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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十二章 新世代を導く改革編
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配慮と目的

アクセスありがとうございます!



 校門前で出会った少年、エラン=ユナイスト。


 マイレーヌ学院の入学前にアヤトに挨拶をしておきたいと帰宅するのを待っていたらしい。

 モーエンの息子がマイレーヌ学院に今年度から通うとは聞いていたが、精霊祭でも顔を合わせず終いなので初の対面。またラタニ小隊の中でも比較的交流はある方でもモーエンは家庭を持っているのでカナリアほど会う機会がなく、入学試験の結果を聞けなかったのもある。


「それでアヤト兄ちゃんは……お二人は一緒じゃないんですか?」


「え? あ……その……」

「普段からあいつと一緒に帰ったりしないからな」


 ただアヤトを兄と慕うほど関わりがあるならと、戸惑うロロベリアに変わってユースが対応。


「ていうか、モーエンさんの息子なら姫ちゃん知ってるのは分かるけど、オレのことも知ってるんだな」

「それはもう。リースさんのことも親父から聞いてますから」

「それもそうか。ちなみにアヤトからはなにか聞いている?」

「アヤト兄ちゃんとはもう一年はまともに話してないんです。精霊祭でも忙しそうで挨拶しか出来なくて……お袋もたまには顔出せって嘆いてました」

「ああ、学食の調理師になってから忙しそうにしてるもんな。というかエランくんはいつからアヤトと知りあったん?」

「一昨年の風精霊の周季くらいですけど……それが?」

「ただの興味本位」


 からのエランについて情報収集を。

 なんせアヤトについては秘匿にする部分が多く、関係者だろうと無闇な発言は控える必要がある。もちろんモーエンも家族には慎重な発言をしているだろうが念を押すにこしたことはない。

 故に前科の多いロロベリアには申し訳ないが、ユースが主導で対応しているわけで。


 アヤトは旅から帰ってからユナイスト家と付き合いがあるらしく、学食の調理師になって以降は会えてないので自分たちの情報は主にモーエンから聞いた程度。

 当時のアヤトがどの程度の頻度で依頼を受けてたかは知らないが、エランとの交流はさほど無いはず。


「だからこれも興味本位だけど、エランくんはアヤトと遊んだことはあるかな?」

「遊ぶ……? ああ……まあ、ユースさんの想像通りですね……」


 なのにアヤトを慕うなら他にないと確認してみれば『遊ぶ』のキーワードでエランは察して遠い目を。


「そもそも俺がアヤト兄ちゃんと会ったのも親父の教育というか……当時の俺は親父だけでなくラタニ先生からも色々と教わってたから、調子に乗ってたっていうか……」

「みなまで言うな……」


 その時に何があったのかは想像に難くないので、これ以上辛い思い出を語らせまいとユースは配慮。

 やはりエランもアヤトにプライドをボロボロにされた側らしいが、それでも兄と慕うなら自身の弱さを受け入れたのだろう。

 加えて父親のモーエンだけでなくラタニからも師事を受け、わざわざアヤトにプライドをへし折ってもらうほど。以前は自惚れていたらしいが、今こうして受け答えする様子でも先輩を相手に礼儀を正そうとしている。まだぎこちないがその辺りも矯正できたのか。

 とにかく精霊力の保有量からして恐らく精霊術士、服越しでも分かる鍛えられた体付きからもエランはかなりの実力者だろう。


「話は変わるけどエランくんはいま時間ある? よければ家に招待するぜ」


 そう判断するなりユースは内心ほくそ笑みつつ、普段通りの軽いノリで誘った。

 

「キミなら分かると思うけどアヤトは奔放だからいまどこで何しているか知らんけど、日が暮れる前には帰ってくる。ここで待ちぼうけしてるよりは会える確率あるぜ?」

「……お誘いは嬉しいんですけど、俺さっきラナクスに到着したばかりなんで。寮部屋の片付けとかが……」

「なるほどね。にしても、片付けよりもアヤトに挨拶するの優先したならエランくんはあいつを慕ってるのか」

「親父やラタニ先生だけでなく、アヤト兄ちゃんも俺の目標なんで当然です」

「なら明後日の休養日にでも改めてどうだ? もちアヤトにもエランくんが来るって伝えておくぜ」

「でも家を知らないんで……工業区の方にあるって親父からは聞いてますけど」

「んなの迎えに行くから気にするな。な、姫ちゃん?」

「え? あ……ですね。せっかくだしその時にラナクスを案内しましょうか」

「助かります。じゃあロロベリアさん、ユースさん、これから学院の後輩としてよろしくお願いします」

「こちらこそ」

「また明後日な」


 アヤトと会えないのは残念でも、招待を受けて嬉しそうなエランを見送るなりロロベリアはため息一つ。


「……エランさんと手合わせするつもりでしたね」

「やっぱ分かる?」


 先ほどのやり取りも一見エランに配慮していたが、ロロベリアの指摘通りユースは実力を確認するつもりで誘っている。

 同じ序列保持者同士、また近しい間柄なら訓練を共にするのは特に問題ない。しかし序列保持者が安易に他の学院生と模擬戦をすれば序列入れ替え戦の意義がなくなる。そうした配慮も序列保持者には必要。


 しかしエランはそれ以前に入学予定の学院生なので学院の訓練場に誘えない。また二人は序列保持者、学院施設内で新入生を序列専用訓練場に誘えばエランが悪目立ちをしてしまう。

 故に家に招待することで内密にエランと模擬戦をしようと考えていた。

 先ほどの情報からアヤトが面白いと表現した新入生はエランで間違いない。ならどれほどの実力か興味があるわけで。


「姫ちゃんも気になるだろ?」

「それは……否定できませんけど」


 ロロベリアも察していただけにエランの実力に興味はあるので一戦交えたい。様々なタイプ、特に情報のない相手との手合わせは良い経験になる。


「どうせアヤトは実際にやればわかるって詳しい話もしてくれないだろうしな。てなわけで、エランくんとの手合わせはオレか姉貴に任せて序列一位さまは大人しく見学するように」

「エランさんはまだ入学前なので序列は関係ありません。それにプライベートまで問題視されるなら、去年の私たちは問題だらけ。当時のアヤトは序列保持者でもないので」

「それは序列保持者が持たぬ者と実戦形式の訓練してると誰も思わないからだけど……違いない」


 ユースの冷やかしを笑顔で拒否するように、ロロベリアもエランとの手合わせは望むところ。


「ただ無理強いはなしで。あくまでモーエンさまのご子息との交流が優先です」

「言われなくても分かってるって」


 しかし配慮も大事とクギを刺すロロベリアにユースは苦笑しつつ、エランとの出会いでロロベリアのもやもやが紛れたのを内心安堵していた。




こちらはロロサイドの序章といったところですね。

エランの実力は後ほどとして、ユースが上手くフォローしています。まあロロはアヤトのことになると度々やらかしてますから必要なフォローでしょう(笑)。



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