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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
413/781

認めた楽しさ

アクセスありがとうございます!



 ゆるっとした開始宣言に合わせてレイドたちは精霊力を解放。

 同時にフロイスとミラーはアヤト目がけて一直線に駆け出し、レイドとカイルは広がるように斜めへ。

 ティエッタも弧を描くよう移動を始めるもシャルツは顎に指を当てたまま待機。

 またアヤトも開始と変わらず月守を肩に乗せたまま微動だにせず。


「ああああ――っ!」


 先に間合いに入ったミラーが雄叫びと共に左から大剣を袈裟斬りにするもアヤトは上半身を反らして最小限の動きで躱す。


「――シッ」


 僅かに重心を崩したタイミングを狙ったようにフロイスの紅蓮が振り下すが右足を軸に半身になることで回避。

 間髪入れずミラーが大剣を振り下ろし、フロイスも切っ先を返して振り上げる。

 しかしアヤトは半身のままサイドステップで後方に。


「おおおおお――っ!」

「ふん!」


 追撃するミラーとフロイスの猛攻も月守を振るわず、体捌きと最小限の移動のみで躱し続ける。


『駆けろ!』


『水壁よ!』


 その間、真横に移動したレイドが足に風を纏わせ突進。

 また対角線上に移動したカイルはアヤトの後方を覆うように水の壁を顕現。

 水壁によって退路を断ち、フロイス、ミラー、レイドで三方向からの挟み撃ち。


「なるほどな」


 しかしアヤトはフロイスとミラーの連携の僅かな間を狙ってレイドと入れ替わるように前進。


『炎槍降りそそぎなさい!』


 が、三人の後方に逃れたアヤトの回避を読んでいたかのように水壁の後方まで移動していたティエッタが精霊術を発動。

 レイドら三人も爆破に巻き込まれないよう既に退避する中、上空四方に顕現した炎の槍が一斉にアヤトを狙い討つ。


「それなりに頭使ってるじゃねぇか――っ」


 対しアヤトは跳躍するなり月守で炎の槍を切り捨てた。

 残りの三本は地面に突き刺さるなり爆炎が起こるもアヤトは悠々と安全圏に着地していて。


「どうやら、思ったよりも楽しめそうだ」


「……そう言ってもらえてなによりだわ」


 冷や汗を流すシャルツに向けてほくそ笑んだ。



 ◇



「まずはご挨拶ってところなんだろうけど」

「それにしてもデタラメすぎでしょ。今さらだけど」

「お兄さま方の狙いを完璧に読んでいたからな」


 開始早々の攻防にディーン、ラン、エレノアは呆れを通り越した苦笑い。

 レイドたちの狙いは良かった。

 前衛のフロイスとミラー、後衛のティエッタとシャルツにレイドとカイルが剣術、精霊術での支援と特性を活かした連携は霊獣対策の基本。

 その中でもフロイスとミラーが足止めし、レイドとカイルが行動範囲を限定して誘導、ティエッタが精霊術で狙い討つ。


 更にティエッタの精霊術を回避したところを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 だがアヤトは炎の槍に向かって跳躍する寸前()()()()()()()()()()()()()()。ナイフを回避こそしたがシャルツは精霊術を放てなかった。

 精霊力を感知できないアヤトの弱点を突いた精霊術を踏まえた連携のはずが、完璧に読みきったからこその回避法にもう笑うしかない。

 まあアヤトは教国で傷だらけになろうと聖教士団の精鋭三〇人の猛攻を凌ぎきったのだ。いくらレイドたちがトップクラスの実力者だろうと学院生としてでしかない。数も実力も連携も大きな差があれば余裕すらあるだろう。

 故にエレノアら以上にアヤトの実力を知る者からすれば驚くことでもない。

 むしろ知るからこそ別の驚きがあった。


「アヤトが精霊術斬ったの久しぶりに見たわ」

「……言われてみれば」


 ユースの指摘にランが頷くよう、訓練時でのアヤトは精霊術を斬らず回避している。

 精霊術を斬れない新月からなぜか一時的に借りているらしい月守に持ち替えてもそれは変わらず。個々はもちろんランやディーン、フロイスやティエッタ、レイドやカイルと二対一の訓練だろうと関係なくだ。

 更に朧月は補助程度で刀身を見ることすら希だが、エレノアたちだけでなくニコレスカ姉弟ですら精霊術を回避ではなく斬る対処はラタニ戦以来。

 またロロベリアはカナリアたちとの模擬戦で、ミューズは聖教士団を相手にしている際に初めて見た。


「なら奥の手一つ使わせるくらいにはアヤトを楽しませてるってことだ。カナリアさんもそう思うっすよね」

「意味もなく遊びで手札を見せるタイプではありませんから」


 とにかくそれだけレイドたちの連携が優れていたとも捉えられるとユースの称賛にカナリアも同意する。

 恐らく月守で斬らなくても回避できただろう。しかし確実な回避を選んだ結果なら、アヤトなりにレイドたちの実力を認めているからこそ。

 六人がかりとはいえ、学院生がそれだけの評価を得ただけでも充分称賛に値するのだが――


「あのぉ……アヤトくんは精霊力が無いはずだよね? 今の……どうしてかな~?」

「精霊術を斬る……? なにがどうなって……くっ、あの武器に秘密があるのか……しかしどのような原理だ……っ」

「…………」


 ルビラやズークは初めて目の当たりにする現象に混乱、グリードに至っては学院生会の三人と同じく茫然自失。

 三人もまたアヤトの実力を知ったのはロロベリアたちの訓練から。選抜戦でもロロベリアの氷礫を朧月や瑠璃姫で弾き返したのみ。

 入れ替え戦や下克上戦でロロベリアが瑠璃姫に精霊力を纏わせ精霊術を斬ってはいるが、あれは精霊力を武器に纏わせることで可能にする現象。

 にも関わらず持たぬ者のアヤトが当然のように火の精霊術を斬れば当然の困惑で。


「……カナリアさん、出番っすよ」

「仕方ありませんね……」


 さすがに朧月や月守が精霊力を秘めていることやツクヨの名を伏せて納得させるのは難しいとカナリアがフォローに回った。



 ◇



 初手を完璧に読まれても焦ることなくレイドたちは猛攻を続けていた。


「はぁぁぁ――っ」

「ああああ――っ」


 フィールド内を駆け巡り、前方から突進するミラーのタイミングに合わせてフロイスは背後から襲いかかる。

 遅れてレイドとカイルも武器を手に近接戦による四方挟み撃ちを仕掛けるもアヤトは平然と地面に右手をつき。


「よっと」


「ヴァッ!?」

「チ……ッ」


 振り上げた左足で紅蓮を蹴り上げ、更に大剣の腹を右足で蹴りつけた。

 衝撃によって軌道が変わった大剣が接近していたレイドを、紅蓮がカイルを牽制するよう襲いかかり、二人は避けるも間にアヤトの両足はミラーの顔をガッチリと挟んでいて。


「ほらよっ」


「――ふぎゃっ!?」

「ぐぅっ」


 身体をしならせ両足で持ち上げたミラーを対面にいるフロイスに打ち当てた。

 頭から激突した二人が重なるよう倒れる中、片手のみで体勢を整えたアヤトはミラーと入れ替わるように立ち上がり。


「相変わらずキミはデタラメだっ」

「そりゃどうも」


 曲芸のような回避に驚くよりもレイドはショートソードを振るうもアヤトはバックステップで悠々回避。カイルが加われば月守でいなしながら凌れてしまうも、精霊力の高まりを察知するなりレイドとカイルは後方に跳んだ。


『貫いて!』


『弾け踊りなさい!』


 同時にティエッタとシャルツが精霊術での挟み撃つ。

 岩棘と紅玉の追撃に対しアヤトは岩棘を月守で斬りながら前進。


「さて――と」


「ご――ッ」


 背後で紅玉が地面に着弾する音に構わず距離を詰め、勢いそのまま膝蹴りを叩き込まれたシャルツは苦悶。


『駆けろ――っ』


『水弾よ!』


 続けざまにレイドが両足に風を纏い、カイルも精霊術で援護するも身を翻したアヤトは迫る水弾を全て月守で斬り捨てながら二人に向けて駆けていく。


「がっ!」

「ぐっ!?」


 先に交錯するレイドの背中に月守を一閃、そのまま返す峰でカイルの腕を打ち付けた。


『爆ぜなさい!』


 迫り来るアヤトを足止めしようとティエッタは炎弾を放ち続けるも緩急の付けた動きで回避されてしまい。


「か……ごほっ! は……っ」


 月守の一閃を受けた脇腹を手で押さえつつ蹲るティエッタを一瞥したアヤトは背を向けた。


「やられっぱなしも趣味じゃないんでな」


 月守の峰で肩をトントン叩きつつ歩む様子は僅か数秒で六人を打ち倒したとは思えないほど涼しげで。

 それぞれが回復に努めている間に距離を取り、改めて六人に向けて挑発的に笑った。


「ここからは俺も()()()()()()()()()()()()が構わんな」


 今まで防戦していたアヤトが反撃に転じたなら、本当の挑戦はこれから始まると六人は立ち上がり。


「望むところさ……っ」


 みなの気持ちを代表してレイドは伝えた。




捻くれたアヤトくんの捻くれた形でレイドたちを認めました。

それはさておき学院生が相手だとアヤトくんのデタラメぶりがより分かりますね……この子も主人公なのに扱いがラスボスみたいでした(笑)。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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