対戦者
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「ではこちらで決めた証明の方法を説明しよう」
「……序列戦ではないのですか?」
提案を受け入れてすぐレイドから妙な物言いをされてロロベリアはキョトンとなる。
実力を示すなら自分のみが序列戦、序列入れ替え戦を行うとばかりに思っていたが、どうも違うようで。
「これは処罰も含めた問題だからね。それに序列戦を早めたところで、結局は誹謗中傷は消えない。だからボクなりにもっと良い方法を考えたわけだ」
補足を加えてレイドは説明を始める。
入学して最初の序列入れ替え戦でロロベリアは元序列十位の二学生に挑んで打ち勝った。
ただそれは変換術という一学生ではまず扱えない精霊術を駆使した物で、言ってしまえば相手の油断を突いた運によるもの。
もちろん元序列十位が油断をしていたのは否めないし、運だけで勝利できるほど序列保持者は甘くない。
ただ入学して間もない一学生が異例の序列入り。周囲は憧れだけでなく嫉妬も抱き、スキあらば陥れる理由にもなってしまっていた。
この問題も含めてレイドが序列入れ替え戦よりも効果が期待できる方法を考えたのはとてもシンプルなもの。
要は序列入りを望む者よりも実力のある相手に示せば明確な実力の証明になり、アヤトとの模擬戦を見ていない者は噂に不信感を抱く。
その実力者は――
「エレノアさま……ですか」
「序列保持者の中でキミの序列継続を最も問題視しているのがエレノアだ。要はエレノアが序列剥奪を望む者の代表と言えるし、彼女もキミと戦うことを望んでいる」
「…………」
「もちろんエレノアも含めてこちらはキミの勝利まで望まない。しかしエレノアが納得できる戦いが出来るのなら、少なくとも他は何も言えなくなる。能力だけでなく立場も含めてね」
確かにエレノアは序列五位という実力だけでなく、学院内の地位も第二王子のレイドに次ぐ王女という立場。加えてロロベリアの序列継続に最も異を唱えている。そんな彼女を実力で納得させれば周囲はこれ以上騒げない。
何故ならエレノアの決定に背く行為になる。これなら序列入れ替え戦よりも確実にロロベリアの誹謗中傷は治まるだろう。
ただ問題はあのエレノアを納得させられるかどうか。
正義感が強く、王族としての自覚を持ち、自身へも厳しく出来る王女。
なにより強い。
エレノアは序列五位。
しかし二学生の序列持ちでは最高位の位置。
つまり二学生最強。
だからこそ彼女を納得させられれば周囲も納得せざる得ない。
そして善戦することがどれだけ難しい挑戦かも理解している。
だがそれでも、ロロベリアはある覚悟を決めた。
「レイドさま、私から一つだけ条件を付け加えさせてください」
「なにかな?」
「私がエレノアさまに勝利できなければ、序列を剥奪してくださって結構です」
思わぬ提案にレイドも面を食らったようでしばし唖然となり。
「……それは自惚れじゃないかな?」
柔和な表情から一変、厳しい視線でロロベリアを見据える。
エレノアに善戦するだけでも今のロロベリアでは可能性は限りなく低く、勝利に至ってはゼロとも言える。
自惚れが過ぎると思われても仕方がない。
「……かもしれません。ですがここでレイドさま方の、エレノアさまのご厚意に甘えてしまえば、私の目指す場所にたどり着けないと思うのです」
しかしロロベリアは臆することなく言い切る。
持たぬ者が持つ者、精霊術士に勝てない。まさにゼロの可能性とも言えるこの理をアヤトは覆した。
もちろんロロベリア自身、同じ事が出来るとは思わない。
エレノアに勝利することが同じ強さとも思わない。
それでもここで勝利できなければ、きっと求める強さは手に入らないと直感が告げている。
もし負ければその程度でしかないと。
アヤトの世界を守る自分の望みは夢のまま終わってしまうと。
だからこそ、まずは自分自身に証明する。
「私はいつまでも守られる立場に甘んじるつもりはありません」
世界に名を残す大英雄――この道を歩む資格があることを。
「……いいだろう。キミの意思はボクから伝えておく」
ロロベリアの強い決意を察して、これ以上は無意味とレイドはため息を吐く。
「では模擬戦……いや、キミの序列継続戦の日時は三日後、場所は闘技場で。それまでは自由にするといい――これで後戻りは出来ないよ?」
「かまいません。私の意思を優先してくださり、感謝します」
「どういたしまして。楽しみにしているよ」
最後の忠告にも臆さず礼をするロロベリアに苦笑しエールを送った。
◇
「う~ん……どうも上手くいかないなぁ」
ロロベリア退室後、背もたれに体を預けてレイドが天を仰ぐ。
今回の序列継続戦を彼女が受けるか否か、結果は予想通り。
しかし予想外の条件を付け加えられてしまった。
いや、予想外というよりも予想通りか。
「そもそも彼は何を考えているんだろう?」
だからこそこの状況が更に分からないと思考を巡らせるが――
「入っていいよ」
ノックの音に中断され、すぐさま視線を前に。
入ってきたのはアヤトの元に行っていたカイル。レイドは念のため程度の確認をすることに。
「どうだった?」
「事情を説明した上で打診はしたが、今は間に合っていると断られた」
「だろうね」
所詮は念のため、アヤトにも模擬戦で実力を証明して欲しかったが元より期待していないのでレイドは嘆息するのみ。
「とにかく先生に忠告された手前、彼が望まなければこちらも強制できない。ロロベリアくんに頑張ってもらおうか」
「ならリーズベルトは受けたか」
「それは当然……ああ、でも向こうから条件が付け加えられたけど」
「条件? それはなんだ」
席に着き、カイルが問いかけるもレイドは身を乗り出す。
「ところでミューズくんがお手伝いするってお話はどうなった?」
「……俺の質問に答えろ」
「はいはい」
改めて本当に予想外なはずのカイルに説明を始めた。
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