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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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今年の新入生代表

アクセスありがとうございます!



 エランを自宅に招いた翌日。


 水精霊の周季三月最終日の今日はマイレーヌ学院の入学式。

 二学生、三学生は休養日になるが学院生会と序列保持者は学院生代表として紹介されるので出席。

 故にロロベリアとニコレスカ姉弟は普段通りの時間に登校。言うまでもなくアヤトは朝食後を済ませるなり一人先に出かけているが、自由奔放でも律義なので入学式には出席するだろうと、相変わらず一緒に登校してくれないのをロロベリアはもやもやするくらいで心配はしていなかった。


 そして入学式が始まるまで生会室に待機している他の序列保持者や学院生会もアヤトが居ないのを呆れこそすれ時間には来るだろうと放置。せいぜいジュードが序列保持者としての自覚云々とぼやいていたがそれはさておき。


「……やはりカルヴァシアの言っていた新入生はモーエンさんの息子だったか」


 アヤトを除く面々が揃うなりユースの話を聞いたエレノアは納得の表情。

 入学式前にロロベリアとユースがエランと遭遇したことや、自宅に招くことは翌日の内に序列保持者には伝えていた。なんせアヤトが面白いと評価するほどの新入生、他の面々も興味がある。

 ただ興味はあれど序列保持者が押しかけるのも目立つ上に、学院生会は入学式の準備がある。なのでエランについては三人に任せて情報のみを聞くつもりでいた。


 もちろんエランの実力について詳しい情報までは求めていない。序列入れ替え戦でエランが挑戦する可能性があるならフェアではないとの配慮。

 まあユースを始め、ロロベリアやリースとの実力差を痛感したエランは最初の入れ替え戦は見送り情報収集に努めると話していたが、やはり一方的に知るのも違う。


 ちなみにロロベリアとリースもエランに勝利。また交流が上手くいったのか帰宅する頃には『ロロ姉ちゃん』『リース姉ちゃん』『ユース兄ちゃん』と呼ばれるまで慕われるようになっていたりするがとにかく。


「実力や戦い方からして間違いないっすね。ぶっちゃけジュード先輩やルイ先輩はこのままだと負けるっすよ」

「……くっ」

「そうか……」


 ユースの容赦ない評価にジュードは表情を歪め、ルイは肩を落とす。


「それとエレノアさまやラン先輩にとっては相性悪いと思いますよ」

「……それは厄介だな」

「精霊術士なら仕方ないか」


 続いて名を上げられたエレノアとランは神妙な顔つきに。

 ランは精霊士なので精霊術の扱いが上手い相手とは元々相性は悪く、エレノアは搦め手に弱いので同じくエランとは相性が悪い。


「もちろん他のみなさんも気を抜いたらやられるかもしんないんでお気を付けて。オレたち含めて、ですけど」


 そして今回は勝利したが、エランが変換術を習得すれば更に手強くなるというのがユースの評価とクギを刺すが一応でしかない。

 エランの実力以前にここにいる面々に序列保持者だからと自惚れ、挑戦者に高をくくるような者はいない。

 また辛辣な評価を告げたジュードやルイも同じ。ユースの評価に対して反論せず受け入れたのが良い証拠だ。


 更にジュードは敬遠していたラタニに頭を下げてまで訓練を志願。ルイに至っては序列保持者の中で一番弱いのを自覚する為、リースと選考戦のやり直しをしたらしく、敗北後に気持ちを改めるべく髪を切ったほどだ。肩まで伸びていた髪が短くなっていたのにファンは騒然とするも、短い方が似合っているとランが告げたこともあり本人はむしろ喜んでいたりする。

 二人も弱さを受け入れ、強くなる為に試行錯誤を始めたなら今は劣っていようと他の序列保持者も心配はしていない。


「みなさん、そろそろ時間ですよ」

「では行こうか」


 ここで静観していたレガートが時計を指さし、エレノアを先頭に移動を開始。


「それにしてもアヤトさんの言っていた新入生は一人なんでしょうか」

「……どういう意味だ」


 講堂に向かいつつ、生会室の話題を続けるレガートにエレノアが聞き返す。


「私なりに新入生の能力を調べたところ、とても有望な人材がいたので。まあエレノアさんもご存じでしょうが」

「面識はないがロマネクト家に並ぶ名家だからな」

「誰のこと?」


 その人材を察したエレノアに代表してランが質問すれば、話題を挙げたレガートから返答が。


「今年の新入生代表ですよ。今回の入学試験で座学こそサクラ殿下に――」

「サクラ、でしょ」

「……サクラに及ばず次点でしたが、実技試験では主席だったそうです」

「なんでお前が試験結果を知ってんだ?」


 呼び名を訂正されて苦笑いしつつレガートが言い切るも、別の疑問をディーン指摘。

 学院生会だろうと試験結果は知らされないので当然の指摘だがレガートは微笑みさらりと交わす。


「そもそも実技でエランよりも上?」

「精霊術クラスの実技は精霊術の技能と保有量が対象ですから。エランさんの保有量はロロベリアさんと同等か少し上、でしたね?」

「……私よりも上ですが、それほど差はないと思います」

「なのでその保有量で差が出たのかと。彼の保有量はミューズさんやリースさんに匹敵する程だそうです」


 続けて疑問を口にするリースにはしっかり返答。批判の目を向けるディーンは良いとして、エランも学院生の平均を上回っているが、現在学院の上位に入る二人と同等の保有量なら総合結果で差が出てしまう。


「彼も言霊を習得しているなら代表に選ばれるのは必然ですね」


 加えてエランと同じく高等技術を習得している技能。座学の成績を踏まえればその新入生が代表挨拶に選ばれても不思議ではない。そしてアヤトは面白い奴がいるとしか口にしていないので複数人の可能性もある。

 新入生の代表挨拶を務めた一学生は後の生会長、更には序列上位に入る者が多い。レガートの情報だけでも充分素質はあるだろう。

 ただ試験の成績が必ずしも強さに結びつくとは限らない。特にアヤトは実力よりも別の強みを重視する。


「ここで話していても仕方がない。今は私たちの責務をしっかりと果たそう」


 なのでエレノアはいったん保留にして、学院代表としての振る舞いを求めた。


「その責務を果たさなきゃいけない奴がいないんだけど」

「……言うな」


 のだが、ユースがぼやくように講堂に到着してもアヤトは現れず、エレノアは徐々に心配が募り始めていた。


「……いつから居たの?」


 しかし講堂に入るなり序列保持者の席であやとりに興じるアヤトが居たのでロロベリアは安堵よりも脱力。


「いつだって良いだろ」

「出席するなら何でもいい……だが、式典中にあやとりはするなよ」

「へいよ」

「あと大人しくしてろ」

「エレノアさまの仰る通りだ」

「僕は少し期待してるけどね」

「……するなよ」

「同感。とにかく変なことしないでよね」

「あいつら俺をなんだと思ってんだ」


 立て続けに三学生の序列保持者から(ミューズのみ笑顔で挨拶していた)クギを刺されたアヤトが苛立つも自業自得で。


「いいですかアーメリ特別講師。くれぐれも自重するように」

「なんなら式典中は一言も喋らないでください」

「あんた達はあたしを何だと思ってんだい」


 講師陣の席で同僚からクギを刺されるラタニも自業自得だった。


 とにかく壇上から見て左側の講師席に学院長から順に着席。

 右側に生会長のエレノアから順に精霊術クラス代表のディーン、精霊騎士クラス代表のラン、騎士クラス代表のイルビナ、仕官クラス代表のレガート、精霊学クラス代表のシエンが。続いて序列保持者席に一位のロロベリアから順に着席。

 ただエレノア、ディーン、ランは学院生会席に居るので椅子はあれど空席のまま。

 

 そして学院講師一同と学院生代表が出迎える形で新入生が入場。

 何かとやらかす講師と学院生の問題児が心配だろうと入学式は執り行われたが――



『…………』



「俺よりもまずクギを刺す奴がいたようだ」

「あたしよりもクギを刺さないとダメな子がいたねぇ」


 厳かな式典を台無しにする新入生代表の挨拶に静まり返る講堂内で、問題児二人は愉快げに勝ち誇っていた。



  

先にやらかした新入生代表は問題児度合いでラタニやアヤトほどではありません。

そんな新入生代表がどんな挨拶をしたのかはもちろん次回で。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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― 新着の感想 ―
[良い点]  なんかドヤってる二人が見える見える……。
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