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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十一章 波乱の序列選考戦編
436/782

波乱の前触れ

アクセスありがとうございます!



 選考戦第一試合、十分前――


 初戦の準備を整えた一八名が観覧席に集まっていた。

 もちろん固まらずに東側、西側と自分が入退場する側で散り散りで観戦。

 他は入れ替え戦と同じく講師陣が北側中央、学院生会が南側中央に。広い観覧席に僅かな人数、また初戦のカードに対する注目度から闘技場内は異様な雰囲気。

 序列一位本命の一人エレノアと公の舞台は選抜戦以来のアヤト。

 エレノアの攻略法を探るのもあるが、未だアヤトの実力に懐疑的な者はこの一戦で見定めようとしているのだろう。

 対するロロベリアたちのようにアヤトの実力を知る者はどのような立ち回りをするのか、そもそも本気で序列入りを狙うのか見極めていた。


「いきなりこの二人が戦うとは、精霊も粋な導きをしてくれましたね」


 が、選考戦に直接関係ないレガートは純粋に好奇心を疼かせ今か今かと観覧していたりする。

 エレノアが帰省している間にレイドから確認したことで、アヤトの参戦に関する自分の予想は証明された。

 しかしレイドたちの出した条件はあくまで選考戦に出場し、学院の意識改革に協力することのみ。その方法や序列入りに関しては全てアヤトに一任しているらしい。

 つまりアヤトの序列入りは確定ではなく本人の意思次第。

 ならどのような形で協力するのか。

 また序列入りが確実と言われている面子に対してどこまで本気を出すのか。

 そういった意味でも半端な相手よりはエレノアの方がアヤトの動向を分析しやすいと注目していた。


「あの刀を使うですか? むしろ使うです!」

「わくわく」


 シエンやイルビナも個々の興味で楽しみにしていたりと、学院生会としては微妙な理由で見届け役を担っていた。



 ◇



 そして午後一時。


『これより序列選考戦を開始する!』


 審判の宣言と共に東口からエレノアが、西口からアヤトが姿を現す。

 少数でも熱を帯びた視線が集中しようと両者は気にもとめず中央で向きあった。


「お兄さまから事情は聞いた」

「だからなんだ」


 説明会以来の対面ということでエレノアが報告するもアヤトは気怠げに一蹴。

 しかしエレノアは馴れたものと笑って流す。


「どのような形で協力するか聞くつもりはない。ただ私は全力で挑むまでだ」

「良い心がけと褒めてやるよ。ま、王女さまと遊ぶなら別のタイミングが良かったな」

「……? 初戦が私なのは不満か?」

「ある意味な」

「……相変わらずでなによりだ」


 意味深な呟きに肩を竦めるがやはり馴れたもの。

 気を取り直してエレノアは右手を差し出す。


「良い試合をしよう」

「王女さま次第だ」

「…………」


 が、いつも通り不遜な態度を取りつつアヤトはポケットから右手を出し、握り返してきたのでエレノアは唖然。

 これまで公式戦だろうと模擬戦だろうとアヤトが握手に応じたことは一度もないので仕方がない。


「なんだ」

「……拒否されると思っていた」


 故に自然と本音が漏れるもアヤトは苦笑と共に手を離す。


「序列さまは学院生の模範なんだろ。生会長さま」

「なら態度も少しは改めろ……」


 そのまま背を向け距離を取るアヤトにエレノアは肩を落とす。

 だが握手に応じる、というとても些細な修正だろうとアヤトなりに認めた証拠と前向きに捉えてエレノアも距離を取り、二〇メルまで空けたところで両者は再び向き合う。

 エレノアはレイピアを構え、アヤトも抜いた月守を肩に乗せるお約束の構えを取り。


『試合開始!』


 合図と共にエレノアは精霊力を解放。

 アヤトがどこまで本気を出してくるかを探るべく、まずは接近戦を挑むと地を蹴った。

 エレノアの飛び出しに合わせてアヤトも前傾姿勢に。

 本来のアヤトは初動なく驚異的な瞬発力で一気に距離を詰めてくる。

 ならこちらのやり方に付き合うつもりと判断。


()()()


(……っ)


 だが付き合うどころかアヤトは肩に乗せていた()()()()()()()()()()()()()()()

 予想外の行動にエレノアの意識が月守に向けられた瞬間――


「が……っ」


 カウンター気味に入ったアヤトの膝蹴りにエレノアの身体がくの字に折れていた。


「たく……王女さまも相変わらずか」


 悶絶するエレノアを見下ろしながらアヤトはため息一つ。

 計算していたのか落下してくる月守を悠々と掴み。

 

「簡単に意識が散漫になるから搦め手に弱いんだよ」

「ごほっ……は……」

「だがま、得物を簡単に手放さなかったのなら少しは成長したか」

「……些細な……成長だ」


 首筋に添えられた刀身の冷たさを感じつつエレノアは自虐するしかない。

 不意の苦しみに教われてもレイピアは手にしたままだが、突発的な出来事に弱い部分は何度も注意されているのにこの体たらく。

 恐らく様子見するとの心構えも衝かれたのか、完璧に出し抜かれてしまった。


「なら次は更なる成長を見せて欲しいものだ。口先だけの王女さま」

「言われる……までもない」


 故に皮肉も素直に受け入れ、差し出されたアヤトの手を借りてエレノアは立ち上がり呼吸を整える。


『勝者、アヤト=カルヴァシア!』


「必ずお前を認めさせてやる」

「だといいがな」


 未だ腹部に残る痛みとは関係ない涙を零しつつも、エレノアは称える握手を交わしながら敗北の悔しさを噛みしめていた。



 ◇



 序列一位本命の一人、エレノアの秒殺はアヤトの実力を見定めていた学院生に大きなインパクトを与えた。

 また知る者には憂鬱や覚悟を抱かせる中、やはり見届け役を担う学院生会の三人は三者三様の反応。

 月守で精霊術を斬るのを期待していたシエンは落胆、『おー』と抑揚のない声でぱちぱちと拍手を送るイルビナを他所にレガートは冷静に分析をしていた。

 多少奇を衒った方法でもエレノアの性格を上手く利用した危なげない勝利。

 しかし勝利したなら本気で序列入りを狙うつもりでいるようだ。

 つまり持たぬ者が序列一位という前代未聞の結果になる。

 これまでの常識を完全に覆す事態となれば学院内のみならず、国内も騒然となるのは必至。

 だがアヤトの実力は選抜戦で既にお披露目されている。自分のように受け入れきれなかった者が否が応でも受け入れるだけのこと。

 まあ現実を受け入れず自身の都合の良い解釈で否定する者、異を唱える者、不正を問う者はいるだろう。残念ながら世の中には時に信じられないほど愚かな者は存在する。

 そういった存在も含めて上手くコントロールしつつ、いかに意識改革にもっていくか。

 難しい情勢の見極めや、アヤトやラタニの不利益にならない情報操作が要求されるも、成し遂げた後の評価を考えればやり甲斐もあるわけで。


「大変ですねぇ」


 もちろんルビラの忠告も忘れず、いかに自身の利益に繋げるか模索するのにレガートの思考は忙しかった。



 しかし一筋縄ではいかないのがアヤト。



 ある意味初戦も含めて順当な勝敗で一日目も終了。


 二日目も元序列六位のラン、序列入り候補の一人ジュードにもアヤトは勝利した。


 だが三日目は精霊学クラス二学生と精霊騎士クラス一学生に()()()()()()()()()()()




何だかんだでアヤトくんとエレノア仲良くなってますね。


それはさておき、レガートは期待してましたが簡単にいかないのがアヤトくんです。

また今回は主要メンバー全ての戦いを描く予定はありません。何話必要になるか分かりませんからね……今章メインの内容を焦点に絞ろうと思います。

もちろん全てではありませんし、結果などは簡潔に明かしていきますがご了承ください。

オマケで描くかもしれませんが……今のところ未定です(汗)。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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