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今期の学院開始初日のこと。
「じゃあな」
噴水広場でロロベリアとユースを待ち伏せしていたアヤトは言伝を残して去って行く。
言伝だけでなく余計な一言を添えたことでロロベリアのもやもやを発症させ、ユースに心労を与えたのも気づくことなくミューズの待つ訓練場に向かっていた。
もちろんリースの訓練にミューズを同伴させたのには理由がある……それを説明しておけばロロベリアも多少は納得して避けられたもやもやで、結果ユースの心労も回避できたのだがアヤトにそんな配慮を求めるのは無理な話だった。
それはさておき、一人訓練場に向かうアヤトを自主訓練に向かう者や下校する者は好奇の目を向けていた。
以前から様々な噂から敷地内を歩けば注目されていたが、騎士クラス初の序列入りを果たしたことで周囲の視線がより強くなっている。
そのほとんどが悪感情が込められているのも仕方のないこと。精霊術士や精霊士を差し置いて序列入り、更に持たぬ者とは思えない実力やアヤトの非友好的な態度から学院内では嫌われ者。
学食の常連や騎士クラスの一部学院生から慕われてはいるも、やはり気軽に声をかけられることもなく。
アヤトもどれだけ周囲から注目されても我関せず、視線や陰口も無視で歩を進めていた。
「……やれやれ」
しかし校舎練を抜けたところで面倒げにため息一つ。
訓練区間に入るなり方向転換、訓練場の方に向かわず校舎に沿って歩き始める。
そのまま人気のない闘技場の裏手に辿り着いたところで立ち止まり。
「さっきからうざいんだよ。用があるならさっさと言え」
吐き捨てるような呼びかけに返答はなく、アヤトも周囲を確認することもせず。
おもむろに抜いた月守を頭上に掲げて――
ギン――ッ
同時に金属音が響き人影が頭上を通過。
そのまま軽やかな身の熟しで人影は空中を一回転、アヤトから三メルほど離れた場所に着地。
「……びっくり」
細い両刃の剣を手に立ち上がった人影は言葉とは裏腹に抑揚のない呟きと共に立ち上がる。
対するアヤトは背後からの襲撃をされたにも関わらず月守の刀身を肩に乗せて苦笑を漏らす。
「びっくりなのは白昼堂々と襲撃された俺なんだがな」
そう批判しながらアヤトもまた言葉とは裏腹に動揺の素振りすらみせず批判するも、振り返った襲撃者から反論が。
「気配消した。背後から襲った。なのに防がれた。背中に目がある?」
「ねぇよ。気配の消し方が半端なら気づくのも容易いだろ」
「なるほど」
アヤトの返しに悪げもなく感心するも表情からは感情が感じられなく。
「で、俺と遊ぶのが要件か。つーか学院内での私闘は禁止だろ。学院生会さまが規則破ってんじゃねぇよ」
「私闘するつもりはない。でも急に襲ってごめんなさい」
と、更なる批判を受けて剣を鞘に納めた襲撃者、騎士クラス代表のイルビナ=フィン=シーファンスはペコリと謝罪。
謝罪を受けたアヤトも月守を鞘に戻し、改めてイルビナと向き合った。
「要件はなんだ。訓練場にリスとミューズを待たせてるんでな、手短にしろ」
「自分でも試してみたかった」
「たく……グリードに何か吹き込まれたか」
「……びっくり」
相変わらず驚いた素振りも見せないイルビナだが、卒業前にグリードから彼女について聞いていたアヤトからすれば手荒な試しを察するのは容易く。
「びっくりはいいんだよ。俺は用件を聞いているんだが」
「ワタシはアナタに興味がある。でも選考戦が終わるまで我慢した。終わったからお話したい」
「してきたのはお話ではなく手荒なお試しだったがな。たまたま防げたから良いものを、下手すりゃ大怪我してだ」
「不快にさせてごめんなさい」
アヤトの嫌味に再びイルビナはペコリ。
「でもアナタならワタシの襲撃も防げる。ワタシよりも全然強い」
「そりゃどうも」
「だから興味ある」
そして人形のように生気を感じさせない瞳をアヤトに向け、抑揚のない声音で告げた。
「ワタシ以外で精霊力持ちに勝てる持たぬ者と会ったの初めて」
おまけラストはアヤトくんとイルビナさん。
もう一つの終章でロロがモーエンの息子と出会ったように、こちらはアヤトくんサイドのもう一つの終章……という名の次章予告みたいなものです。
イルビナが告げた最後の言葉、モーエンの息子についてはもちろん次章で。
……ですが、次回更新からは外伝を予定しています。
この外伝は元よりレイドたちの卒業、ロロたちの進級に合わせて入れる予定だったので。
もちろん今後のストーリーをより楽しめる(ハズ!)の内容になっているので進級したロロたちの学院生活を前に、外伝『ふりかえる物語』をお楽しみに!
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