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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十一章 波乱の序列選考戦編
439/783

二人の動向

アクセスありがとうございます!



 選考戦も六日目が終了。


 ロロベリアは未だ無敗の一一連勝中で、アヤトに唯一敗北したミューズも六日目次戦で難敵のユースに勝利したことで十勝一敗と食らいついていた。初戦のエレノア戦でユースがかなり消耗したのが勝因かもしれないが、組み合わせは運なので仕方がない。

 まあエレノアの意地も勝っていたのか。次戦を想定して出来るだけ精霊力を温存したいユースの心理を衝いたなり振り構わない精霊術の力押しが実り九勝二敗。六日目初戦で善戦するもミューズに敗北したディーンも九勝二敗と並んでいる。

 そして六日目に痛い二連敗のユース、五日目初戦でエレノアに敗北したリース、六日目初戦でロロベリアに敗北したランが七勝四敗という結果。

 ただそれぞれの実力や残りの対戦相手を踏まえれば前評判通り七名とも序列入りは確実。


 また今日の次戦でディーンに敗北したジュードと、四日目次戦でそのジュードに、今日の次戦でランに敗北して同じく七勝四敗となったルイも前評判取り序列入りはほぼ確実か。

 残り一名は他が混戦しているだけに誰にもチャンスはあると、今後は更なる激戦が予想されていた。


 のだが――


「……あやつはなにを考えておるのか。相変わらずようわからんのう」


 帰宅したロロベリアから選考戦の状況を聞いたサクラは率直な感想を述べていた。

 まだマイレーヌ学院に入学していない以前に、選考戦は選抜された二〇名と学院生会のみが立ち合えるのでサクラは観戦に行くことが出来ない。

 故に夕食前のティータイムでロロベリアからその日の結果を聞くのが密かな楽しみなのだがそれはさておき。


 疑問視しているのはアヤトについて。三日目と同じく今日も学院に来ることなく棄権。

 なんでも妹が熱を出したので選考戦どころではないらしいが、その妹の正体を知るだけにまずあり得るはずもなく。

 そもそも今回の理由も踏まえて元よりロロベリアはもちろん、マヤの正体を知らないサクラもアヤトの棄権が意図的と察している。


 とにかく棄権したことでアヤトは現在五勝六敗。他が混戦しているだけにまずまずの結果だが明後日のリース、最終日のディーンとロロベリア戦を棄権せず全て勝利しても八勝止まり。

 加えて勝率が同率の場合、両者の試合で勝利した者が、複数いた場合はその者らの試合による勝率で順位が決まるなら不戦敗のアヤトは下位になり序列入りできない。

 元より序列入りするつもりがないにしても、二日目のジュード戦を棄権しなかったのが引っかかる。

 ならジュード以外にもう一人棄権するつもりがないのか。それなら九勝でギリギリ圏内、運次第で序列入りするだろう。

 棄権しなければ勝利が確定と疑わえないのがアヤトではあるも目的が読めなくて。


「……あまり実力を知られないようにしてるとか」

「ならばお主ら元序列保持者やユースを避けるじゃろうて」

「でしょうね」


 即座に突っこまれるようにロロベリアもその線は薄いと理解している。

 持たぬ者が故に体力的な問題があるにしても、現時点でアヤトは充分悪目立ち。まあ本人だけでなくラタニもある程度実力を知られても構わないとのスタンス。

 そもそもアヤトを学院に呼んだ目的の一つが学院生の目を覚ますこと。国王も許可しているならある程度の悪目立ちは想定内だ。


「妾としてはお主と同じ序列十位になりたいと調整している、との理由の方が余程あり得ると思うがのう」

「……それこそないから」


 確かにアヤトが運良く序列入りするなら十位がギリギリだが、そのような可愛げのある理由なら少し嬉しい……ではなく、悲しいかなロロベリアは絶対にあり得ないと言い切れる。

 サクラも冷やかしただけなのか、肩を落とすロロベリアに満足しつつお茶を一口。


「まああやつのことは置いておくとして、お主も序列入りは確定じゃろう? 一先ずおめでとう」

「ありがとう。一先ず、だけど」


 カップを置いて祝福を述べればロロベリアは苦笑気味に受け取る。

 残り八戦控えているが現在の状況で二〇名の総当たり戦なら、既に十勝のミューズと十一勝のロロベリアの序列入りは確定。

 しかし少なくともロロベリアの目標は序列入りではなく序列一位。

 下克上戦後、アヤトに発破をかけてもらったようにレイドの覚悟に酬いる為に学院最強の座を受け継ぐ。

 そうした積み重ねが自ずと大英雄の道に繋がるなら突き進むだけとロロベリアに慢心はない。

 故に残り八戦も挑戦者として挑み続けると、カップに残るお茶を飲み干し立ち上がった。


「ごちそうさま。私は着替えてくるから――」

「室内訓練場でお待ちしております」

「夕食までには戻ってくるんじゃぞ」

「お願いします。それと了解」


 ロロベリアが懇願するより先に控えていたエニシが一礼と共に了承を、サクラも気にせず退室するのを見送った。

 なんせ屋敷に来てから選考戦が始まろうと関係なくロロベリアは訓練を欠かさない。もちろんオーバーワークにならないようエニシは配慮しているが、そのタフさと向上心には舌を巻くほどで。


「爺やもロロベリアのお守りは大変じゃろうて」

「老骨には応えますが、ロロベリアさまとの訓練は良い刺激になっておりますので」


 サクラの労いにエニシは素直な気持ちを口にする。

 元より才覚に溢れ、向上心の強いロロベリアは学院生とは思えないほどの実力はあった。

 しかし新解放の部分集約や分配調整だけでなく、対アヤト戦に向けての秘策にはエニシでさえヒヤリとさせられた。

 それでも本人が自覚していたように相手はアヤト。エニシの見立てでも驚かせるのが精々かもしれないが、少なくとも秘策抜きでも確実に序列一位の座に就くだろう。

 にも関わらずロロベリアは満足しない。

 あの意欲に満ちた姿は一人の武人として尊敬すべきで。


「選考戦を拝見できないのが残念でございます」

「妾もじゃ」


 サクラもロロベリアがどこまでアヤトに通用するのかが見届けられないと同意する。


 そしてもう一戦と言うべきか、二人には観覧したいカードがあった。

 長期休暇中ラナクスに一人残ったリースは、途中でツクヨが協力しているようだが今のところユース、ラン、ディーン、エレノアと二人もよく知る実力者に敗北。

 観戦したロロベリアが言うには大きな変化は見当たらず、調子を崩しているようでもないらしい。

 だがロロベリアは未だリースとの一戦を心待ちにしていた。

 選考戦前にリースが楽しみにしてと口にした以上このまま終わるはずがない。故に自分と同じく必ずなにか秘策を用意していると。

 ただその秘策を明かすのは恐らく自分との対戦ではなく、アヤトとの対戦になるだろう。でなければこの組み合わせで自分に楽しみにするよう期待させないはずと。

 なぜアヤト戦まで控えているのかまでは分からないが、リースの秘策をロロベリアは疑わず。

 だからこそ次戦で本気のリースと戦えると楽しみらしい。


「手強くなった相手との試合を楽しみにしているロロベリアもどうかと思うが……」

「ロロベリアさまらしくて良いではありませんか」


 曖昧な根拠だろうとロロベリアに当てられてしまい、アヤトとリースの一戦を見届けられないのが残念だった。


 その翌日、妹の熱が下がらないとの理由で七日目も棄権したアヤトだけでなく、初戦でミューズに敗北した()()()()()()()()()()()()()()()()()――


「……楽しみにしてるからね」


 初戦以降、観覧席にも姿を見せないリースにロロベリアは困惑よりも静かに期待を募らせていた。




アヤトくんに続きリースも棄権と、二人の動向が気になるところですがそれは後ほどとして、ロロは普段もやもやしまくるのに(主にアヤトに対してですが)いざとなればブレない強さがありますね。


そして次回はここまで出番がほとんどなかったリースが登場予定です。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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