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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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どんな関係?

アクセスありがとうございます!



 入学式前日の休養日。


「おはようございます!」


「おはよう」

「おっす」


 男子寮近くの公園で待ち合わせしていたロロベリアとユースは先に到着していたエランと挨拶を交わす。

 今日は約束通りエランを自宅に招待するのだがその前に。


「わたしがリース=フィン=ニコレスカ」

「エラン=ユナイストです。初めまして、リースさん」


 初対面時に居なかったリースも同行しているのでお互いに自己紹介からのペコリ。

 ただエランが一番会いたいであろうアヤトは不在。なんせ休養日は基本学食の仕事関係でケーリッヒの所に出向いていることがほとんど。

 ラタニは明日の入学式に備えて学院に、マヤはアヤトと一緒に外出中で留守。

 もちろんエランを招待すると伝えているので、アヤトからは昼過ぎには帰宅するとの言伝を預かっている。


「だからあいつが帰ってくる前に、約束通りラナクス案内するぜ?」

「お願いします」


 ユースが事情を伝えた上で提案すればエランも了承、まずは四人でラナクスの街並みを歩くことに。こうした案内はユースの分野、寮近くで安く食べられる店や遊び場などを教えつつ雑談を交えた交流を。


「リースさんがアヤト兄ちゃんの弟子?」


 その中でエランが最も興味を引いたのはアヤトとリースの師弟関係。序列選考戦後からの関係なので基本情報をモーエンから聞いているエランが知らないのは無理もなく。


「なにかおかしい?」

「おかしいというか……意外というか。アヤト兄ちゃんが弟子を取るとか想像も出来なかったので……」


 精霊術士が持たぬ者に弟子入りする疑問よりも別の関心を向けているのは、既にアヤトにプライドをへし折られているからか。


「アヤト兄ちゃんってそういった立場を面倒くさがるし、あまり人と関わろうとしないし……」


 またアヤトを知るだけあって的確な疑問。

 ただエランの知るのは一年前のアヤト、今も自由奔放ではあるが学院に来てから少しずつ変化している。特に序列保持者との交流は大きく、学院でもそれなりに他者と関わるようになっていた。


(……なんて姫ちゃんは思ってるだろうな)


 などとエランの疑問に微笑を浮かべるロロベリアを尻目にユースはため息一つ。

 確かに特別学院生として騎士クラスに所属し、選考戦を得てアヤトの交友関係は広くなった。しかし一番の切っ掛けと言えばやはりロロベリアとの出会いだろう。

 複雑な事情があったとはいえ、ロロベリアが強引にでも関わろうとしなければアヤトはもっと周囲から敬遠されていたはず。アヤトもそんな状況に無関心なので尚更だ。


「それにアヤト兄ちゃんで驚いたのは序列入りしてたことですね。その手の立場も嫌がる人なのにどんな気まぐれなんだろ……しかも十位とか」


「「…………」」


 しかしこの疑問にロロベリアやユースは返す言葉がない。

 序列保持者は学院を代表する強者。新入生だろうと既に情報が行き渡っていても不思議ではないし、気まぐれではなく卒業生達の置き土産とはさすがに言えない。


「勝ち星は全部ロロベリアさんたち序列上位から奪ったらしいですし、なにか事情でもあったのかな?」

「師匠のやること。気にしない」

「……それもそうですね」


 代わりにリースが対応してくれてエランも深く追求しないので二人は内心安堵した。



 ◇



 寮周辺の案内後、次に向かったのは貴族区で。

 目的はエランと同じく明日マイレーヌ学院の学院生になるサクラとの顔合わせ。クラスは違えど二人は同級生になる。去年の外遊で護衛任務に就いていたモーエンとも交流があるので事前に紹介しておこうと考えていた。


「よう来てくれたのう。サクラ=ラグズ=エヴリストじゃ」

「初めまして! 俺……わたしはエラン=ユナイストです!」


 のだが、友人が遊びに来てくれたのが嬉しいのか上機嫌なサクラに対しエランは緊張からガチガチの対応。

 まあ貴族といえど変わり者で有名なニコレスカ家の自分たちに比べて帝国の皇女となればハードルも高い。


「そう畏まる必要はない。妾らは同級生じゃ、お主の父君には世話にもなったしのう。気楽に接してくれて構わんぞ」

「……そう言われてもですね」

「なんなら妾のことは気軽にサッちゃんと呼んでくれても構わんぞ? 妾もエランと呼ばせてもらうし」

「……無理ですから」


「サクラさん、何気にサッちゃん呼び気に入ってないか?」

「エランくんが困ってるので……エニシさん、そろそろ止めてください」

「私としてはエランさまがお嬢さまとお友だちになって欲しいので、このまま見守りたいところですが……仕方ありません」


 故に微笑ましいよりも可哀想で、悪ノリを続けるサクラを宥めるようエニシにお願いしたのは言うまでもなく。

 それでもサクラの人柄やエニシの助力、またロロベリアたちが率先して気兼ねない関係をアピールしたことでエランも緊張が解れたのか。


「ではエランよ。明日からは同級生として仲良うしてくれ」

「お嬢さまとお友だちになってくださり、感謝を」

「どういたしまして……。それと、こちらこそよろしくです」


 まだ堅さは残るも別れ際には普通に会話が出来るまでには交流を深められた。


「……さすがに疲れました」

「ならこのままお家に招待しようか」

「ですね。そろそろアヤトも帰ってくる頃だし」

「マヤも一緒」


 それでも気疲れは相当なようで屋敷を出るなり肩を落とすエランを休ませる為にも本来の目的を提案。

 道中も談笑を交えてラナクスを案内しつつ工業区へ。


「そういえば三人はどうしてアヤト兄ちゃんと一緒に暮らしてるんですか?」


 雑木林の一本道を抜けて白と黒の色合いをした一軒家が見えたところでエランから素朴な疑問が。


「どうしてって言われてもな……」

「モーエンさまから聞いてるかもしれないけど、アヤトから言い出したことだから」


 元々ロロベリアたちも寮生だったが親善試合の後、王都からラナクスに戻るなり始まった同居生活。建物の費用などは秘密裏の依頼報酬なのは伏せるとしても、発端はアヤトから。成長の遅い自分たちを効率よく鍛える為にらしいが、何故ここまでして鍛えようとしているかまでは聞かされていない。


 まあユースは保護対象のロロベリアを守る手札として自分やリースを鍛えていると本人から聞いている。しかしアヤトがロロベリアに拘る理由までは半端な情報しかないので真意は謎のまま。

 ただアヤトにとってロロベリアという存在が大きいのは確かで。


「でもま、元々アヤトは姫ちゃんだけでも良いって言ってたけどな。だからオレや姉貴はオマケみたいなもんだ」

「ユースさん!」


 同居生活が始まる前に本人が口にしていた理由で冷やかすなりロロベリアの表情が赤く染まった。


「……親父からロロベリアさんはアヤト兄ちゃんの良い人だって聞いてたけど。ロロベリアさん、本当なんですか?」

「モーエンさままでなに言ってるんですか!?」


 更にモーエンの誇張された情報から返答に困る姿を楽しみながらユースが鍵を取り出している中、不意にリースが振り返った。


「師匠とマヤも帰ってきた」

「え? あ、アヤト……?」

「噂をすれば、だな」


 遅れて視線を向ければ、先ほど抜けた雑木林からアヤトとマヤが姿を現したところで。


「よう」

「いいタイミングでしたね」


 ロロベリアの位置から先に帰宅しているとマヤは察したのかエランに配慮して顕現したのだろう。


「アヤト兄ちゃん……久しぶり!」


 対するエランは兄と慕うアヤトと会えて嬉しいのか我慢できずに駆け出す。

 その反応がロロベリアとユースは微笑ましく見守っていた。


「うらぁぁぁ――っ!」


 ……のだが、エランは走りながら()()()()()()()()()。急激に速度を上げた勢いそのままアヤトに殴りかかる。


「やれやれ――」


「ごほぁ……っ」


 突然の襲撃を受けたアヤトは拳が届く寸前、身を翻して回避するなりエランの腹部に膝蹴りを叩き込んだ。


「げほっ! げは……っ!」


 強烈な一撃に蹲り咳き込むエランの姿はとても痛々しいがそれよりも。


「「……は?」」


 意味不明の展開について行けないロロベリアとユースは唖然。


「エランの動き、なかなか鋭かった」


 ただリースは動じず妙な感心をしていた。




ロロとアヤトがどんな関係なのかエランは気にしていましたが、ロロやユースからすればアヤトとエランはどんな関係なのかと首を捻る再会でした。

まあラタニやアヤトと関わりのあるエランですからね、一癖もありますよ。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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