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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
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挑戦者

アクセスありがとうございます!



 下克上戦を挑んで欲しい――


 最後の入れ替え戦終了後の控え室でレイドから提案をされたロロベリアはすぐに呑み込めなかった。

 いや、ロロベリアだけではなく、レイドら卒業生と向き合う在校生も予想外な提案に唖然。この立ち位置からレイドは在校生の五人が卒業生の五人に下克上戦を挑むよう提案しているわけで。

 ただ下克上戦は自身の意思で序列上位者に指名挑戦をするもの。

 上位者が下位者に逆指名の制度はなく、提案や希望も禁じられている。

 下位者を倒し序列を剥奪する所業の防止もだが、そもそも数字関係なく序列保持者の処遇は同じなので蹴落とす理由がないのだ。

 にも関わらず上位者、序列一位のレイドが提案してくれば困惑するのも当然。


「お兄さ――」


「下克上戦は自身の意思で上位者を指名挑戦するもの。つまり他が希望したり煽るのは禁じられている」


 我に返ったエレノアが口を開くもレイドは片手を挙げて制し、被せるように事項を述べる。


「だから()()()()この場で提案しているんだよ」


 そしてこれは卒業生五人総意の提案との意思表示。

 確かにタイミング的に十人とも序列を維持した状態で、他者に聞かれない密談をするにはこの控え室が一番いい。

 しかし違反をしてまでなぜこのような提案を持ちかけてきたのか、卒業生側の真意がロロベリアは分からない。


「……たいした理由ではない。俺たちはもうすぐ卒業だ。同じ序列保持者であろうと先輩として、学院に残る後輩になにかを学ばせてやりたくてな」

「また序列保持者として卒業するからこそ、最後に学院に貢献をしたいのですわ。使命を全うするのも真の強者に必要な勤めですもの」

「さすがはお嬢さまです」

「とまあ、精霊祭の序列戦のように最後まで学院生の意識改革に一役買いたい気持ちと、先輩としてのお節介かな? アヤトくんに任せっきで威厳はないけど、最後くらいは先輩として格好付けたいって……くだらないプライドだけどね」


 そんなロロベリアら在校生の困惑も承知の上とフロイスはさておきカイル、ティエッタ、レイドは真意を打ち明ける。

 学院を去る者として、残る者になにかを残したい。

 また学院の未来を思うからこその提案。

 今期の序列保持者はライバルでありながら例年よりも結束が強く、理想的な関係が築けていることから大胆な提案をしてきたのか。

 序列という地位に興味が無いロロベリアでも学院に貢献できる何かがあるなら協力するのはやぶさかではない。

 加えて卒業生側の真意は嬉しくもある。

 つまりこの提案を受け入れても構わないのだが――


「「…………」」


 真意を知ってなお戸惑いを見せるランとディーンの立場を理解しているからこそ安易に受け入れられない。

 平民の二人が学院生会に入れられたのは序列という立場が大きく、もし敗北すれば一時的に序列を失う。そうなれば不服を漏らす者が現れ、自分たちを指名してくれたエレノアに迷惑をかけると及び腰になるのも仕方がない。

 ただ配慮されている側のエレノアは二人が望むなら元より挑んでも構わないと考えていたわけで。


「ラン、ディーン。私に構うな」


 故に勧めるのではなく、先輩方の心意気を受け取るように背中を押す気持ちで笑みを向けた。


「それとも前期でお兄さまやカイルさまがティエッタさんの下克上戦を分析したように、総当たり戦でぶつかるであろう私たちに手の内を見せたくないのか?」


「……何気にボクら批判されてない?」

「戦略としてなら間違っていないんだが……もしそのような懸念があるなら下克上戦の開始時刻を同じにすれば解決だ」


 同時に戯けるような指摘に対し、苦笑しつつレイドとカイルがフォローを。


「らしいぞ? なに、要は勝てば良いんだ。先輩方に安心して卒業してもらえるよう、私たちの意地を見せてやろう」


 フォローを受け取りつつ、最後はランやディーンだけでなく、ミューズやロロベリアを見回し強く拳を握り勝利宣言で鼓舞する。

 その姿にランとディーンは目を合わせ。


「生会長にそこまで言われて引き下がるわけにはいかないか」

「なんせ俺たちは学院生会の一員、上司の命令とあらば従わないとだ」


 やはり元々挑みたい気持ちはあったのだろう。仕方ないとのスタンスを現しながらも吹っ切れた表情で承諾を。


「ミューズ、ロロベリアも構わないな」

「問題ありません」

「はい」


 元よりランやディーンの立場を優先していただけで、受ける意思のあったミューズとロロベリアも憂いがなくなれば迷いはない。

 これからの学院を牽引する生会長として相応しいエレノアの雄志にレイドらも満足しつつ、ならばとそれぞれが予定していた相手の前に移動を始める。


 その結果――


「……俺を逆指名するのはカイルさまかよ」

「お前とは精霊術クラスの代表としても先輩後輩だ。安心して引き継げるよう少しは骨のある姿を見せて欲しいものだ」

「ご安心してもらえるなら遠慮なく下克上させてもらうっす!」


 新旧精霊術クラス代表として、序列七位(ディーン)序列二位(カイル)のカードが決定。


「あたしのお相手は他にいませんね」

「レヒドと本気で戦うのは一年ぶりか」

「ええ、なのでどちらが学院最強の精霊騎士か白黒つけましょう」

「近接戦最強はカルヴァシア、というわけだ」

「あれは規格外の学院最強ですから論外です」


 学院最強の精霊騎士の座を賭けて、序列六位(ラン)序列四位(フロイス)のカードが決定。


「わたしのお相手はティエッタさんなのですね」

「不服かしら?」

「いえ。胸を借りる気持ちで挑ませて頂きます」

「……そう。なら貸してあげますわ」


 らしい謙虚な姿勢に若干不満そうにしつつ、序列九位(ミューズ)序列三位(ティエッタ)のカードが決定。


「なるほど……だから先ほどは静かにしていたのですか」

「先輩だろうと下位の私がなにかを学ばせる、なんて烏滸がましくて口に出来ないでしょう?」

「かもしれません。ですが――」

「ええ。下位の先輩だからこそ示せる意地を見せてあげるわ」


 序列八位(シャルツ)序列五位(エレノア)に指名挑戦と従来の形で下克上戦が決定。


 つまり序列十位(ロロベリア)の前には学院最強の序列一位(レイド)が立っていた。


「キミとは一度本気で戦ってみたかったんだ」

「……光栄です」


 思わぬ逆指名にロロベリアは恐縮しつつも、向き合うレイドを見据える瞳には強い意思が込められていて。


「学院最強の座を勝ち取らせてもらいます」

「あげないよ」




十章メインの一つ、序列戦再びとなりました。

ちなみに六章の序列戦とは違い、今回の対戦カードはクジ引きではなく作者の意思で決めました(←それが当たり前)。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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