おしつけ
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選考戦後の交流会終了後。
「精霊騎士クラスか……姉貴も思いきったこと考えたもんだ」
生会室を後にしたユースは先ほど聞いたばかりの情報に苦笑い。
精霊術士が精霊騎士クラスに所属。リースの今後を考えるなら精霊術優先の精霊術クラスに居るよりは必要な決断だが反感も大きいだろう。現にまだ柔軟な考えが出来ないジュードやルイは微妙な反応を見せていた。
まあその二人に関しては適任者が居るので任せるとして、今まではロロベリアと離れたがらなかったリースの決断をユースは肯定的に捉えている。
今回の一件でロロ成分とやらを摂取しなくても良くなったのかは良いとして、リースは親友というよりロロベリアに依存している傾向があっただけに、例え別クラスになるだけでも離れるという選択が出来たのは良い傾向で。
「お父さまとお母さまに感謝しないと」
「お二人だからこそ了承してくださったものね。ちょっと寂しいけど応援してるわ、リース」
「ありがとう。わたしもクラスが変わってもロロを応援する気持ちは変わらない」
「ありがとう」
些細なことだがどちらかが一方的にではなく、持ちつ持たれつの対等な関係になれば二人の絆は更に強くなる。
故にユースは寂しさよりも大切な二人が良い方向に成長しているのが微笑ましく。
「ならオレも姫ちゃんを応援するかね。てなわけで、まだ居ると思うしあっちの方は任せたぜ」
「一緒でも良いんだけど……でも、任されました」
校舎を出たところでちょっとした気遣いに困り顔ながらもロロベリアは足どり軽く別行動を。
「……おい姉貴、どこ行くんだよ」
したのだが、当然のように後を追うリースの腕を寸でのところで掴んだ。
「? ロロが一緒でもいいって言った」
「少しは気遣ってやろうぜ……」
「気遣う? なにに?」
「…………ダメだこの姉貴」
どうやらリースにはまだまだ成長する部分があるとユースは肩を落とした。
◇
それはさておきニコレスカ姉弟と別れたロロベリアが向かったのは学食で、言うまでもなく目的は交流会を途中退場したアヤトに会うため。
ユースに告げたよう一緒に行っても良いのが、長期休暇に入ってからはまともに会話も出来ていないので二人きりでとの気遣いには素直に感謝している。もちろん久しぶりに二人で話したいのもあるが、それとは別にロロベリアも伝えたいことがあるのだ。
まあ二人きりといってもマヤが常に一緒なので完全ではないがそこは今さら。また情けないところを見せたばかりでも結果で示すしかないのなら引きずっていても仕方がない。
切り替えの良さもロロベリアの美点と、普段通りのノリで学食のドアを開けた。
「やっぱりまだ居たんだ」
「なんの用だ構ってちゃん」
明日に備えた点検を終えて清掃をしているのか、テーブルを拭きつつアヤトも普段通りのノリでお出迎え。
「手伝いに来たのよ。まだ掃除が終わってないところがあるなら教えて」
「必要ねぇよ」
「あるわよ? サクラが早くあなたに会いたいらしいから」
「あん?」
訝しむアヤトに腕まくりをしつつロロベリアは説明を。
選考戦中はサクラの屋敷でお世話になっていたが、それも今日までなら荷物を取りに立ち寄るわけで、その時にアヤトを連れてくるようロロベリアは念押しされている。
ちなみにニコレスカ姉弟やマヤも呼ばれているのだが、二人は選考戦が終了したばかりなので疲れているだろうと後日改めて。マヤもケーリッヒの所に居るのならわざわざ呼び出すよりは二人と同じ日でも構わないと配慮しているが。
「アヤトは疲れてないだろうから配慮する必要もないって」
「言いやがる」
皮肉めいた言伝にアヤトは肩を竦める。まあアヤトにはそれだけ遠慮もいらないとサクラなりの意図もあるのだが、一番は普段の行いだろう。
また顔出しついでにロロベリアの荷物でも持ってやれとも言われているが、そこまで頼むつもりもないわけで。
「私もお世話になったから、出来るだけサクラの要望に応えたいの。分かったなら素直に手伝われなさい」
今夜は久しぶりにニコレスカ姉弟やマヤ、ラタニも一緒にアヤトの作った夕食を囲むのだ。なら早く向かえばそれだけサクラとの時間も作れるとロロベリアは主張する。
「手伝われろと言われてもな」
「なに? まだ素直に――」
「もう掃除は終わったんだが」
「――手伝わせ……は?」
が、テーブルを拭き終えるなり背を向けるアヤトにロロベリアはキョトン。
「……ちなみに点検は」
「とっくに終わっている」
「…………だよね」
「つまり、素直以前の問題だ」
「…………」
雑巾を洗いつつ嘲笑するアヤトに対しロロベリアは無言で捲った袖を元に戻す。
アヤトが途中退場して一時間も経っていないのにも関わらずこの手際の良さ、感心するよりも張り切っていた自分が恥ずかしかった。
「ま、手伝わなくとも後輩構ってちゃんの恩義には付き合ってやるから安心しろ構ってちゃん」
「ありがとうございます……」
素直云々に対する皮肉に感じるも、付き合ってくれるならとロロベリアこそ素直に感謝を述べる。
そして改めて感謝を述べた。
「ありがとう」
「別に感謝される筋合いはないんだが」
「リースのことよ」
面倒げに返すアヤトに首を振り、ロロベリアはここに来た要件を伝えた。
リースの迷いをアヤトは宿題という形で晴らしてくれた。
ロロベリアが伝える必要はないかもしれないが、気づけなかった自分に変わり親友を導いてくれたアヤトに感謝を伝えておきたかった。
「やはり、感謝される筋合いはないな」
「あなたは別にリースの為にしたわけじゃない。自分がやりたくて勝手にやったからでしょ?」
「白いのが察しが良いと雨が降らんか心配なんだが」
「降らなかったじゃない」
故にアヤトが素直に受け取らなくても笑みを絶やさず。
「とにかくそれと同じよ。私が勝手に感謝したいからしてるだけ。だから受け取るのも受け取らないのも勝手にどうぞ」
「へいよ」
お返しと言わんばかりの押しつけに適当な相槌で交わしつつアヤトもコートを羽織って準備完了。
「さて、雨が降らん内にさっさと行くか」
「なら言わせてもらうけど、もし降ったらアヤトが珍しく素直に付き合ってくれるからじゃない?」
久しぶりなやり取りを楽しみつつ、ノンビリとサクラの屋敷に向かった。
――はずが、学院を出て間もなく。
「……たく、これだから白いのは」
「だから、アヤトのせいかもしれないでしょ……」
時期外れな突然の豪雨はどちらの非かを押しつけながら二人はずぶ濡れで走ることになった。
ひとつめはオマケお約束、主人公二人の時間でした。
ロロとしてはアヤトに対する感謝もあるかと……ですが、果たして豪雨の原因はどちらのせいか(笑)。
そして次回更新は十一章でとても頑張ってくれたあの子がメインです。
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