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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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処分の結果

アクセスありがとうございます!



 入学式終了後、ランとミューズはロロベリアの序列専用訓練場のリビングルームでレムアの用意したお茶で一息。

 序列保持者は入学式後は自由なので序列保持者の女性陣が集まり訓練をする予定を入れ

ていた。

 アヤトの助言を元に話し合った結果、去年とは違う試みとして序列保持者同士の訓練を取り入れているのだが、女性陣といってもリースは不在。アヤトの弟子になって以降、学院終了後は一緒に訓練をしているので今回もそちらを優先。

 またエレノアが遅れているのは入学式が原因。

 式典中の、しかも新入生代表挨拶で序列保持者に決闘を申し込むという前代未聞の出来事が起きたのだ。新入生代表ファルシアンの処分について話し合う会議に生会長として参加することになった。


「それにしても、今年の新入生代表は凄かったわね」


 なのでエレノアを待つ間、ラン持ち出す話題もそのファルシアンについて。

 強制退場後も入学式は執り行われたが足早に終了。不安材料だったラタニやアヤトの紹介もサクッと切り上げたので更なる問題が起きずに済んだのは不幸中の幸いといえるも、記念すべき門出の式をぶち壊された他の新入生が不憫でならない。


 ちなみに式典後にサクラと少しだけ話す機会はあったが、彼女は大いに楽しんでいたのもある意味不幸中の幸いか。帝国の皇女が参加する入学式であれだけの騒動を起こせば王国の面子も丸つぶれだ。


「ある程度は覚悟してたけど、まさか入学式でアヤトに絡んでくる子がいるなんて。しかも新入生代表よ?」

「ですね……」


 それはさておきランの呆れにロロベリアも同意。

 在学生の中でもアヤトの序列入りに反感はあっただけに、新入生の中でもそういった声が挙がるとは覚悟していた。何度かアヤトの実力を目の当たりにした学院生ですら受け入れられない者が多いなら当然で。

 故に式典中でもある程度の反応を予想していたので、序列保持者の紹介でアヤトがやらかさないか心配していたのに堂々とケンカを売る新入生が現れるのは予想外すぎる。


「下手をすれば退学処分にもなるのに……どうしてあんな挨拶をしたんでしょうか」

「ただの自信過剰か、考え無しか。なんにせよ、学院に実家の後ろ盾は通用しない。いくら伯爵家の跡取りでも立場はヤバイのは確かね」

「ランさん、彼のこと知ってるんですか?」

「なんでロロベリアが知らないのよ……」


 思わぬ情報にロロベリアはキョトンとなるもランは脱力。

 にこにこと自分たちのやり取りを聞きながらお茶を楽しむミューズに声をかける。


「ちなみにミューズは知ってる?」

「留学前に王国の名家は一通り教わっていますから」

「らしいわよ。あたしも終了後にエレノアから聞いて知ったけクォーリオ家ってティエッタさんのロマネクト家に並ぶ王国の名家だって」

「…………」


 平民で貴族社会と縁の無いランはともかく、必要とはいえ留学生のミューズも知る王国の名家を知らないロロベリアは居たたまれなくなった。

 まあニコレスカ家に養子として加わっても貴族と関わらず訓練に明け暮れ、最低限のマナーしか教わっていない。なにより正式な貴族として育ったはずのリースも知らないだろうとランもこれ以上の意地悪を止めてクォーリオ家について説明を。


「それでティエッタさんと比較してるように、クォーリオ家も昔から多くの武人や官僚を輩出してる名家らしいけど……精霊力持ちの子に恵まれてなかったんだって」


 ファルシアンの実家は王国で多くの騎士、精霊騎士、精霊術士を輩出しているロマネクト家に並ぶ武の一族がクォーリオ伯爵家。

 しかしロマネクト家と違い先代以降は精霊士や精霊術士が生まれず、現在は優秀な騎士や官僚に就く者はいれど、精霊騎士や精霊術士が居ないだけにロマネクト家に押されつつある状況。

 もちろん騎士や官僚も国にとっては必要な人材。しかし国の主力となる精霊騎士や精霊術士が生まれないのは武の一族として面子が立たない。


 そんな中で生まれたのがファルシアン。念願の精霊力持ちが生まれ、精霊術士として開花しただけでなく保有量や才能にも恵まれていればクォーリオ家もたいそう喜んだだろう。


「……こう言ってはなんだけど、そんな事情があるなら彼は甘やかされてたんじゃ」


 故にロロベリアが身も蓋もない感想を述べる。

 念願の精霊術士で才能も充分、だからこそ厳しい教育も受けているだろうが挨拶時の振る舞いからそう捉えられても仕方がなく。


「可能性はあるかも。ミューズはどう思う?」

「入学式の最中でアヤトさまにあのような申し出をするのは問題があるとは思います。ですが明るく楽しい方でしたね」


「「……ですね」」


 どんな相手でも肯定的に捉えるミューズなのである種予想通りの返答。意見を求めたランだけでなくロロベリアも苦笑い。

 明るく楽しいは間違っていないだろう。しかしファルシアンの場合は度が過ぎている。


「とにかく、講師殿が退場させてくれたのは英断だったわね。あのままアヤトを放っておいたら乱闘開始で間違いなく入学式は中止」

「いくらアヤトでもそこまでは……」

「ロロベリアさんの言う通りです。それに――」


「待たせたな」


 などとランの厳しい意見にロロベリアだけでなくミューズも反論に加わる中、エレノアがリビングルームに。


「エレノア、お疲れさま。それでどうなったの?」


「「…………」」


 そのままランはエレノアに質問を投げかけるので、アヤト擁護派の二人は若干不満げ。

 しかしファルシアンの進退は二人も気になるところ。故にエレノアの返答を待っていたのだが。


「五日間の停学と反省文の提出で決まった」

「……さすがに甘くない?」


 処分内容にランが訝しむのも当然。

 新入生代表挨拶を放棄して決闘を申し込み、入学式を強制退場させられたのだ。退学とまではいかなくても、もっと厳しい処分を受けてもおかしくないはず。

 ロロベリアも過去自分が受けた処分と同レベルに疑問がある。あの時は誘拐事件に巻き込まれた事情から学院に無許可で外泊した違反は軽減されたが、退場時のファルシアンの様子から反省の色は見られなかったなら軽減理由はない。クォーリオ家に配慮したわけではないだろうが違和感はある。


「先生が弁護した結果だ」


「「ああ……」」


 しかしエレノアの一言で違和感も払拭。


「ガキなら多少のやんちゃもする。それに序列保持者相手にケンカを売る気概は買うべき、やる気満々なのは良いことだ、とな。ただ私から見る限り、楽しんでいたように思えたが」

「あれで多少って……」

「それに去年の入学式もある。先生の処分が説教なら、今回くらいは見逃してもいいだろと仰っていた」

「……自分の処分を持ち出してまで」


 苦笑しつつ会議中のラタニの発言や様子をエレノアから聞いたランとロロベリアは項垂れるしかない。言われてみれば去年の入学式でやらかしたラタニが翌日から普通に講師を務めていたなら、ファルシアンにだけ重い処分を下すのも違う。

 それでもお説教のみで済ませられる問題でもないと話し合い、五日間の停学と反省文で纏まったらしい。


「とにかく報告は以上だ。遅れた私が言うのも何だが、訓練を始めよう」

「そうですね」

「あたしたちが何を言っても変わらないし、時間も惜しいか」

「頑張りましょう」


 話を切り上げるエレノアに三人も切り替え立ち上がった。

 早速アヤトにケンカを売ったファルシアンが停学明けにどんな行動を起こすのか心配ではある。また彼がアヤトの評価した一人だとしても、違うにしても今はできることを第一に。

 学院を牽引するのも序列保持者としての責務。まずは最初の入れ替え戦に備えて己を高め、相応しい姿勢を示さなければならない。

 時間を無駄にしないよう、それぞれ集中して訓練に挑んだ。 


 しかし五日後の昼休憩時――


「ここがアヤト=カルヴァシア殿の運営している学食だね!」


「…………」


 いつものように学食でニコレスカ姉弟やミューズと昼食を楽しんでいたロロベリアは、ファルシアンの高らかな声に嫌な予感が拭えなかった。




この子は甘い処分だから反省していないのか……。

とにかく次回、ついにアヤトくんとファルシアンが接触します。

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