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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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苦労は周囲に

アクセスありがとうございます!



 入学式の翌日、一学生の講習が始まり今期のマイレーヌ学院も本格的にスタートを切った。


 しかし入学式でファルシアンの残した影響が大きく、一学生の間でアヤトの序列入りに対する疑惑が囁かれている。元より予想していた問題をファルシアンが煽った結果、予想以上にアヤトが注目されていた。

 そのアヤトと言えば安定の我関せず。一学生のささやきや注目など意にも返さず、またアヤトに直接真意を問いただす一学生も居ないので今のところ目立った問題が起きてないのが不幸中の幸い。

 ただ停学が明けたファルシアンの行動が読めないだけに、講師陣だけでなく学院生会も慎重に同行を見守っていた。


「ここがアヤト=カルヴァシア殿の運営している学食だね!」


『…………』


 ……にも関わらず停学明け初日にファルシアンが学食に現れ、入学式に参加しなくとも噂を聞いている面々は唖然。


「大盛況のようでなによりだ! ところでアヤト=カルヴァシア殿はどこにいるだろうか?」


 周囲の反応も無視でファルシアンはキョロキョロと学食内を見回す。入学式の時といい、意味もないリアクションや周囲の空気を読まないメンタルは尊敬を通り越して呆れるほどで。


「早速敵陣に乗り込んでくるとは恐れ入るぜ」

「敵陣って……言い方」


 そんな状況下を楽しむユースにロロベリアは肩を落とす。

 アヤトが責任者として運営している学食なら彼のテリトリーとは言えなくもないが表現が物騒、なにより楽しんでいる場合ではない。


「注意した方がいいかな……」

「……ですね。アヤトさまにご迷惑をかけるのは良くありませんから」


 学食の運営が安定してから基本厨房にこもりっぱなし。しかしこのままファルシアンを放置すれば間違いなくアヤトが出てくる。

 もし二人が対面すれば嫌な予感はしないロロベリアと、純粋にアヤトに迷惑をかけるファルシアンを見過ごせないと席を立つ。


「それはやめといた方がいいかもな」


 だが寸でのところでユースが止めた。


「あいつはアヤトの序列入りを疑問視してるだろ? なのに序列保持者のオレたちが割って入ると余計に拗れる。特にオレたちは選考戦でアヤトに負けてるからな」

「「それは……」」

「もしあいつから実際にアヤトの実力はどうだった、みたいな質問されても自分たちよりも強いとしか答えられない。でもあの手のタイプはそれで納得しない。してるならあんな宣戦布告もしないだろ。んで、そうなったら二人はどう答えるつもりだ?」

「「…………」」

「なにかあったら学院側や学院生会が動くだろし、オレたちが下手に動いて変に拗らせるくらいなら静観すべきってね」


 諭されて二人は何も言えない。なんせファルシアンの性格上、間違いなくユースの言う通りの展開になる。そうなった場合、舌戦の苦手な二人は上手く対処できる自身がない。特に過去何度もアヤトに関する発言でやらかしているロロベリアは耳が痛かった。


「それにある意味アヤトらしい対処するみたいだから」


「――おい」


 そんな二人にユースが安心させるよう諭せばファルシアンに声をかける人物が。


「おや? あなたはどちら様でしょうか」

「騎士クラス二学生、シルヴィ=モンドメルだ」


 ただファルシアンに対応しているのはアヤトではなくシルヴィで。


「これはこれは先輩とは知らず失礼を。私は――」

「今年度の新入生代表を務めたファルシアン=フィン=クォーリオだろう」

「知って頂けたとは光栄です」

「……嫌でも知ることになったんだ」


 ファルシアンに冷ややかな視線を向けつつシルヴィは続ける。


「私は訳あってこの学食で働いている。それでカルヴァシアからの言伝だ『ここは飯を食うところだ。騒ぎに来たならさっさと出て行け』」


『…………』

「な?」


 注目していた周囲が再び唖然となる中ユースは得意げに片目を閉じる。

 確かに面倒事を嫌うアヤトらしい対応と言えなくもないが、どうやらシルヴィはアヤトの言伝役を任されたようだ。


「騒ぎに来ただなんてとんでもない! 私は謝罪に来ただけですよ」

「謝罪?」


 対するファルシアンは疑問もなく受け入れ要件を告げた。


「入学式での無礼についてですよ。気持ちが抑えきれず、決闘を申し込んでしまったことでアヤト=カルヴァシア殿にご迷惑をかけてしまいました。また私の処分についてラタニ=アーメリさまに口添えをして頂きました」


 相変わらず芝居臭い仕草や口調ではあるもファルシアンは心から反省しているようで。


「アヤト=カルヴァシア殿はラタニ=アーメリさまのお弟子。故に庇って頂いたラタニ=アーメリさまにせめてもの誠意として、大切にされているお弟子に直接謝罪をしようと出向きました」

「……そうか」


 注目していた周囲も意外と思う中、誠意を汲み取ったのかシルヴィも警戒を解いた。


「なら私からカルヴァシアに――」


「そして謝罪後に改めて決闘を申し込みに参りました!」


 故に仲介をしようとするもファルシアンは不意に両手を広げて高らかに宣言。


「私的な場であれば誰にも迷惑をかけることはありません! なので是非ともアヤト=カルヴァシア殿に謝罪をさせてください!」


『…………』


「あのな……」


 先ほどの反省はどうしたと再び冷ややかな視線が向けられるのも構わずファルシアンは懇願。これにはシルヴィも呆れて物が言えず学食が再び静まるも、ファルシアンに近づく新たな人物が。


「……あの」

「おや? あなたはどちら様でしょうか」

「精霊学クラス二学生……フィーナ=メェルファ……です」


 やはりアヤトではなくシルヴィと同じく学食で働いているフィーナで。


「アヤトさんから言伝で……えっと、あなたには私的な時間でも学食は自分の職場だから迷惑です。謝罪をする気持ちは良いけど、他のお客さまにも迷惑だからするならそれ意外で……それと声が大きいから静かにしてください。後は……ご飯を食べないなら早く帰って下さい……だそうです」


 やはり言伝役を任されたらしがシルヴィと違い内気なのでそのまま伝えず、かなりマイルドな言い回だった。

 それはさておき、シルヴィに続いてフィーナまで言伝役に出すなら意地でもアヤトは出てくるつもりはないようだ。


「……なるほど。確かにアヤト=カルヴァシア殿は仕事中、私の配慮が足りなかったようだ」


 言い分(言伝)や相手をする気もないアヤトにファルシアンは片膝を突きゆっくりと首を振る。

 どこまでも芝居臭い態度だが今度こそ反省したのか、立ち上がった時は弱々しい笑みで言伝役の二人に頭を下げた。


「迷惑をかけて申し訳ない。そしてせめてものお詫びと貢献に私もここで食事をさせてもらいます。そして場を選んで改めて謝罪と決闘を申し込ませて頂くと、お伝え願いでしょうか?」

「は、はい……伝えてきます」

「フィーに言伝をせずともカルヴァシアには聞こえているだろう。まあいい、食事をするなら好きにしろとカルヴァシアも言っていた。ここは――」


 学食本来の目的ならアヤトも構わないようでフィーネは厨房に下がり、ファルシアンに学食のシステムについてシルヴィは説明を始める。


「変な奴だった。師匠が避けるのもよく分かる」

「……そもそも言伝で引き下がるんだ」


 ようやく学食内も落ち着きを取り戻したところでリースとロロベリアが身も蓋もない感想を口にする。

 最後まで厨房から出てこなかったアヤトもだが、ファルシアンのイメージだともっと強引な手段を取りそうなのに意外にも素直に従っている。

 まあファルシアンが強引に迫ればアヤトは自ら対応しただろう。もしそうなれば何が起こるか分からない。なので最後まで姿を見せなかったアヤトを褒めるべきか。


「さすがはアヤトさまです」

「オレとしてはどっちもっすね」


 この対応にミューズは称賛、ユースは予想斜めの対応と顛末に運んだアヤトとファルシアン両方に苦笑。

 ただ決闘は諦めていないので今後も警戒は必要だが、少なくともファルシアンが学食に訪れようと二人が接触することもないだろう。

 

「なんたる美味! 少なくともアヤト=カルヴァシア殿の料理の腕前は序列保持者クラスと認めざるえないね!」

「……カルヴァシアからの言伝だ『次でかい声を出せば叩き出す』」

「つまり私の決闘に応じてくれると?」

「叩き出す役は私だ……とにかく私に迷惑だから静かにしてくれ」


 代わりにシルヴィは苦労しそうだが……。



 

アヤトとファルシアンの接触……シルヴィとフィーナが間に入りましたが、まずはアヤトが一枚上手でしたね。

その代わりに周囲が苦労するんですけど、アヤトだけでなくファルシアが関わると苦労も二倍ですね……。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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