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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
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念願と残念

アクセスありがとうございます!



「お見苦しいところ見せて悪かったな」


 シャワーを浴び終えたツクヨは向かいのソファに座り改めてレイドとカイルにご挨拶を。


「気にしなくて良いよ」

「右に同じだ」


 シャワー上がりで長い黒髪はまだ湿っているが、先ほどの扇情的な姿ではないのでようやく二人もツクヨと目を合わせた対面が叶った。


「ところでユースくんの武器を打っていると聞いたんだけど、もう完成したのかな?」


 なので早速レイドが質問を。

 ツクヨとは色々と話してみたいが、やはりどのような武器を打っていたか興味津々なようでロロベリアやリースはもちろん、自身の武器を心待ちにしていたユースも注目するとツクヨは頷いた。


「ああ、問題なく完成したぜ。つっても鞘はまだだけど」

「……見せてもらうことは出来ないだろうか」

「良いもなにも、どうせ見ることになるなら問題ないだろ。な、ユース」

「もちろんっす」


 恐縮気味にカイルが頼むもツクヨの言う通りと所持者となるユースも了承したことで一同は鍛冶場へ。


「これはまた……」

「……素晴らしいな」


 完成後に換気はしていても室内はまだ蒸し暑いが、それが気にならないほどの完成度にレイドやカイルは当然、ロロベリアたちも作業台に釘付けになってしまう。

 黒い布の上に鎮座するのは片刃剣が二本。

 二本とも刀身は深い銀色。しかし片方の刃数ミリは夕日のような深いオレンジ色と、今までの作品以上に工芸品のような美しさ。


「こいつらの材料はなんっすか? 随分と派手っすけど」

「陽剛石だ。こいつは月守にも使われている材質で、強度こそ黒金石には負けるがその分重量はないのと……親父にも色に拘れって言われてたからな。アタシ的にユースのイメージに拘った結果か」

「オレのイメージね……」


 ニヤニヤと告げるツクヨにユースは苦笑を。

 リースの炎覇は刃が赤で柄が白に対し自分の双剣は刃がオレンジで刀身が深い銀色。

 武器の特性も踏まえた上で精霊力を解放した色と守るべき相手の特徴を意識したような炎覇はアヤトが選んだ材質らしいが、ツクヨが拘った結果ロロベリアよりもアヤトの特徴を意識したのか。

 アヤトと言えば黒、だが朧月やまだ見たことはないが擬神化した際は白銀色に変化するらしい。

 つまり自分は守る相手よりもまず超えるべき相手を意識しろとの意味深なメッセージが込められているようで。


「……これが陽剛石だと?」

「ボクの知る限りこれほど澄んだ物はお目に掛かったことがないね」


 対しカイルとレイドは双剣に使われている材質にただ驚嘆。

 焼き入れ時に白灰鉱を使用したことで刀身を銀色に、刃のみ敢えて従来の材質を残した技術もさることながら、従来出回っている物に比べて深い色合いながらも澄んでいる。

 精霊力による精練がより不純物を取り除くことで可能とする、まさにツクヨだからこそ可能な輝きを見せるので無理はない。

 故により好奇心を疼かせる二人を他所に、同じく魅入っていたリースが別の好奇心から質問を。


「ツクヨさん、名前は?」

「ん? こっちがバカでそっちがアホだ」

「おい!」

「愚弟にぴったり」

「姉貴もおい!」


 あまりな扱いにユースが声を張り上げるのはさておき、ツクヨは打つ武器の刀身に命という名を刻んでいる。

 なので片刃剣の刀身にも刻まれているが東国の文字、読めるのはロロベリアの知る限りアヤト、ラタニ、サクラ、エニシの四人くらいだ。

 まあ二本とも別の文字が刻まれているのは分かるがどのような命か、所持するユースは当然ロロベリアも興味深く。


「冗談だって。そいつは二振りで『夕雲ゆうぐも』だ」


 改めてツクヨから聞いた命になるほどと感心を。

 銀色の刀身を雲に、深い色合いながらも澄んだ刃を夕日をイメージさせる相応しい命で。

 前回は一日に一本ずつ打ったが、この双剣にはそれぞれに『夕』と『雲』の文字を刻んでひとつの武器になるとの拘りから同じ日に完成させたらしい。

 色合いや命を含めてツクヨらしい拘りが窺えるも、もちろん武器としての性能もユースに合わせた物。


「んで、ずいぶん待たせちまったけどご感想は?」

「……最高っすね。精霊術で顕現した双剣よりも軽いのに強度は同じくらいでしょ?」

「さすがに精霊術で顕現した剣を超えるのはきついからな。ちょいと脆いかもしれねーぞ」

「重量と差し引きしても充分っすわ」


 実際に手を取り軽く振るいつつユースは満足げに頷く。


「なにより夕雲なら制御せず振れるから精霊術も扱えるし、こいつは精霊力を纏わせても壊れないんで……つっても纏わせるのはこれから訓練になるけど」


 今まで精霊術で顕現していた黒金石の双剣より僅かに劣る程度の強度でありながら軽く、しかも制御を必要としないのでより精霊術が扱いやすくなる。更に夕雲は精霊力にも絶える。

 精霊力を扱う技能も既に部分集約を習得したならそう時間は掛からないと、精霊術と剣技を巧みに扱うユースにとって、これほど頼もしい武器はないだろう。


「とにかくありがとっした」

「まだ鞘は完成してないけどな。どーいたしまして」


 軽い口調ながらも感謝の気持ちを込めて深く頭を下げるユースに、鍛冶師として満足いく仕事が出来たとツクヨもカラカラと笑った。


「……本当に惜しいね」

「色々とな……」


 また改めてツクヨの技量や知識を目の当たりにしたことでレイドやカイルがとても残念がっていた。


 その後、鞘の完成に合わせてアヤトも帰宅したのでユースも早速夕雲を手に、ロロベリアやリースも交えて代わる代わるアヤトに挑み……ボッコボコにされたのは言うまでもなく。

 ただレイドとカイルも本来の目的の訓練こそ叶ったが、夕雲の最終確認としてアヤトとユースの模擬戦を確認するなりツクヨが休むと客室に下がってしまい。

 心身共に疲労しているなら仕方ないが、二人は手合わせも話も叶わず終いで。


「……本当に残念だ」

「ツクヨくんが滞在している間にまた来ればいいよ」


「なんか……マジすんません」

「ツクヨさんには私からもお願いしておきます……」


 後ろ髪を引かれる思いで帰宅するレイドとカイルを居たたまれない気持ちでユースとロロベリアは見送ることになった。



 

ユースは念願だったツクヨ特性の『夕雲』をようやく手に入れました。

ただレイドとカイルには残念な結果でした……まあ、ツクヨさんはマイペースですし、なによりアヤトの悪友ですからね。


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