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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
外伝 ふりかえる物語
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最初の関門

アクセスありがとうございます!



 土精霊の周季二月に入って最初の休養日。


 ロロベリアとリースは最初の休養日に学院の状況を知って以降は午前中を走り込みや精霊力の基礎訓練、座学などに時間を使い、午後から本格的な訓練をする為に学院の訓練場に向かうのが日課になっていた。

 精霊力は有限、特にロロベリアの保有量は学院でも平均的。急がなくても訓練場を使用できるのなら効率よく研鑽を積むべき。

 ただ入学当初は神秘的な髪色に劣らずな見目と一学生とは思えない精霊術の実力から注目されていたロロベリアと交遊を得ようとしていた学院生は多く居たが、そのストイックな生活から時間を貰えず次第に距離を置かれていたりする。

 それでもロロベリアは気にせず、同じく貴族同士の付き合いに関心の無いリースと共に昼食後、学院の訓練場に向かった。


「悪い。遅れた」


「「…………」」


 のだが、準備運動を初めて間もなく自主訓練室に入室するユースに二人はキョトン。

 なんせ入学してからのユースは自主訓練にほとんど参加せず、特にここ十日ほどは一度も参加していない。

 まあ自主訓練なので強制的ではなく、自分たちに比べて交友関係が広いのでロロベリアはユースの自由と気にしていないがリースは別。


「愚弟、今さらなにしに来た」


 悪気のない弟の態度に詰め寄る様子は明らかに苛立っていた。王都で暮らしていた頃はそれなりに真面目に訓練をしていたのに入学してから怠けてばかりなのが姉として許せないのだろう。

 またロロベリアは次の休養日開けに行われる序列入れ替え戦の参戦を表明している。序列戦に関わる行事は講師陣主導なのでまだ広まっていないが、リースだけでなくユースもその意思は知るところ。

 にも関わらず協力もせず遊び呆けているのが余計にリースを怒らせていたのだが、ユースはヘラヘラしつつ宥めるように両手で制す。


「だから悪かったって。お詫びに良い情報を仕入れてきたから許してくれよ」

「良い情報?」

「とりあえず座るか」


 そのまま室内の壁にもたれ掛かるよう座るユースに訝しみながらもロロベリアは柔軟を止めて近づき、しぶしぶながらリースも腰を下ろした。


「まず入れ替え戦についてだけど、姫ちゃんはまだ誰に挑戦予定か決めてなかったよな」

「そうですけど……」


 その切り出しにロロベリアは首肯。

 ティエッタやフロイスとの邂逅から序列入りに挑戦すると決めて、ロロベリアが自分なりに情報を集めてはいる。

 自分の実力がまだ序列保持者に通用しないと自覚しているなら、序列十位に挑むのが順当。ただ詳しい実力までは集まらず、今のところ序列六位か序列十位にまで絞った。


 まずは序列六位の二学生、ラン=レヒドは精霊騎士クラス。

 相手が精霊士なら精霊術が扱える分間合い的に有利。また近接戦に関してもリースとの訓練で慣れている。フロイスも精霊士だが、さすがに四位を相手にするのは無謀すぎる。

 そして序列十位の二学生、ジュード=フィン=マルケス。

 序列保持者の精霊術士の中で唯一言霊を習得していない。言霊が扱えるか否かは精霊術の発動時に大きなアドバンテージになり、変換術こそ習得しているがロロベリアは言霊を習得していない。

 同じ条件ならチャンスはあるが、問題は保有量でジュードとは倍近い差があること。また火の精霊術士となれば攻防どちらも水の精霊術士には不利。


 実力不足を自覚していても挑戦をするなら勝ち取りたい。

 故に自分の実力と相性を考えて二人にまでは絞り込んだが決め手がなく、ギリギリまで情報収集をしてから最終決断をするつもりだ。

 

「そんな姫ちゃんにオレは序列十位をお勧めするぜ」

「……どうして?」


 ……だったが自信満々に序列十位を勧められて首を傾げるロロベリアに対し、ユースは待ってましたと身を乗り出す。


「オレなりに掴んだ情報だと精霊士のラン先輩は七位のディーン先輩と幼なじみらしくて、昔から一緒に訓練してたらしい」


 更にディーンは風の精霊術士。水の精霊術士よりも発動速度があり、言霊も習得しているディーンと戦い馴れているならロロベリアの精霊術が通用しない可能性が高い。

 またランはショートソードを三本扱うトリッキーな戦闘スタイルが強み。瞬発力などもリースより上なら近接戦でも不利な相手。


「その点、序列十位のジュード先輩は序列保持者の中でも言霊を習得していない唯一の精霊術士だ。保有量の多さや火の精霊術士ってのは厄介だけど、オレの見立てでも発動速度なら姫ちゃんの方が勝ってる。それと性格的にもか。なんせジュード先輩は短絡的って言うか、頭に血が上りやすいみたいだからな」


 序列保持者全員の情報を元に、ロロベリアと最も相性の良い相手が序列十位になるのでユース的にはお勧めらしいが。


「……私の為に情報を集めてくれたんですか」


 実力や戦闘スタイルのみならず性格まで、序列保持者の細かな情報にたロロベリアは驚きを隠せない。

 序列入りを決めてから僅か十日でこれだけ集めるのは大変だっただろう。もしかすると訓練に来なかったのも情報収集に奔走してくれたのかと思うわけで。


「並みの実力しか無いオレには他に協力できることもないからな。まあこの程度の情報収集ならダチと連んでれば勝手に入ってくるから簡単だったけど」


 さほど苦労していないとユースは笑って流すも、人付き合いのないロロベリアの代わりに補ってくれたのなら感謝しかない。


「てなわけで、オレの情報が役に立ったなら、訓練休んでるのを親父殿には内密にして下さい」

「それとこれとは別。お父さまにはユースが訓練サボってるって手紙で伝える」

「それはマジで勘弁してくださいお姉さま!」

「まあまあ……ユースさんのお陰で助かったんだから今回は見逃してあげよ」


 故に未だ怒りが納まらないリースを宥めて恩返しを。

 ロロベリアの擁護に加えてユースがもたらした情報が役立ったこともあり、リースも仕方なく折れた。


「ならロロが序列入り出来るように最後まで協力するなら見逃す」

「誠心誠意協力します!」

「ただし今回だけ。次はない」

「ありがとうございます!」


 お許しをもらって全力の土下座をするユースに、そこまで父の折檻が怖いなら普段からサボらず訓練に励めば良いのにとは敢えて口にしない。

 なんせユースの情報は入れ替え戦で挑戦する相手を決められただけでなく、残りの日数は対策を立てた訓練に費やせる。


 更に選抜戦が行われる前日、ユースは同じ序列十位の挑戦権を巡るライバルの情報を手に入れてくれた。講師陣のみしか知らない情報をどうやって手に入れたのかとユースの交友関係に疑問を抱いたが――


『噂程度なら耳に入ってくるのもあるけど、入れ替え戦前になると張り切って訓練する奴が出てくるのは姫ちゃんも知ってるだろ? なら訓練場を利用する頻度やそいつがどの序列保持者のファンか、交友関係なんかも踏まえればある程度は予想はできる』


 他にも今年の序列保持者は実力が高いからこそ及び腰になり、本気で序列入りを望む少数派も今回は様子見の姿勢。故に入れ替え戦を通じて少しでもお近付きになりたいと挑む者がほとんどらしい。

 この情報にロロベリアは何とも言えない気持ちになったが、ライバルが少なければそれだけチャンスもあると切り替えた。

 とにかくニコレスカ姉弟のお陰で充分な準備で選抜戦を迎えられたことで。


『勝者、ロロベリア=リーズベルト! よって序列十位、ジュード=フィン=マルケスへの挑戦権はロロベリア=リーズベルトに決定とする!』


「よし……っ」


 上級生二人のライバルに無事勝利したロロベリアは序列十位に挑戦する権利を手に入れた。




最初の関門、序列入れ替え戦の挑戦権をニコレスカ姉弟の協力でロロは手に入れました。

ピエロを演じながらも持ち前の分析力で協力したユースが裏の支えなら、常にロロと訓練をすることでモチベーションを維持したリースは表の支えとして光っていましたね。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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