序章 一方的な約束
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「――ワタシ以外で精霊力持ちに勝てる持たぬ者と会ったの初めて」
背後からの襲撃を防いだアヤトに対してイルビナが告げたのは驚くべき情報。
精霊力を持つ者を相手にできるのは精霊力を持つ者のみという常識をアヤトは覆したが、イルビナもまた常識を覆す実力を秘めているらしい。
故にアヤトの実力を知って興味を抱いたのだが。
「そりゃよかったな」
「信じてない?」
言葉とは裏腹にアヤトは興味なさ気な反応を見せるのでイルビナは小首を傾げて問いかける。
「さて、どうだか――」
しかし口を開くと同時にアヤトは月守を抜刀。一足飛びで斬りかかるがイルビナも剣を抜いて即座に反応。
「……びっくり」
「そのワリには完璧に防いだじゃねぇか」
月守の一閃を剣で受け止めつつ、抑揚のない声で驚きを表すがアヤトは苦笑。更に月守でイルビナに斬りかかる。
しかしイルビナも怯むどころか無表情で防ぎ続けた。
「反撃してくれて構わんぞ」
「わかった――」
アヤトの挑発に防戦一方のイルビナも反撃に出るが容易く防がれ、足を止めたまま両者は無言で斬り結ぶ。
「――なるほどな」
刃が交わる金属音が響く中、不意にアヤトが後方に飛んだ。
「言うだけはある。やるもんだ」
元居た場所に着地するなり月守で肩をぽんぽん叩きながら上から目線で称賛。
「ありがとう。でも手加減してくれなければ無理だった」
対し剣を鞘に納めつつイルビナがふるふると首を振るように、アヤトが加減しなければ最初の不意打ちで終わっていた。
ただし精霊騎士クラスの学院生でも対応できない者がいる加減なら、イルビナの実力は少なくとも精霊力を持つ者に匹敵しているわけで。
「試された?」
「やられっぱなしも趣味じゃないんでな。俺も実際に確認させてもらった」
月守を鞘に納めるアヤトはしれっと返答。要は不意打ちで試されたのなら不意打ちで試すお返しをしたらしい。
「とにかく俺もそれなりにだがお前に興味を持てたか」
「よかった」
またお返しなので謝罪はしないが、イルビナは気にせず興味を持ってもらえて安堵を。ただ相変わらず人形のように表情一つ変わらないので判断が難しいがアヤトとしてはどうでもよく。
「なら早速お話しする。わくわく」
「だから、リスとミューズを待たせていると言っただろう」
表情の代わりに言葉で感情を表現するイルビナを一蹴。
「明朝六時、ここに集合だ」
「その時にお話ししてくれるの?」
更に脈絡のない申し出にイルビナが首を傾げるのも無視でアヤトは肩を竦める。
「ま、無理にとは言わんぞ。所詮はそれなりの興味だ」
「ワタシはアナタにすごく興味ある。だから頑張って起きる」
要望に応えるか否かの返答を避けて一方的に取り決めるアヤトもアヤトなら、疑問も抱かず素直に従うイルビナもイルビナで。
「じゃあな」
「また明日」
何事もなかったように二人は別れた。
何気にアヤトサイドの序章は初でしたが、意味不明な形になりますね……。
アヤトくんとイルビナさんのやり取りが今後どのように繋がるかは後ほどとして、次回からはロロサイドのメインに戻ります。
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