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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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抜け目なく

アクセスありがとうございます!



 エランがアヤトと出会ったのは、アヤトが旅を終えた直後のこと。


 九才で精霊術士に開花してからは父のモーエンから。更にモーエンがラタニ小隊に入って以降は希にでもラタニから直接精霊術の訓練を受ける機会にも恵まれた。その結果エランは同年代に比べて頭一つ抜けるほどにまで成長した。

 もちろんエランの地道な努力があってこそ。指導者に恵まれようと本人の教わる姿勢、意思が備わっていなければ意味はない。

 しかし当時のエランは一四才と精神的に未成熟。また順調に成長しすぎたのも理由の一つだろう。要は自身の実力を過信するようになった。


 このままでは息子が力に振り回されると危惧したモーエンが考えたのがアヤトと戦わせることだった。

 精霊力が強さの全てではない。それを最も痛感するには持たぬ者のアヤトから教わるのが一番効果的なのをモーエンは身を持って知っている。

 まあラタニからは未成熟だからこそ心がぽっきりと折れる可能性もあると脅しのような助言を受けたが、折れてしまえばそれまでのこと。息子の将来を考えるなら早い内に挫折を味わうべき。

 もし奮起しなければ精霊術士とは別の道を模索すればいい。

 しかし奮起すれば息子は大きく成長できる。

 そして息子を信じるならばこそ厳しい現実を見せるべき。


 故に旅を終えて王都に戻ってきたアヤトにモーエンが打診した結果――


「モーエンの息子なら少しは楽しめると思っていたが、とんだ肩すかしだったな」

「……アヤト兄ちゃん、容赦なかったもんなぁ」


 当時を振り返って嘆息するアヤトに対しエランは遠い目を。


「武器も使わずボッコボコにされて……俺の精霊術は余裕で躱されて……」

朧月こいつを抜くまでもなかったからな」 

「この人が本当に持たぬ者なのかって信じられなかったけど……精霊力を感じないから嫌でも受け入れるしかないし。精霊力が強さの全てじゃないって、親父の言ってた意味がよく分かったよ」

「良かったじゃねぇか」

「今となっては、だからアヤト兄ちゃん。あの時の俺がどんだけ泣いたか……」

「それ含めて良かっただろ。つーかモーエン心配させたお前の自惚れが原因だ」

「……そうだけど」


 正論を返されしぶしぶと頷くエランの口調がロロベリアたちに対するよりも砕けているのは昔なじみというより同じ平民だからか。


 とにかく意味不明な再会後、自ら治療術をかけて回復したエランを改めて自宅に招待。リビングでお茶を飲みつつアヤトに襲いかかった理由を聞けば二人の出会いについて語られて。


「だからアヤト兄ちゃんと遊んでもらえない間も訓練頑張ってたんだけど……やっぱアヤト兄ちゃんだ。全然ダメだった」

「ま、出会い頭に精霊術を使わなくなったならお前も成長したようだ」

「お袋に散々怒られたから。精霊祭でも我慢したよね」

「ようやく自重を覚えたか」

「アヤト兄ちゃんに褒められた」

「かもな」


(絶対に褒めてない……)

(ただの嫌味だよな……)


 ロロベリアとユースが内心突っこむように、エランは成長した自分を早くアヤトに知ってもらいたい気持ちが抑えきれず、会う度に攻撃を仕掛けているらしい。今まで貴族の自分たちを相手にしていたエランは緊張から自重していたのか。

 良識のある子に思えたが、アヤトの前では緊張せず素を出しているだけにどうも後先考えず行動に移す子のようで。


「なら学院内でも自重しろよ」

「そもそも精霊力の解放も決められた場所や有事以外では禁止だからね……?」

「大丈夫です。学院の規則を破ったらお袋に仕送り止めるって言われてますから」

「……学院の規則以前に街中でもダメだから」


 故にとても良い笑顔で頷かれても、クギを刺したロロベリアは不安しかない。


「とにかく白いのの言う通り、学院では大人しくしてろ」

「白いの……? あ、ロロベリアさんのことか。そういやアヤト兄ちゃん、親父から――」


「そういえばエランさんは水の精霊術士だったのね!」


 しかしエランが気恥ずかしい情報を口にしそうになり、不安よりも話題を逸らそうと必死になった。


「モーエンさまやお姉ちゃんから色々と教わってるなら――」

「お姉ちゃん……? もしかしてラタニ先生のことですか? でもどうしてロロベリアさんが――」

「私も水の精霊術士なんだけど奇遇ね!」

「……そうですね……?」


「くくく……っ」

「?」


 墓穴を掘った結果、支離滅裂なやり取りを始めるのでお腹を抱えるユースと首を傾げるリース。


「うるせぇ……白いのはなにでかい声だしてんだ」

「エランさまと同じなのがそんなに嬉しいのでしょうか?」


 ちなみに事情を知らないアヤトとマヤは呆れていたがそれはさておき。

 放置するのも楽しめそうだがこのままではエランの中でロロベリアがおかしな人認定されてしまう。

 それはそれで面白いがロロベリアを陰ながら見守るのも役目と、ユースは笑いを堪えつつ助け船を出すことに。


「ちなみにオレや姉貴の属性は知ってるか?」

「ユースさんが土でリースさんが火ですよね。親父から聞いてますけど……急にどうしたんですか?」

「エランくんがどれくらいオレたちのこと知ってるのか気になっただけ。ただオレたちはエランくんのこと良く知らないんだよな。モーエンさんとは余り会えないし、アヤトやマヤちゃんは知っての通り秘密主義だから」


「お前らに話す理由もないだけだ」

「わたくしは聞かれなかっただけです」


「とにかくエランくんが水の精霊術士だったのも、アヤトを慕ってるのも知らなかったわけ。ついでに言えばマイレーヌ学院の入学試験に合格してたのも。今さらだけど合格おめでとう」

「……ありがとうございます」


 アヤトやマヤの指摘も無視でユースは拍手で祝福するもエランは礼を述べるも訝しむ。

 まあ今さらの祝福なので仕方ないがユースの狙いは助け船だけでなく個人的な目的を果たす為で。

 更にエランの本質から相手が序列保持者だろうと物怖じせず乗ってくると確信した。


「話を戻すけどオレはエランくんのことを良く知らないわけで、ぶっちゃけキミの実力に興味がある。そんでもってアヤトに成長した自分を見てもらいたいって希望も兼ねて、これからオレと遊ばないか?」

「俺とユースさんが……?」

「オレも序列保持者なんで配慮は必要だけど、今は私的の場だから関係ない」


 要はアヤトが面白いと評価するエランの実力を知るのが狙いで。

 狙いを察したロロベリアから微妙な視線が向けられるのもユースは気づかぬふり。

 情報のない相手との手合わせは良い経験になる。特にエランが序列保持者を脅かす実力者なら尚更だ。故に情報のないまま手合わせをしたいロロベリアの気持ちは理解している。

 今までのユースならこの手の機会を譲っていたが、良い経験になるのはユースにとっても同じ。ロロベリア以上に努力が必要な自分が譲ってばかりでは、いつまで経っても超えられない。

 故に今回は譲ってもらうと纏めにかかる。


「それにエランくんもモーエンさんから聞いた話よりも、実際にオレの実力を知りたいと思わない? それとも序列四位程度のオレには興味ありませんか?」

「めっちゃ興味あります!」

「それは良かった……いや、マジで」


 挑発染みた誘いにエランは即答、これで面目も保てたとユースは苦笑しつつ立ち上がった。


「なら早速遊ぼうぜ」

「よろしくお願いします!」




ちゃっかり者のユースでした。

ただ些細な成長の機会だろうとロロに譲らなかったのはユースの意識変化が窺えますね。彼も本気で強くなろうと頑張っています。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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