表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
491/782

問題は続く

アクセスありがとうございます!



 ファルシアンがアヤトの学食に訪れてから二日が経った。


「なら学食では大人しく食事をしているだけか」

「一応……ですけど」


 学院終了後、学院生会室で作業をしながらエレノアとロロベリアは情報交換。

 今日はエレノアやディーンにユースの四人で合同訓練をする為、早めに学院生会の仕事が終わるよう手伝っている。なので巡廻中のラン、レガート、シエン、イルビナの四人に代わりユースも書類作業をしていた。

 ただエレノアとしては次期生会長候補のロロベリアや次期精霊術クラス代表候補のユースに今の内に学院生会の仕事に関わらせておきたい目論見もあったりする。

 元より有力な候補がいる場合、早め早めに関わらせるのが学院生会の暗黙の了解。現にエレノアやミューズは二学生になってすぐ雑用係として関わっていた。

 最終的にミューズは学院生会に入らなかったが、生会長以外の代表候補は各クラス代表が候補選出をするのでエレノアは関われない。しかし少なくともユースは選出されると見込んでいた。


 そんなエレノアの目論見も知らず書類整理に勤しむロロベリアが渋い表情をする理由はもちろんファルシアンの動向。

 停学明け、謝罪と決闘の再度申し込みを目的にいきなりアヤトの学食に訪れて以降はただ食事をしに来るだけなので大きな問題になっていない。

 しかし相変わらず無駄に大きなリアクションと声を出すので度々注意するシルヴィの心労を考えると可哀想で。


「変わりに講習以外の時間はカルヴァシアを探し回ってるんだろ?」


 またディーンが呆れるように、仕事中が迷惑ならそれ以外なら問題ないとファルシアンは時間を見つけては学院敷地内を探し回り、早朝は校門前で待ち伏せしている。

 入学式のやらかしや学食に訪れたりと考え無しな行動をするワリに弁えも出来るようだが、アヤトとはまだ接触できていない。

 なんせ学食の仕事や希に参加する講習以外でアヤトがどこで何をしているかは謎。せいぜい学院が終わればリースの稽古で序列専用の訓練場に居るくらいだ。

 そしてリースからまだファルシアンは訪ねていないと聞いている。まあ二人が利用しているのは序列九位の訓練場。アヤト目的なら十位の訓練場になるので、もしかしたら既に訪ねているかも知れないが。


「変な奴だけど行動力は凄いよな。今まで序列保持者と決闘する為に探し回る一学生とかいないだろ」

「それ言うなら新入生代表挨拶で決闘申し込む新入生もっすよ」

「「確かに……」」


 ユースの補足にロロベリアとエレノアも苦笑いで同意するよう、ファルシアンのような向こう見ずな新入生はさすがに前例はない。

 故にある意味その行動力には関心する。学院を代表する実力者、序列保持者に挑みたい気持ちはロロベリアにもあった。強者と競うことで学び、己を高めたい向上心も共感できる。


 問題はファルシアンの目的がアヤトだと言うこと。精霊力を持たぬ者が持つ者を相手取ることが出来ないのは常識だからこそ、アヤトになら勝てるのではないかと目論んでいるかもしれない。序列保持者という肩書きはそれだけ名誉がある、そういった野心を抱いても不思議ではない。

 加えて異例の序列入りを果たしたことでアヤトは悪目立ちしている。選抜戦などで実際にアヤトの実力を目の当たりにした学院生の中にも未だ懐疑的な目で見られているなら、新入生にとっては余計に信じがたいだろう。


 そんな状況下でファルシアンが周囲の目も気にせずアヤトとの決闘希望を公言し続ければ新入生の疑心を更に煽る。このままだと新入生の中で他にもアヤトとの対決を望む者が出てくるかもしれない。


 かといって解決策としてファルシアンの希望通りアヤトを戦わせて周囲を納得させるわけにもいかない。序列保持者に挑めるのは三ヶ月に一度の入れ替え戦のみ。強引な手法や訴えで希望を叶えてしまえば入れ替え戦の意味をなくす。

 ファルシアンも入学式以降は変に弁えが出来ているだけに大きな問題を起こしていない。こうなると学院側も対処が難しく、現状は来月の入れ替え戦まで様子見するのが精々。


「……カルヴァシアが大人しくしているのが唯一の救いか」


 故にエレノアがため息を吐くよう、講師陣や学院生会も解決策がなく困り果てていた。

 もしアヤトとファルシアンが直接顔を合わせたらどうなるか。考えただけでも頭が痛いだけに、今回ばかりはアヤトの対応に感謝しているほどだ。


「そういえばカルヴァシアは何か言ってたか?」

「相手をする気はないとは言ってましたけど……」

「後は無駄に声はでかいけど面白い奴、くらいっすかね。ちなみにファルシアンくんがお前の言ってた面白い新入生かって返答には『さあな』でしたけど」

「お約束で交わしているなら可能性もありそうだな……」


 そしてそれなりに付き合いの長いメンバーなだけに、アヤトの言動から予想を立てられる。エランに続いてファルシアンも評価していた新入生なら、その実力には興味がある。

 だがそれ以前に学院生会としては入れ替え戦まで何事もないのを祈るしかない。


「ただいまー……て、なにこの空気?」


 巡廻から戻ってきたランは沈痛な面持ちを隠せないエレノアやディーンを見るなり首を傾げるほど不安しかなかった。


「何でもない。巡廻ご苦労、なにも問題はなかったか」


 気を取り直したエレノアが労いと報告を促せば、イルビナ以外は困り顔に。


「これと言ったは問題なく……ですが」

「話題の新入生が序列十位の訓練場付近を歩いていた、くらいですね」


 レガートとシエンの報告にやはり訓練場も訪ねているのかと更に不安を煽る。


「まあアヤトはリースと一緒だから行くだけ無駄だし、あたしも関わってないから」

「私の方で軽く注意をすれば素直に従ってくれましたよ。だからこそ対処に困るんですが……いっそのこと問題を起こしてくれれば……何でもありません」

「お前いま物騒なこと考えてたよな?」


 ディーンの突っこみにレガートは微笑むのみはさておいて。

 学食でユースがロロベリアやミューズを諭したように、序列保持者は出来るだけファルシアンに関わらない方針なのでランの報告に一先ず安堵。


 そしてファルシアンという不安材料はあれど序列保持者の方針も今まで通り、何よりまず最初の入れ替え戦に集中する。

 去年ロロベリアがジュードを倒す番狂わせが起きたように、エランやファルシアンのような有望株に同じ番狂わせを起こさせない。

 加えて今期は去年以上に訓練場を利用する学院生は増えている。未だアヤトの実力に懐疑的な面々が序列十位なら狙えるのではないか、という嘆かわしい思惑を抱いているのもある。しかしこれまでの意識改革が少しずつ実を結んでいるのも確か。現に選考戦に選抜されたほとんどの学院生は早速入れ替え戦で雪辱を果たそうと必死になっているらしい。

 故に傲らずやるべきことを続けることで模範を示すまで。


「そちらは順調に消化しているようですね。では残りは私たちに任せて、みなさんは先に上がってください」

「……いいのか?」

「序列保持者の実力向上はそのまま学院生の向上に繋がりますから。ならばそれぞれがやるべきことを、ですよ」


 序列保持者の方針を知るからこそレガートも協力を惜しまないと微笑みかけ、同意を示すようにシエンとイルビナも無言で書類業務に取りかかる。


「ならお言葉に甘えよう」

「ありがとな」

「「ありがとうございます」」


 その気持ちを無碍にするのは無粋と、感謝を告げて生会室を後にした。


「ならあたしも行ってくるね」

「サクラさ――」

「サクラ、でしょ?」

「……サクラとエニシさんによろしく伝えてくれ」

「りょーかい。ディーンもしっかりぼこられなさいよ」

「なんでぼこられるの前提なんだよ……まあ、ランもしっかりな」

「もち」


 サクラの屋敷でエニシから精霊力の扱いや剣技を教わるランとは別行動。同行するルイは学院生会の仕事が終わるまで自身の専用訓練場で自主訓練をしているので早く迎えに行きたいようだ。

 またミューズとジュードは今ごろラナクスに戻ってきたラタニから精霊術について教っていたりと、それぞれがアヤトの助言を元に必要な行動を起こしている。

 もちろんロロベリアも同じ。


「そんなわけで、今日は俺も参加させてもらうわ。イディルツに比べると物足りないかもしれないけどよろしくな」

「物足りないなんて……こちらこそよろしくお願いします」


 ディーンの自虐にロロベリアは表情を引き締める。

 アヤトが出した課題をクリアすることが大英雄に繋がるなら立ち止まるつもりはない。

 入れ替え戦も含めて、今は必要な経験を積む為に集中するべきと訓練場に向かった。


 のだが、翌日の学食で懸念していた事態が起きた。


「アヤト=カルヴァシア! 正々堂々私と勝負しなさい!」


「アヤト大人気だな」

「…………笑い事じゃありません」


 どうやら今年の新入生は入れ替え戦まで待てないらしい。



 

ファルシアンに続く問題児の登場です(笑)。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ