できなければ先はない。

 なにより学院の未来を託されたのは自分だけでもない。


「入れ替え戦まで様子見するつもりでいたが、学院生会として今後の対策を考えるべきと思うがみんなはどうだ」

「あたしとしては入れ替え戦まで大人しくしてろって言いたいけど……さすがにね」

「今は大人しいけどカルヴァシアがなにやらかすか分からないし」

「無駄な仕事を増やされる前に対処方を考えるのは賛成です」

「私も同意見ですね」

「…………」


 意見こそ口にしないもののイルビナもこくんと頷いているなら同じ気持ちでいるようで。


「決まったな」


 頼もしい同志を前にエレノアは笑みを浮かべつつ、今期の学院生会でも出来ると自信を持って会議を始めた。




学院生会サイドで語られた新たな問題児レイティの顛末でした。

レイドと比較せず、仲間を頼るエレノアも生会長として成長しています。

そしてファルシアンに続いてレイティの登場で学院生会も動き始めましたが、次回はレイティの登場です。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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