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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
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第六の対戦カード

アクセスありがとうございます!



 レイドとロロベリアの下克上戦が行われる闘技場から最も遠い闘技場。

 主に講習の実技訓練に使われる闘技場なので規模は小さく、それだけに観覧する学院生が分散されても席はそれなりに埋まっていた。


「ふふ、とってもやりにくいわ」


 ただその大半はエレノア目的なので挑戦者のシャルツは頬に手を当て苦笑い。

 ただエレノアの学院内での人気がレイドに次ぐのは承知の上とシャルツに気負いはない。

 加えて序列八位とはいえシャルツは序列戦で序列六位のランに勝利している。搦め手が得意なだけにエレノアとしては相性が悪い相手。


「余裕に見えるのは対策が万全、と捉えて宜しいですか?」

「さて、どうかしらね」


 なので軽く牽制するもさらりと交わして差し出すシャルツの手を、エレノアも涼しい笑みで握り替えした。


「お手柔らかにね」

「手を抜ける相手ならそうします」


 両者は距離を空けエレノアはレイピアを、シャルツは両腕を組んだままで向き合い。


『序列五位エレノア=フィン=ファンデル、序列八位シャルツ=ライマークの下克上戦――開始!』



 ◇



 一方、同じ小規模闘技場ではフロイスとランが入場。

 観覧している学院生は同じほど、しかしフロイスは女性に、ランは男性人気が高いので他の闘技場に比べて男女比率が均等で。


「勝った方が学院最強の精霊騎士ってことで」

「近接戦最強はカルヴァシアだからか」

「ですから彼は論外……そもそも距離関係なくアヤトの相手できるのってラタニさましかいなくないですか?」

「言われてみればそうだ」


 声援が飛び交う中でも二人は和やかにやり取りを楽しむも、手を差し出すなりフロイスの眼光が鋭くなり。


「最後まで譲るつもりはない」

「……意地でも譲ってもらいます」


 その圧に一瞬怯むも握り替えしたランは不敵に笑い、両者は距離を空けた。

 再び向き合いフロイスは紅蓮を青眼に、ランは右手に影縫、左手に蒼穹を持ち。


『序列四位フロイス=レイモンド、序列六位ラン=レヒドの下克上戦――開始!』



 ◇



 学院校舎に近い中規模闘技場ではティエッタとミューズが入場。

 こちらは両者とも異性人気が高い為、観覧している学院生は男性が圧倒的に多くある意味他の闘技場にはない熱気に包まれていた。


「…………あ」


 が、中央に歩を進めるミューズは観覧席の最上段で元仕官クラス代表のルビラと共に居るアヤトを見つけるなり表情をほころばせる。

 制服姿の学院生の中で黒一色の出で立ちは目を引くのもあるが、心のどこかで期待していたのかもしれない。

 しかし同時開始ならロロベリアの試合に行くだろうと諦めていただけに嬉しさの余りアヤトに向けて頭を下げた。


「ミューズ=リム=イディルツ、早く来なさい」

「も、申し訳ございません」


 が、審判を務める講師に咎められ慌てて中央へ。


「お待たせしました」

「アヤトさんが来ていましたわね」


 続けて向き合うティエッタに謝罪するも優美な微笑みを向けて。


「少し意外でしたが真の強者がわざわざ見に来られたのですから、お互いに無様な姿は見せられませんわね」

「はい。良き試合にしましょう」


 普段よりも柔らかさの増す表情で手を差し出すミューズだが、その手をジッと見つめていたティエッタはため息一つ。


「それはあなた次第ですわ」

「……ティエッタさん?」


 握手をせず背を向けるティエッタに困惑しつつミューズも距離を取り。

 直刀のサーベルを抜き構えるミューズに、ティエッタは腰に手を当て堂々と向き合い。


『序列三位ティエッタ=フィン=ロマネクト、序列九位ミューズ=リム=イディルツの下克上戦――開始!』



 ◇



 同じく中規模闘技場ではカイルとディーンが入場。

 ティエッタとミューズの試合が行われる闘技場に比べて観覧している学院生は女性がほとんど。

 ただこちらはカイル目当てのファンばかり、対しディーンには批判的なヤジが飛んでいた。

 なんせカイルから受け継ぐ形で精霊術クラスの代表、序列戦ではフロイスに惨敗。にも関わらずカイルに下克上戦を挑んだとなればロロベリアに次ぐ批判の対象となってしまう。

 ランとは違う方向で地元民には愛されているものの、学院生の中でディーンの評価は序列七位でありながらある意味でロロベリアよりも低いので仕方がない。


「……いや、良いけどさ」


 故に誰も自分に期待してない完全アウェーな状況にディーンは肩を落とす。

 しかし自分の評価が低いのはいつものことと開き直るのもディーン。


「この試合が終わったらみんなどんな反応するんすかね」

「随分と自信があるようだ」


 向き合うカイルに向けて緊張感のない伸びを一つ。


「そんなのないっすよ。俺とカイルさまとじゃ実力差は歴然、オマケに家柄も顔も惨敗。勝ってるところ探す方が難しいっすからね」


 自虐しつつもその双眸はやる気に満ちあふれていて。


「でも勝負事ってのはやってみなきゃ分からないっすよ」

「……ふん」


 満足げにメガネのブリッジを挙げたカイルは手を差し出す。


「その台詞をカルヴァシア相手でも言えるか」

「カイルさまだから言えるんっすよ」


 握り返すディーンは苦笑いで答え両者は距離を空け、武器を手にせず前傾姿勢で再び向き合った。


『序列二位カイル=フィン=アーヴァイン、序列七位ディーン=ソフラネカの下克上戦――開始!』



 ◇


 五カ所の闘技場で序列同士の戦いが始まる少し前――


「姫ちゃんの応援サボりか……戻ったら姉貴に燃やされるんだろうなぁ」


 序列四位専用の訓練場でユースは憂鬱な面持ちで時計を確認していたりする。

 リースの怒りを買う覚悟でなぜこのような場所に居るかといえば、挑戦状を叩きつけられたからで。

 意味深な挑戦に正直なところ断っても良かったのだが、審判役としてカナリアがわざわざ王都から足を運んでくれたのなら無駄骨も忍びない。

 なにより理由こそ聞かされていないが状況や呼び出された場所、挑戦してきた相手を考慮すれば受けるべきと判断。


「そんなわけで、オレが勝ったら姉貴のご機嫌取りに協力してくださいよ」


 故に気持ちを切り替え飄々とした動作で抜いた夕雲を器用に手首で一回転。


「ついでにこの状況の詳しい説明も」

「勝敗関係なくリースちゃんには一緒にごめんなさいしてあげるね」


 そのまま構えるユースと対峙するミラーは無邪気な笑顔で了承を。


「それに負けてもユースくんも知ることになるから大丈夫だよー」


 しかし暗に勝利は譲らないと大剣の柄を握りしめる。

 両者とも穏やかな表情ながらも張り詰めた空気の中、カナリアは三時丁度に合わせて懐中時計を閉じた。


「それでは始めて下さい!」


 開始宣言に合わせて両者は精霊力を解放。


 人知れずミラー=ハイネとユース=フィン=ニコレスカの対戦が始まった。


 


はい、第六の対戦カードはミラーとユースでした。

なぜミラーが意味深なタイミングでユースに挑戦状を叩きつけたのかは後ほどとして、次回から下克上戦も本格化。

六試合同時開始となりましたが、それぞれどのような決着を迎えるかをお楽しみに!


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!




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