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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十一章 波乱の序列選考戦編
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真意と要求 後編

アクセスありがとうございます!



 面識のないジュード、ルイにある種の洗礼を浴びせたアヤトがまず声をかけたのはランだった。


「言われなくても何が足りんか気づいているだろう」

「まあね」


 端的な確認にランは頷く。

 今回の選考戦で敗北したのはアヤトを除けば全て精霊術士。近接戦で分があろうと近づけなければ意味を成さないと改めて痛感したのだ。


「あたしがこの子たちに精霊力を纏わせられればって何度も悔いたもの」


 腰に帯剣している三本の相棒に触れるよう、精霊力に絶えられるツクヨの武器を活かし切るにはその技能は必衰。精霊術を回避でなく斬れるようになれば間合いの負担を軽減できるだけでなく、精霊力を放てられれば攻撃パターンもぐっと増える。

 もちろん訓練は続けているが今まで精霊力を扱う感覚が必要ない精霊士なだけに中々上手くいっていない。

 だが暴解放という力業で成功させたとは言え、制御が不得手なリースも出来るのなら望みはある。


「ならさっさと習得するんだな。ついでに部分集約の習得も忘れるなよ」

「……ついでの要求にしては大きすぎない?」

「そうでもねぇよ。そもそもカナリアらが未だ習得できんのは熟練の精霊術士だからに過ぎん。制御力があろうとあいつらは精霊術の燃料としての概念が抜けきれんからな」

「なるほど……精霊力の扱いには精神的な部分が結構作用するってアーメリさまも仰ってたもんね」


 なにより部分集約は近接戦にこそ活きるとランも理解。


「後は相手の虚を衝く剣術も多用しすぎると意味もなくす。つーか引く意識が強すぎるからお前の剣に怖さがねぇんだよ」

「う……」


 したのだが、追加の要求にランはぐうの音も出ない。

 武器を三本使用したトリッキーな戦法がランのスタイル。しかしアヤトの指摘通り慣れられると逆に隙を作りやすくなる上に、一振り一振りの重さも散漫になるわけで。フロイス戦でも剣技の差を痛感させられたばかりだ。

 精霊術対策だけでなく近接戦にも容赦のない評価にうな垂れるランからアヤトの視線はリースへと向けられた。


「ついでに聞くがリスは習得してんのか」

「……試してみたけど無理だった」

「つまりマグレか。たく、暴解放でのみ可能にしたところで意味がねぇぞ。威力はそこそこでも一撃で終いなんざ使い道が限定される」


 そもそも暴解放をしたことすら覚えてないだけに成功させてもリースは精霊力を外部に流す感覚が掴めていない。加えて威力があろうと一撃で戦闘不能になってしまえば暴解放を切り札にしていた頃と変わらない。

 今後近接戦に絞るならランと同じくこの技能は必要になる。更に習得すればリースの新たな切り札になるのは間違いない。


「だがま、その辺りは後は追々だ。リスは何よりへなちょこな剣技をマシにする必要がある。まずは最低限ランとタメはれる程度にするか」

「がんばる」


 だが今は何よりアヤトから剣術を教わることが優先。もちろん習得も視野には入れるが、七人の中で最も弱いと自覚しているからこそリースは一歩ずつでも確実に強くなると気合いを入れた。


「それよりもディーン、お前のバカはいつになったらマシになるんだ」

「バカって……俺にだけ適当な要求してくんなよ」


 からの、おざなりな扱いを受けたディーンが抗議するもアヤトの目は冷ややかで。


「変換術覚えてはしゃぎすぎなんだよ。つーか雷は速さも威力もあるが慣れん内は応用が効かんだろ。にも関わらず考えなしにポンポン使いやがって」

「別にはしゃいでたわけじゃないぞ……」


 選考戦では変換術を多様していた自覚があるだけにディーンもささやかな反論が精一杯だった。使い慣れているだけあって応用の効く風の精霊術を巧く取り入れていればまだやれたはず。

 せっかく変換術を習得しても偏れば戦法は狭まるだけ。


「むろん変換術もさっさとマシにする必要はあるが、半端にしか使えないなら両方を巧く取り入れろ」

「へーい」


 なにより本人は無自覚でもディーンの強みは思わぬ発想からの意外な一手、変換術に拘り続ければ活きなくなる。

 要は双方の特性をもっと活かすべきと改めるディーンを他所にアヤトはユースに向けてため息一つ。


「で、ここにもバカがいるわけだが」

「オレのなにが不満ですか」

「四日目、六日目の初戦だバカが。一番弱っちいから呑まれるんだよ」


 精神面の弱さが最も露呈したのはその二試合と自覚しているので、吐き捨てるような指摘にユースも反論の余地無し。

 最終戦でアヤトが見せたロロベリアの攻略法、同じ手段は不可能でもタメが必要な新解放の分配調整を前に待ちの姿勢になりすぎた。

 またなり振り構わないエレノアの精霊術にも後手に回りすぎて半端なまま敗北と、相手の情報を読み取るのに固執して攻めの意識が弱いと反省している。

 元よりラタニ伝手で問題点を指摘されているだけに端的な要求でも充分伝わるわけで。


「後は勝手にやっていろ」

「やらせてもらうわ」


 それだけに明確な助言も不要と早々に切り上げられたが不満はなく。


「意識的な部分は改善されつつあるが、だからと言って得意分野を間違えるんじゃねぇよ」

「……得意分野ですか」


 アヤトの助言に神妙な顔つきで耳を傾けるミューズは以前よりも好戦的にはなっている。

 しかしミューズの得意分野は近接戦や精霊術を問わない防御力。攻める意識を持ちすぎたことで自慢の防御力を活かし切れなくなった。


「戦況に応じて攻めと守りをもっと巧く切り替えろ。今まで相手に合わせすぎたからそういった嗅覚が鈍いんだよ。だからエレノアにもやられたんだろ」

「……申し訳ございません」

「たく……で、エレノアは言うまでもないな」

「私は既に痛い目を見たからな」


 謝罪するミューズを他所に確認されたエレノアは弱々しい頷きを。

 突発的な出来事に弱く、簡単に意識が散漫になる。この問題点を衝かれて初戦で瞬殺されたのだ。


「ついでに言わせてもらうなら剣技、精霊術をもっと磨け。なんせそこそこの才能だ。新解放にばかり拘っていたらあっという間に取り残されるぞ」

「精神面を改善すればそちらも自ずとか……確かに、今必要なのはなにかを見落としていたようだ」


 最初にされた手痛い助言も踏まえて初心に返るべきとエレノアも思い知らされ、最後はロロベリアを一瞥。


「期待外れもいいところだ」

「反省してます」


 つい先ほど自惚れをへし折られただけにロロベリアは辛辣な評価も甘んじて受け入れる。選抜戦のようにもっとアヤトの出方を予想するべきだったとレイドから序列一位を受け継いでも悔いの残る選考戦だった。

 それでも前を向き続けるのがロロベリアのするべきことで。


「口先だけなら何とでも言える。次は秘策とやらも踏まえてへし折ってやるから覚悟しておけ」

「はい」


 故に改めて自惚れをへし折ってもらうことで再スタートを誓う中、一通りの要望を告げたアヤトはもう用はないと背を向けた。


「とにかくお前らもその辺りを改善すれば少しはマシになる。後はひよっこ同士、交流でも何でも深めるんだな」

「……まだ交流会は終わってないぞ」

「今日中に学食の点検を済ませたいんだよ」


 エレノアが咎めるもアヤトはどこ吹く風。どうやら明日から開ける学食の準備をしておきたいらしい。

 どうやらアヤトにとっての関心は自分たちよりも学食に向けられているようで。

 まあ特別学院生なので仕事を優先されても文句は言えず、要件も踏まえて僅かな時間でも出席してくれただけ喜ぶべきか。


「最後に言っておくが俺が叩き落とす前に、序列さまから落とされんようせいぜい気をつけろよ」


 などと納得して見送る中、退室前に振り返ったアヤトから最後の忠告が。


「……? それは入れ替え戦のことか?」

「新しいひよっこに面白い奴がいるからな。相性や運もあるが、少なくとも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


『…………』


 その情報に生会室が静まり返るもアヤトは無視。


「ま、新しいひよっこに落とされても残りは俺が責任を持って叩き落としてやるから安心しろ」


 ほくそ笑み、今度こそ退室するが全く安心できない。

 入学試験時にサクラの護衛をしていた際に確認していたのか新しいひよっこ、つまり入学してくる一学生の中には序列の座を脅かす存在が居るらしい。

 アヤトの実力を計る能力は確かだが、面白いという表現からどんな実力か、一人なのか複数なのか、誰と相性が悪いのかも予想できない。


「そんな奴いたのかぁ……」

「……エレノアは気になる子いた?」

「全員の試験を確認したわけではないが……試験の実力がそのまま強さに繋がるわけではないからな」


 故に入学試験に立ち合った三人が思い返すも心当たりはなく。

 なんにせよ最後の忠告を踏まえてアヤトの要求なら。


「……どうやら、早急に改善する必要がありそうだ」


 ひよっこには選考戦が終わっても気を抜く暇はないらしい。




最後にあやふやな情報で背中を蹴るアヤトくん流で選考戦も本当に終了。


次回で十一章も終章となりますが、まだあやふやなままのアレを含めて最後までお楽しみに!



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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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― 新着の感想 ―
[良い点]  今の序列の面子は大概優秀と言うか、アヤトに指導されてるんだから在野の人材に追い越される可能性があるとは思わなかった。
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