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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
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評価と影響

アクセスありがとうございます!



 ラタニに抱えられ意識を失いグッタリとしたまま退場するロロベリアに観覧席からは盛大な拍手が送られた。


「ロロベリア……すごかったよ」

「いや、マジで格好良かった!」


 意識を失っても最後まで挑戦を続けたロロベリアの雄志にランは涙ぐみ、ディーンも興奮冷めやらぬまま健闘を称えていた。

 結果は残念だったが熱い戦いは大いに心を揺さぶり、疲労も忘れて声援を送り続けたほど。

 もちろん同学年として、また同じ元学院生としてレイドを応援していた三学生の三人もロロベリアに惜しみない拍手を送っていた。

 まあ最も熱狂していたのはカイルで。


「それにしても、カイルさまがあんな大声を出すなんて驚きました」

「『レイド、ここで意地を貫かなければ全てが無意味に終わるぞー!』とかな」


「……どうだったかな」


 ランやディーンの冷やかしに拍手を止め、カイルは特に汚れてもいないメガネを拭き始める。

 三学生の中では特にレイドと親しい仲ではあるも、普段の冷静沈着なカイルとは思えないほど誰よりも声を張り上げていたのが印象深い。


「普段はクールぶっているが、こいつは元から熱血漢だ」

「カイルくんはお友だち思いだからねー」


 だがカイルを良く知るグリードやミラーからすれば素の彼が出ただけと微笑ましく。

 

「お前らは……まあいい」


 四人の視線に居心地が悪そうにメガネをかけ直したカイルはため息一つ。


「学院最強の座を賭けるに相応しい戦いだったんだ。俺でなくても熱くなる」


 その証拠が鳴り止まない拍手と周囲を見る。

 到着時よりも観覧している学院生が増えたのは、他の闘技場に足を運んでいた学院生らも来ているからだ。

 例え間に合わなくても結果を早く知りたいと、それだけレイドは学院内の関心を集めているリーダーだった。

 しかし勝利宣言がされるよりも先に拍手が起こった。

 ここにる誰もが退場するロロベリアの健闘を称えるように。

 その拍手が下克上戦の前、レイドが口にしていたように彼女こそ最も序列一位に相応しい挑戦者だった認めた証で。

 今後もロロベリアを僻み、陰口を囁く者は居るだろう。だがそれ以上に彼女の実力を認めて憧れる者が出てくる。

 まさに敗北しても周囲を認めさせたロロベリアの雄志に熱くならない者は居ないのだが。


「複雑な気分か」


 と、カイルは別の反応を見せていたユースの背中に声を掛けた。

 激戦の最中でも彼は声援も送ることなく、今も最後まで拍手を送ることなく静かに観覧席の縁に両腕を乗せていた。

 家族として、または友人として、ロロベリアが認められたのは嬉しいはず。

 しかし近しい間柄だからこそ悔しさも込み上げているだろう。

 カイルも同じ気持ちをレイドに抱いているからこそ、その気持ちを察していた。


「複雑……ん~、どうっすかね。少なくともオレは純粋に姫ちゃんが誇らしいんで」


 対するユースは振り返りもせず本心を吐露する。

 カイルの言うような悔しさはある。特にミラー戦で意識がありながらも立ち上がろうとしなかった自分と違い、意識がなくても立ち上がり勝利を諦めなかったロロベリアの姿は格の違いを見せつけられた気分だ。

 ただ自分の弱さを受け入れたからこそ、この差も当然と開き直ることも出来るなら。

 今は開き直ってこの心地良い拍手を聞いておきたい。

 序列戦でも、入れ替え戦でもロロベリアに拍手をしてくれる者などほとんどいなかった。

 結果は違えど継続戦のようにラタニに担がれて退場するロロベリアに多くの学院生が拍手を送ってくれたが、あの時の拍手はエレノアの気高さに対する感情も含まれていた。

 だが勝利宣言まで送られた拍手はロロベリア個人に対して。

 もちろんレイドの健闘に対する敬意を込めているだろう。

 それでも多くの学院生がロロベリアを認めてくれたことが、ユースにとっては誇らしい……まあ遅すぎだろと愚痴の一つは零したいところだがそれはさておき。

 だからロロベリアに送られる熱い声援や称える拍手をしっかりと聞きたくて静かにしていた。そして焦らず、しかし悔しさを忘れず今後に活かす。

 ただこれはユースなりの結論、別の理由で同じ態度を取り続けていた者がもう一人いるわけで。


 ラタニやカナリアと共に人気の少ない観覧席でフィールドを注視するリースには到着した時点で気付いていた。

 姉も拍手をせず、レイドが退場していくフィールドを未だ見詰めている。

 いつもなら真っ先にロロベリアの元に駆けつけるはずなのに、カナリアが向かってもどこか心あらずな姿にユースは弱々しく微笑んだ。


(なにより……今は姉貴の方がよっぽど複雑そうだ)



 ◇



 カイルやユースたちとは別の観覧席では。


「……見事だったぞ」


 エレノアも退場するロロベリアに惜しみない拍手を送っていた。

 新解放を使用したので念のためシャルツと共に医療施設に運ばれたが、やはり結果が気になり許可を貰って駆けつけてみれば、ロロベリアは新解放の部分集約というデタラメを披露していたのに驚きと困惑ばかり。

 ただ先に来ていたルビラから経緯を聞いてからは夢中で声援を送り続け。

 あのレイドを追い詰め、最後まで挑もうとした姿に感動したものだ。


「でもエレノアちゃんは素直に称えられないんじゃないかな~。今のロロベリアちゃんはエレノアちゃんよりも強いと思うよ~」


 そんなエレノアにニコニコ顔でルビラが煽る。

 確かに新解放の部分集約は脅威、対処するのは困難きわまりないだろう。

 今までレイドの次に序列一位の座に就くと宣言していたエレノアとしては、総当たり戦でロロベリアが最大の脅威になるのは間違いないが。


「それは当然でしょう。私は一度ロロベリアに敗北している」


 だからなんだとエレノアは笑みさえ浮かべて肯定。

 なんせ継続戦でロロベリアには敗北済み。あれから成長していると自負しているが、成長しているのはロロベリアも同じ。

 つまり総当たり戦で対峙する時、挑戦者は自分だ。故にロロベリアの方が強いと言われたところでむしろ当然と受け入れられる。

 そして受け入れた上で、勝利するつもりで修練を積んできた。なら今は新しい手札を事前に知れたと前向きに捉えれば良い。


「だからロロベリアよりも強くなればいい。それだけです」

「とっても大変だよ~」

「元より承知の上です。なにより序列一位の座を簡単に得られると思っていませんから」


 エレノアが肩を竦めるように学院という箱庭の最強だろうと自分にとっては困難な道のりだ。間違いなく総当たり戦の二〇人に入ってくるラン、ディーン、ユース、リースもまた脅威。

 しかしそういった相手との対戦が自身の成長に繋がるなら大歓迎で。

 なにより今回の下克上戦から成長したミューズが居る。

 医療施設に運ばれた彼女は結果というよりロロベリアの応援に行きたいと共に駆けつけていた。まあ意識を失うほど精霊力を消費したティエッタを心配して飛び込んできたフロイス、同じく消費量からまともに動けないシャルツに付き添ってるズークは残念ながら来られなかったが。

 とにかく優しすぎるが故に相手を傷つけるのに躊躇し、勝利に対する執念がなかったミューズは敗北したもののティエッタから大切な覚悟を教わったらしい。

 加えて精霊力を視認できる能力、志を新たに歩み始めたミューズこそ一番の脅威かもしれない。

 だがそれもまた成長に繋がるなら歓迎するべきとエレノアはミューズに向けてほくそ笑む。


「お前にも負けるつもりはないぞ」

「…………」

「……ミューズ?」


 が、挑発に対する返答もなく呆然と立ちつくしたままのミューズに訝しみの表情に変わった。


「どうした……おい、ミューズ」

「え? あ……どうかしましたか、エレノア」

「どうかしたかはお前の方だろう。なにか気になることでもあったのか」

「……ロロベリアさんが少し心配で……随分と精霊力を消費してたのに無理な解放をしていましたから」

「たしかに……なら私たちも医療施設に戻るか。ミューズもまだ歩くのも辛いだろう」

「そう……ですね。ルビラさん、失礼します」

「お大事にって伝えておいてね~」


 何ともミューズらしい理由にエレノアは納得しつつ共に医療施設に引き返す。

 ただロロベリアが心配なのは本当だが、ミューズが気にしていたのは別のことで。


(お話しするべきでしょうか……)


 精霊力を視認できるからこそロロベリアの精霊力が()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と本人やアヤトに話すか悩んでいた。



 ◇



 一方、ルビラと別れたアヤトは継続戦と同じく闘技場から離れた時計塔の屋根上で静かに観戦していたりする。


「ロロベリアさま、残念でしたね」


 と、ラタニに担がれ退場するロロベリアに合わせてマヤが顕現。

 ここに来たと同時に神気を感じ取っていたアヤトは動じることなく苦笑する。


「ま、残念と言えば残念か。お陰で面倒事に付き合うハメになった」

「ではロロベリアさまに苦情の一つでも告げに行かれますか」

「それも面倒なんだがな」


 ため息を吐きつつアヤトは姿を消してしまい。


「面倒でも兄様のためになると思いますが……さてさて」


 クスクスと笑いながらマヤも消えていった。




エレノアとの継続戦から今まで、やっとロロが周囲に認められました……うん、ユースが愚痴るように遅すぎですけど。

ですがロロを知る者、特にユースとしては感慨深い拍手だったでしょう。またリースにとっては……今は伏せておくとして。

なのでミューズが気付いたことやマヤさんの意味深発言も今は置いとくとして、アヤトくんはどうするんでしょうね?


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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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