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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十一章 波乱の序列選考戦編
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父娘の時間

アクセスありがとうございます!



 長期休暇に入って三日目――


「――はっ!」

「ぬるいっ」


 夕刻前の練武館でロロベリアはサーヴェルと模擬戦を繰り広げていた。

 巨漢のサーヴェルを相手に精霊力の部分集約で速度を上げ、フェイントも織り交ぜながら様々な攻撃を繰り出すも軽くあしらわれてしまう。


「そのような攻めが父に通用するとでも思っておるのか!」

「……まさかっ」


 瑠璃姫の一撃を豪快な振り払いで弾き返しながら叱咤を飛ばすサーヴェルに後方まで飛ばされたロロベリアは着地と同時に目を細める。

 同時にロロベリアの髪と瞳に更なる蒼き煌めきが帯びるも、その煌めきが瞬く間に両足へ。


「思ってませんよ――っ」


 新解放の部分集約によって驚異的な速度でサーヴェル目がけて飛び込んだ。


「ぬうっ!」

「――っ」


 が、瑠璃姫を一閃するもサーヴェルは身体を捻ってギリギリの回避。

 勢いのまま通り過ぎたロロベリアが体勢を立て直すより先に首筋から切っ先が表れるなり小さく息を吐きつつ精霊力を解除。


 ラタニ曰く新解放の部分集約はリースの暴解放に匹敵する速度になるらしく、学院生で視認できる者はまず居ないとのお墨付きをもらっている。

 しかしサーヴェルクラスになると話は別。あのタイミングでも回避されたのなら視認できたのだろう。加えて下克上戦後に何度も試したお陰でスムーズに実行できても、まだ速度に感覚が追いつかない。


「……参りました」

「うむ」


 つまり背後を取られた時点で敗北とロロベリアは降参。

 潔い姿勢にサーヴェルも満足しつつ精霊力を解除。大剣を鞘に納めて一息つくことに。


「さすがはお義父さまです。少しは通用すると思ってましたが全然でしたね」

「新解放の部分集約か。確かに脅威ではあったが、ロロベリアの場合はそれ以前の問題だ」

「……それは?」

「飛び出す前の視線や構え、なにより表情でどう攻めてくるかが丸わかりよ」

「…………」

「故に速度が増そうと対応するのは容易というわけだ」


 だから初見でも回避できたのかと反省を。

 この問題点からレイドやユースに苦戦を強いられた。改めて精霊力の保有量だけでなく自分には改善するものが多いと痛感する。


「だが脅威なのは間違いない。我もラタニ殿から話は聞いていたが想像以上であった。今のままでも選考戦で十分通用するだろう」

「……アヤトには通用しませんけど」

「アヤト殿を学院生の括りに入れるのがそもそもの間違いだ」

「ですね」


 豪快に笑うサーヴェルにそこはロロベリアも同意。

 下克上戦以降、一度も訓練をしてないのでまだアヤトに新解放の部分集約を試していないがまず通用しないと変な自信がある。

 新解放の部分集約という新たな手札を得ようとロロベリアは楽観視していない。


「それに通用しないのはアヤトだけではありません。お義父さまが仰る通りなら、少なくともユースさんには対処されるでしょう」


 相手の行動を先読みする能力に長けるのはユースも同じ。

 ユースは王都に戻ってから予定通りラタニの訓練を受けている。

 どのような訓練かは不明でもロロベリアはその厳しさは身を持って知っている。現に昨日一昨日と話をする余裕がないほど疲労困憊で帰宅しているほどだ。

 また口には出来ないが精霊力の視認が可能なミューズにも速いだけでは通用しないし、レイドと同じく新解放を習得しているエレノアも何かしら対処してくるはず。

 なにより不気味なのはリースで。


「……リースが一人残り訓練するとは我も驚いたぞ」

「私も驚きましたが、だからこそリースの覚悟が伝わりました。やはり近接戦といえばリースの得意分野なので怖さもあります」

「会えぬのは寂しくあるが、お前達にとってはいい機会なのかもしれんな。共に訓練を積み高みを目指すのもよいが、それぞれで悩み、見出した答えをぶつけ合うことで高めあうのも時には必要。それが僅か十日と言えどだ」


 サーヴェルと同じような助言をラタニも言っていた。

 いつも一緒が絆ではないなら、今回はリースだけでなく自分やユースにとっても良い機会かも知れない。

 ならばこそ十日後、更に強くなっている二人を落胆させない為にも。

 そして自身の目指す場所に一歩でも近づくには、新解放の部分集約をモノにしなければならない。

 十日という期間でどこまでモノに出来るか分からないが、試行錯誤を繰り返し続けるしかない。


「なので今回は私がお義父さまを独占させてもらいます」

「はっはっは! なんとも父冥利に尽きる言葉だ」


 娘に頼られるのが嬉しいのか、くしゃくしゃと頭を撫でつつサーヴェルはご満悦。

 幸運なことに今回の帰省に合わせてサーヴェルはわざわざ三日間の休暇を取ってくれている。

 まあリースやユースも踏まえて一緒に過ごす予定でいたが、遠慮なく独り占めさせてもらう。

 もちろん訓練以外の時間も過ごすつもりだ……というよりも、ロロベリアの保有量だと新解放の部分集約の訓練に絞っても長時間の訓練が不可能。保有量の少なさがどこまでも恨めしいが無い物ねだりをしても仕方がないと前向きに。

 そしてもう一人、貴重な意見が聞けそうな相手も居るわけで。


「だが明日は少々予定もある。一日中ロロベリアに独占されるわけにもいかんのだがな」

「むしろそちらも楽しみです」


 期待感に心躍るサーヴェルに負けじとロロベリアも楽しみな予定。

 なんせ明日ツクヨがサーヴェル専用の武器を持って訪れるのだ。

 王都に戻って聞いた話だが、なんでもツクヨは王都滞在中はニコレスカ商会の専属鍛冶師として契約したらしい。クローネから聞いた時はロロベリアだけでなくユースも驚いたものだ。


 まあ事情を聞いて納得してもいる。

 ゼレナリアでは希少な鉱石が手に入らず鍛冶の仕事もあまりない。父を超えるのを目標にしているツクヨとしては腕を磨く場が必要。やはり数を打ち経験を積むのが一番で。

 対するクローネもツクヨの腕を認めているだけあって、元より金物や武器を依頼したいと考えていた。

 またツクヨの信頼をクローネが勝ち取ったのも大きい。ツクヨは自身の打った武器を安売りするのを好まず、目立つのも嫌う。しかしクローネなら必要とする者の手に渡してくれる上に、周囲の権力者からも守ってくれる。

 つまりツクヨは安心して腕を磨くことに集中できて、クローネは念願だった鍛冶師の作品を下ろしてもらえると、両者にとって利のある契約なのは確か。

 なぜ急にゼレナリアを離れ、王都に滞在する決断をしたのか気にはなっていたが、もしかすると鍛冶師として成長の場を求め、クローネを頼ったのかもしれない。

 真意は改めて確認するとして、契約条件の一つとしてクローネが依頼したサーヴェル専用の武器が明日お披露目となる。既にツクヨの打った武器は王国貴族の間でも話題になっているが、今後ニコレスカ商会で売り出すなら優先してサーヴェルが手に入れても不思議ではない。

 どのような武器を完成させたのかも楽しみだが、更に明日はクローネが出したもう一つの条件として、サーヴェルとツクヨが対戦する。

 強者同士の戦いは観戦するだけでも勉強になる。また精霊力の扱いにかけてはラタニ以上のツクヨから新解放の部分集約について相談も出来ると、ある意味でサーヴェル以上にロロベリアが待ち遠しくて。


 しかし明日は明日、今は今とロロベリアは気持ちを切り替えサーヴェルと距離を取った。


「夕食前にもう一勝負お願いします」

「もう一勝負と言わず、ロロベリアが力尽きるまで付き合うぞ」



 

義理の父と娘でもサーヴェルとロロは似た者同士と言うべきか武闘派です。

ですが四章以降、ロロが遠慮しなくなったのはサーヴェルも嬉しいでしょうね。



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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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