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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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ユースの評価

アクセスありがとうございます!



 ユースの誘いに乗ったエランは早速模擬戦をする為に訓練場に移動。


 もちろんロロベリアやリースも興味津々と同席したが、アヤトのみ夕食の準備を始めようとしたりする。この模擬戦はエランの実力を知るためであり、エランがアヤトに成長した自分を見て欲しいとの希望も兼ねている。

 にも関わらず見てもらいたい側が不在では意味がないと、エランを不憫に思ったロロベリアが説得。


「後で遊んでやるなら別にいいだろ」

「そんなこと言わないの」


 面倒気ではあるもとりあえず訓練場まで連れ出すのに成功。なのでロロベリアとリースにカルヴァシア兄妹で観戦することに。

 その間にユースは夕雲を振りながらウォーミングアップ。またアヤトと遊んでもらうつもりだったようでエランも訓練着を用意していた。


「エランさんは精霊術をメインにするタイプ?」


 ただ武器は腰後ろの短剣のみ。短剣は精霊術が主力の精霊術士が護身用程度に装備する場合が多い。

 問題はエランの保有量。先ほど解放した際に感じた精霊力の保有量では精霊術を主力にするには心許ない。


「見てりゃ分かるぞ構ってちゃん」

「でしょうね」


 故にエランを知るアヤトに質問してみればお約束の返答。

 ロロベリアも期待していなかったので構ってちゃんを潜めてエランの実力を見定めるべく集中した。


「お待たせしました」

「そんじゃ始めますか」


 そして準備が整いユースとエランは二〇メルの距離を空けて向き合い。


「アヤト、開始の合図頼むわ。ついでに審判もな」

「面倒だ」

「そう言わずに頼むよアヤト兄ちゃん」

「……たく」


 ユースの軽口は一蹴するもエランのお願いにはため息を吐きつつも受け入れる辺り、何だかんだでアヤトはエランを可愛がっているようで。

 なら最初から素直に観戦すればいいとロロベリアは思うも捻くれているのもまたアヤト。


「さっさと始めろ」


 投げやりな合図に合わせて二人は精霊力を解放した。



 ◇



 開始と同時に先手を打ったのはエラン。


『水弾よ!』


 周囲に拳大の水球が八つ顕現、一斉にユース目がけて襲いかかる。

 高等技術の言霊を入学前のエランが習得しているのは驚異的な才能。しかしユースに驚きはない。

 言霊や変換術は高等技術だが、毎年マイレーヌ学院の新入生には一人か二人は習得している者もいる。三年前ならレイド、カイル、ティエッタが。二年前ならエレノアやミューズが入学前から言霊を習得していた。

 そして一年前はロロベリアが。ただ言霊ではなく変換術と珍しいタイプだったりするも、彼女の場合は精霊術士に開花して僅か一年で習得。更に制御力が上級生よりも上だったことから才女と注目されていた。

 また隠していたがユースは言霊と変換術を両方習得していたことからラタニに天才と評価されていたりするがさておいて。


 後の序列上位者は基本入学時でどちらかを習得している者ばかり。そしてモーエンやラタニから精霊術の基礎を学び、アヤトにプライドをへし折られても尚訓練を積んでいたエランなら言霊くらいは習得しているだろうと予想はできる。


(さて、どう来るかな)


 なのでユースは冷静にエランの動きに注視していた。

 エランは腰後ろに短剣を装備しているのみ。自分やロロベリアのように精霊術と剣技を使い分ける精霊術士タイプではない。

 ただ保有量はロロベリアよりも少し上程度。学院生の平均より上でも精霊術を主力にするなら他にも武器がいる。

 更にアヤトに襲いかかった際の動きからしてエランは剣技ではなく――


「行きますよ――っ」


 水弾を放つなりエランが飛び出す。

 武器も持たず近接戦を望むなら他にないと、水弾を回避したユースはエランの動きを読んで繰り出す拳を躱した。



 ◇



「……体術?」


 一方、観戦していたロロベリアはエランの特攻に困惑。

 精霊術士は精霊術を主力とするタイプが多いが、自分やユースのように精霊術と武器による近接戦を使い分けるタイプも居るには居る。

 現在の序列保持者で言えば精霊術を主力にする精霊術士はミューズ、ディーン、ジュードの三人。精霊術と近接戦を使い分けるタイプは自分の他にユースやエレノアがそうだ。

 しかし精霊術と体術を使い分ける精霊術士は少なくとも学院生にはいない。ロロベリアの知る限りではラタニが近いも、武器を持てば音による発動の邪魔になり、精霊術の能力が高いからこそ武器を必要としないだけ。


「お姉ちゃんの戦い方を参考にしてるとか?」

「どちらかと言えば兄様を参考に、ですね」


 さすがに音の発動までは習得していないにしても、ラタニを意識した結果なのかを確認するロロベリアにマヤから返答が。


「もともとエランさまは精霊術を主力としていましたが、兄様との遊戯以降に近接戦の訓練も取り入れたそうです」

「ただあいつは得物を扱う才が乏しいらしくてな。性格と同じで単純に蹴る殴るの方が向いていたらしい」

「なので兄様も体術の訓練をしてあげていましたね」

「お遊び程度の組み手だがな」


 アヤトも加わりエランが体術を取り入れた経緯を教えてくれた。

 確かに刀の扱いが秀逸なアヤトだが体術も異常なレベルで熟す。そのアヤトから学んでいるだけあってエランの体術も鋭く、曲芸染みた動きで翻弄している。また夕雲で応戦するユースにも怯まない勇敢な攻めも見事なもの。

 武器を持たない分だけリーチは不利でも小回りが利く。珍しいタイプなだけあってユースもやりにくいだろう。

 精霊術や体術の技能も踏まえてエランの実力は新入生レベルを超えている。しかしまだまだユースを相手にするには分が悪い。


「上手くアヤトを真似てるみたいだけど、その程度じゃ驚かないぜ!」

「……くっ」


「愚弟が調子に乗ってる」

「そんな風に言わないの」


 やはりと言うべきかエランの体術にユースが慣れてきた。

 アヤトに敗北してから体術の訓練を始めたのなら一年ほど。期間を踏まえれば充分な研鑽を積んでいる。ただ比較対象が悪いと言えばそれまでだがオリジナル(アヤト)に比べればまだまだ甘い。

 更にユースは相手の情報から後の先を読むのに長けている。体術のみで対応するのは無謀だ。

 それでもエランの実力は充分高い。このまま経験を積めば序列入りは間違いないだろうと評価するロロベリアを他所に、アヤトからわざとらしいため息が。


「つーか、ユースは相変わらず悪い癖が出ている」

「ですが今は遊戯の時間。先輩として後輩のお相手をするなら少しくらいは遊んでも良いのではないですか?」

「違いない。だがいつまで先輩気分で相手できるか見物だな」

「……なんの話?」

「エランには奥の手があるの?」


 マヤを踏まえた意味深なやり取りにロロベリアとリースは眉根を潜める。二人の言い分だとエランはまだ実力を隠しているようで。

 言霊や体術以外に何があるのかとの視線に対し、アヤトは面倒げに口を開いた。

 

「エランはあくまで精霊術が主力の精霊術士というお話だ」



 ◇



「うらぁ!」


 夕雲の一閃を上体を反らしたエランはそのまま身体を捻って蹴りを放つ。


「よっと」


 回避の勢いのまま流れるような攻撃をユースはバックステップで悠々と躱す。

 最初は体術という珍しい攻めにやりにくさを感じていたが、エランの癖や体の使い方さえ分かればもう脅威にはならない。


「そろそろウォーミングアップも終いにしたらどうだ?」

「……ユースさんは意地悪ですね」


 故にアヤトの口調を真似て煽ればエランは口をとがらせる。


「ウォーミングアップもなにも俺は全力でしたよ」

「精霊術を使わずに、だろ?」

「…………」


 軽口に対して軽口で返せばエランの表情が引き締まるも、ユースからすれば特に難しくもない指摘。

 なんせエランが放った精霊術は最初の牽制のみ。以降は近接戦で攻めてきたがモーエンやラタニが師事しているエランが精霊術を組み込まないのは違和感しかない。加えてアヤトが面白いと評価するなら精霊術と体術を切り替えるような戦法も取らないはず。

 精霊術士に開花してからモーエンに基礎を学び、更に成長途中でラタニやアヤトが関わったエランが普通の精霊術士になるはずがない。 

 こうした分析や考察はロロベリアやリースに比べて一枚も二枚も上手なユースだからこそ、アヤトから聞かなくても辿り着ける。


「別にユースさんを見くびってたわけじゃありませんから」

「アヤト兄ちゃんに教わった体術の成果を見てもらいたかっただけもんな」

「……親父から聞いていた以上ですね」


 なので心理的な部分を見抜くのも容易く、言い当てられたエランから苦笑が漏れた。


「全力出しても勝てる気しないなぁ……。でもだからこそ、どこまで通用するか試してみたいです!」

「なら遠慮なく試してくださいな」


 ワクワクと目を輝かせるエランに軽口で答えるもユースは油断せず集中した。



 

ラタニやアヤトが成長途中で関わったエランが普通の精霊術士になるはずがないって……(笑)

ユースの考察力はお見事でしたね。ロロやリースも頑張りましょう。

それはさておき、次回はアヤトが評価したエランの本領発揮、他に比べてユニークなタイプ(だと思います……)の戦いぶりをお楽しみに!




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