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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十一章 波乱の序列選考戦編
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開始前の待ち伏せ

アクセスありがとうございます!



 選考戦七日目終了時点でロロベリアは依然と無敗の十三勝。

 初戦のリースに勝利したものの、次戦でエレノアに敗北したミューズは十一勝二敗に。そのミューズとの激戦を制したエレノアは初戦のジュードにも勝利して十一勝二敗と並んだ。

 初戦のロロベリアに敗北しても次戦を落とさず勝利したディーンは十勝三敗。

 七日目を二連勝のランとユースに離されることなく二連勝で終えたルイも九勝四敗。

 初戦でエレノアに敗北したジュードは次戦のリースが棄権したことで八勝五敗。


 選抜戦も残り三日となったがこの八名は前評判通り序列入りは確定。後は誰がどの席に就くかに出場者の興味が向けられているのか。



『チェルシー=ガーランの棄権により、ジュード=フィン=マルケスの不戦勝とする!』



「……またですか」


 審判の宣言に観覧席でレガートはうんざりしていた。

 というのも八日目の初戦が始まり六試合目にして三度目の棄権試合。その試合もディーンやミューズと既に序列入りが確定している相手だ。

 残り試合や相手、状況を見据えて温存するのも戦略の一つと理解しているが、こうも棄権試合が続けば見届けとして関わる側としては手持ち無沙汰でしかない。


「退屈ですね……」

「…………」


 レガートだけでなくシエンやイルビナも不服げにしているが、この二人が興味を示しているのは一つなのである意味関係ないかもしれないが、戦略的棄権は体のいい逃げでもあるとレガートは思うわけで。

 例え序列入りできなくても選考戦で一勝でも多く挙げればそれだけ自身の評価は上がる。故に選考戦序盤は棄権する者はほとんど居なく、相手が格上だろうと玉砕覚悟で挑んでいた。

 しかし中盤から主に元序列保持者やニコレスカ姉弟に対して棄権者が出始めている。いくら相手が格上でも敗北すれば惨めでしかない。

 だが戦略的棄権になれば同じ敗北でも捉え方が変わる。つまり体裁を気にしているだけとレガートは捉えている。

 なんせ棄権者の多くが初戦ばかり。次戦で温存目的の棄権など必要ないからだ。

 ただその必要ない棄権をした者が二人居る。むしろその二人以外今回の選考戦で次戦を棄権していないのでレガートの偏見とは言い切れないがそれはさておき。


 レガートの見立てでも元序列保持者やユースの序列入り確定は間違いない。またジュードやルイといった前評判の高い二人も順当に序列入りするだろう。

 問題は一日目のエレノア戦で序列入りどころか序列一位確定と確信したアヤトが五勝八敗と序列一位どころか序列入りも危ういことか。

 もちろん敗北ではなく、自身の体調不良に妹の体調不良が重なり、更に初戦の影響による棄権という結果。お陰でほとんどアヤト目的で観覧しているシエンやイルビナのテンションが下がる一方だった。

 とにかく少なからずアヤトの為人を知ったことで、全ての棄権が意図的なものとレガートも察している。でなければここまで勝ち星を挙げた相手が前評判の高い面々になるはずがない。

 ただ意図的に勝利している中にジュードが加わっていることにレガートも意図が読めなかった。もし序列入りせず面識あるメンバーとだけ遊ぶ目的なら、面識のないジュートが加わるはずがない。また元序列保持者やニコレスカ姉弟以外の有力候補とも遊んだ上で序列入りするにしても、中盤時点でアヤトは他の有力候補に挙げられていたライザや先ほど棄権したチェルシーに対しても棄権している。


 まあ中盤以降の混戦状況からアヤトの真意も掴め始めているが、確認しようにも自身の試合以外は観覧席にも姿を見せないので接触できず。

 選考戦が終了すれば学院生会として新序列保持者と時間が設けられているのでその時まで楽しみにしておくと前向きに。

 またアヤト以外で唯一次戦を棄権したリースも興味深い。

 昨日ミューズに敗北したとはいえ、次戦のジュード相手なら勝利も難しくないはずなのになぜ棄権したのか。

 この意味深な棄権は恐らく今日の初戦の相手、アヤトに関係しているとレガートは踏んでいる。

 つまり今日一番の注目は二人の対戦と、なにが起きるのか今から興味津々で。


『ルイ=フィン=リオンダートの棄権により、ユース=フィン=ニコレスカの不戦勝とする!』


 いたのだが、本日四度目の棄権試合にレガートは苦笑い。


 ただルイの次戦がディーンなら本当に戦略的棄権だろう。別クラスでもルイがディーンをライバル視していることも、理由がランとも既に調査済み。

 そして次の試合がそのランとエレノアという好カードなら。


「……退屈ですね」

「……ねむい」


「気持ちは分かりますが、次の試合はもう少し興味を持ちませんか?」


 学院生会の仲間としても見届けようとレガートはやんわり注意した。



 ◇



「ライザ=フィン=ダナリスから棄権の申し出があった。速やかに退室しなさい」


「……わかりました」


 試合前のチェックを受けて西口側の控え室に待機していたロロベリアは報告に来た講師と入れ違いで退室した。

 棄権する場合、基本は控え室でチェックを受けるタイミングで申し出る。

 相手側の出方次第、例えば急な体調不良も含めて不戦勝の可能性もあるので事前の申し出はほとんどないからだ。今回の選考戦で行使したのはアヤトとリースくらい。

 ちなみに両者共に棄権した場合は両者共に黒星が付くが、出場する学院生は一つでも白星が欲しいので余程相手が格上でない限り棄権しないから滅多にない。

 つまり相手が格上と判断しからこそ、光栄ではあるが少しでも経験を積みたいロロベリアとしては不完全燃焼。特にライザはリースと同じく槍使いなので挑戦するのを楽しみにしていた。

 それでも次戦のリース戦に精霊力が温存できたと前向きに捉えてることに。

 また次の試合はいよいよアヤトとリース。早く観覧席に戻って落ち着きたいが、だからこそとロロベリアは控え室の前から動かず。


「今日はサボらず来たんだ」

「なんの用だ構ってちゃん」


 同じ西口側から登場予定のアヤトが来るのを待っていた。

 アヤトとまともに顔を合わすのは王都でサクラを出迎えて以来。選考戦中は観覧席にも姿を見せないので久しぶりに言葉を交わせた。

 もちろん構ってちゃんな理由ではなく、会える機会があるなら伝えておきたいとがあったからで。


「ユースさんとの入れ替え戦で激励してくれたからお返しに。もしリースに勝てたらご褒美にデートしてあげるけど?」

「なら意地でも勝つか」

「……からかってるでしょ」

「よく分かったな」


 ……その前にからかうつもりが嘲笑されて、むしろロロベリアが恥ずかしい思いをしたが改めて足を止めて向き合うアヤトに伝えた。


「どうしてサボってるのかは知らないけど、そう簡単に思惑通りにいかせないから」


 アヤトが序列入りする気があるのかは分からない。

 しかし棄権しなければ勝利して当然とのやり方は気に入らない。

 いくらアヤトとの実力差が明確と受け入れていても、まだまだ遊び感覚でも相手にすらならないと自覚していてもロロベリアにだって意地がある。

 故に弱いなりにも噛みつくから覚悟しろと、鋭い視線を向けるロロベリアに対しアヤトはため息一つ。


「無敗で来いよ」

「あなたが直々に自惚れをへし折るから?」

「ここまで白いのが察しが良いと雨が降らんか心配だ」

「……どういう意味よ」


 忠告に対する返答変わりの挑発に不服げに頬を膨らませるロロベリアを無視、アヤトは控え室のドアノブに手を掛けた。


「またな」

「ええ。明後日に」


 次はフィールドでと約束を交わしてアヤトは控え室に入り、ロロベリアも観覧席に向かった。

 無敗のままと約束したなら果たすまで。

 ただまずは次戦に向けてリースの秘策をしっかり見届けようと足早に観覧席に続く階段を駆け上がっていたが――


「待ってたぜ。白いのちゃん」

「……なんで?」


 上りきる前に待ち構えていた()()()()疑問からロロベリアの足が止まったのは言うまでもない。




何気に今章でアヤトくんとロロがはじめて言葉を交わすシーンでした。

またツクヨさん登場でアヤトVSリースにむけて役者も揃いましたが、詳しくは次回で。


ちなみにレガートは学院生会のお父さんみたいですね。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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