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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十一章 波乱の序列選考戦編
453/781

三度目の成果

アクセスありがとうございます!



 選考戦最終日。


 学院序列を争う十日間の激戦も残すは一試合のみ。

 そしてこの最終試合で全ての序列も決定するが既に九位までは決定している。


 まず昨日の初戦は棄権したものの残り三試合を全て勝利、最終戦績十勝九敗でリース=フィン=ニコレスカが序列九位に決定。


 昨日、今日の次戦を落としたが最終戦績十一勝八敗でルイ=フィン=リオンダートが序列八位に決定。


 昨年度最初の入れ替え戦で敗北して以降序列から遠ざかっていたが最終戦績十二勝七敗でジュード=フィン=マルケスが序列七位に決定。


 二学生時と同じとはいえ精霊騎士クラス代表として精霊術クラスを除けば最高位の最終戦績十三勝六敗でラン=レヒドが序列六位に決定。


 こちらは二学生時よりも二つ挙げて精霊術クラス代表として申し分ない最終戦績十四勝五敗でディーン=ソフラネカが序列五位に決定。


 入学時は序列入りすら予想されていなかったが最終戦績十五勝四敗でユース=フィン=ニコレスカが序列四位に決定。


 以前よりも好戦的な姿勢から留学生ながらも最終戦績十六勝三敗でミューズ=リム=イディルツが序列三位に決定。


 初戦の敗北にもめげず生会長としての意地で最終戦績十七勝二敗でエレノア=フィン=ファンデルが序列二位に決定。


 前評判通りの面々が順当に序列入りを果たしたものの、今回の選考戦は大きな波乱が起きている。

 というのも最終戦を残して十八勝無敗、歴代でも二人しかいない選考戦に参加した一学生が序列一位という快挙を成し遂げたロロベリアと最終戦で対戦するアヤトは昨日の初戦を棄権したが次戦でルイに勝利。更に今日の初戦でディーンに勝利して現在八勝十敗と勝ち星全て序列入りが決定している相手から奪っている。

 もしロロベリアにも勝利すれば全ての勝ち星を上位の序列保持者から奪う結果となり、歴代初の騎士クラスからの選抜だけでなく初の序列入りという誰も予想できなかった快挙を達成。

 つまり残るは序列十位、最終試合の結果で全ての序列が決定する。


 故に最終戦績八勝十一敗で終えた精霊術クラス二学生のチェルシー=ガーランが祈るように観覧席で結果を待っていた。

 アヤトが敗北しても戦績は同じ。しかしアヤトがチェルシー戦を棄権していることで序列入りできるならロロベリアの勝利を精霊に願うのも当然。

 他の面々はロロベリアが無敗のまま序列入りするか。

 それともアヤトが前代未聞の序列入りを果たすかに注目する中――


「……これを狙ってたのね」


 フィールド中央で向き合うなりアヤトの実力を知る者を代表してロロベリアは確認していたりする。

 昨日のルイ戦を棄権しなかった時点で確信したが、アヤトは序列入りをするであろう九人に勝利しての序列入りを狙っていた。

 本来九勝では序列入りはギリギリ。今回は混戦していたから運がよかった……ではないだろう。実力を見定める能力が秀でているアヤトなら出場する十九人の実力、相性などを分析して混戦になると予想していたはず。

 それでも勝負事はやってみなければ分からないので運もあったが、ここまでアヤトの狙い通りになっている。

 なぜこのような形で序列十位を狙っているのかまでは読めないし、まともな返答をしてくれるわけもなく。


「約束通り序列一位さまの自惚れをへし折ってやるか」

「簡単にいかせないって忠告したでしょ」


 ロロベリアも切り替え、握手もないまま二人は同時に背を向けた。

 実力差は歴然、勝てるはずがないと分かっていてもロロベリアは勝利を諦めたことは一度もない。

 その執念が選抜戦の結果を引き寄せた。

 例えギリギリだろうと一矢報いることが出来たなら今回も最後まで挑戦し続けるのみ。


「わっかりやすい子さね」


 昨日から審判を務めているラタニは背中からでも伝わるロロベリアの気合いを微笑ましく見守りアヤトを一瞥。

 距離を空けたアヤトは両手をコートのポケットに入れたまま構えもせず。


「さて、どう出るかにゃー」


 遅れて距離を開けたロロベリアが瑠璃姫を構えるのを確認して精霊力を解放した。



 ◇



 月守も抜かず棒立ちのアヤトに構わずロロベリアは集中力を高めていく。

 アヤトがなにを狙っていようと関係なく、自分は全力を出し切るだけと。


「そいじゃ選考戦最終試合開始さね」


(先手必勝――っ)


 ラタニお決まりのゆるっとした開始宣言に合わせて精霊力を解放。

 ただし対アヤト戦に用意していた秘策を出し惜しみせず、新解放によって爆発させた精霊力の影響を受けないよう全身に分配していく。

 新解放の分配調整は部分集約が通用しないであろうユースやエレノア、ミューズ戦に用意していた秘策。


 しかしロロベリアはこの状態でも精霊術を扱えるよう訓練を続けていた。

 元より部分集約と精霊力を武器に纏わせる技能を併用しているロロベリアだからこその思い付きで、不意打ちならエニシですら追い込めた。

 極限まで引き上げた身体能力と精霊術の組み合わせがアヤト戦に用意した秘策だった。


「――通常の解放が一拍なら新解放の部分集約は三拍」


「…………っ」


 が、秘策を切るより先に()()()()()()()()()()ロロベリアは息を呑む。


「分配調整に至っては五拍。制御力が自慢な序列一位さまでも通常の解放より意識を集中するようだ」


 続いて振り返るのを拒むよう月守の刀身が肩口から伸びた。


「とまあ五拍分もボケッとしてりゃ背後を取るには充分だ」

「……それはあなただけでしょう」

「かもしれんな」


 反論虚しくまさに首の皮一枚分、月守の刃を突きつけられたロロベリアは精霊力を解除。

 アヤトの指摘通り通常の解放に比べて新解放の分配調整は簡単ではないからこそ、ロロベリアも周囲に意識を向ける余裕がない。

 ただその僅かなスキをアヤトが狙うとは予想外で。


「せっかく秘策を用意してたのに……」

「実戦でも同じ戯れ言がほざけるなら、やはり自惚れていたのではないですか? 序列一位さま」

「……否定できません」


 どんな秘策を用意しても相手が待ってくれるはずがなく。

 驚かせるどころか自身の未熟さが露呈しただけとロロベリアは厳しい嫌味と共に敗北を受け入れた。



 ◇



「はい、勝者アヤチン」


「誰がアヤチンだ」


 やはりゆるっとした宣言をするラタニに月守を鞘に納めつつアヤトは批判。


「つーかさあ、最後なんだからもうちっと盛り上げるとかしろよ。お客さんがポカンってしてるじゃまいか」

「文句があるなら自惚れていた序列一位さまに言え」


 お返しと言わんばかりの批判も嫌味で一蹴。

 注目の最終戦が過去の選考戦を振り返っても最短の決着となれば観覧席の反応も当然で。


「つーか結果の分かりきった遊びに時間をかけては無駄な希望を抱かせるだけだろ」

「そりゃなんともお優しいことで」


 我に返るなりどよめく観覧席で序列入りが果たせなかったチェルシーが崩れ落ちる中、平然とアヤトはフィールドを去って行く。


「……ありがとうございました」


 声すらかけられなかったロロベリアも瑠璃姫を鞘に納め、アヤトの背中に一礼してから去って行く。


「ほんと、わっかりやすい子さね」


 その背中からヒシヒシと悔しさが伝わりラタニは肩を竦める。

 いくら勝てない相手だろうと勝負を諦めないからこその悔しさ。

 背筋は伸ばして堂々と退場しているが、今ごろ無様な敗北にボロボロと涙を零しているだろう。


 故にラタニは伝えない。


 新解放の分配調整に意識を集中している隙をアヤトは狙ったが、その僅かな隙を衝いて背後を取るには遊び感覚では不可能。

 つまり不意打ち狙いだろうとアヤトが()()()()()()()()()()()()()()


 今から十ヶ月前、二人はこの闘技場で初めて戦った。

 その時は完全に遊ばれていたロロベリアが三ヶ月後の選抜戦でそれなりに本気で遊ぶ相手に認められて。

 ついには本気を出させるまで認められたなら決して恥じることはない。

 ラタニですら学院生程度に一瞬だろうとアヤトが本気をだすとは当時も思わなかった。


 だがロロベリアが気付いていないのなら伝える必要はない。

 これからも大いに悔しい思いをして、泣いて、反省して。

 それでも足掻き続けるからこそロロベリアは近づいているなら。


「厳しく見守るのも教育ってねん」


 後継者の今後を期待しつつラタニも退場した。


 同時に選考戦全ての試合も終了。


 最終戦績十八勝一敗、学院史上三人目の選考戦に参加した一学生の序列一位というロロベリア=リーズベルトの快挙は変わらず。


 最終戦績九勝十敗でアヤト=カルヴァシアが序列十位に決定し、学院始まって以来初の騎士クラスからの序列入りという快挙を成し遂げた。




アヤトVSロロ三度の対決は、ロロの秘策を出す前に呆気ない結果を迎えました。

ですがこの結果がロロの成長をアヤトが認めた証明でもあります。


さて、選考戦も終了したことで新序列も決定。

十一章も残り僅かとなりましたが、ユースが呆れたアヤトのたいした理由じゃない内容も踏まえて最後までお楽しみに!



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読んでいただき、ありがとうございました!



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