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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
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苦労は絶えず

アクセスありがとうございます!



 サクラがラナクスに滞在するのは五日間。

 試験を終えるまでは対策に集中するも、終われば領主への挨拶や同行した護衛は周辺の調査をしておく必要がある。

 また試験当日を含めた前後三日間は準備や採点などに費やすので学院は休みになるが、学院生会は学院生の代表として仕事があるので別。

 そしてアヤトも学食が休みでもエレノアからの依頼として滞在中の護衛を受け持っているのでやはり別。まあ前回と違って一日に数回様子見程度、もし何かあればマヤ越しにエニシから連絡が可能なので合間に学院生会を除いた序列保持者やミラーに稽古を付ける約束をしていた。


「今日は色々と楽しみにしていたんだけど……間が悪かったね」

「……だな」


 が、試験当日に訪問したレイドとカイルは事情を聞くなり肩を落とす。

 二人ともツクヨもラナクスに訪れていること、しばらく滞在するとエレノアから聞いて、前回訪問時に会えず終いだっただけに楽しみにしていた。

 故にアヤトとの訓練以外の目的もあったようだが残念ながら訓練もツクヨとの面会も叶わず終い。

 なんせ昨日の内にユース専用の武器のイメージが纏まったらしく、今朝からツクヨは訓練場内にある鍛冶場に籠もりきり。

 結果、訓練場が使えずアヤトとの訓練も出来ない状況で、そのアヤトもまた昼前に学院周辺の様子見で外出しているので目的の二人とすれ違いになってしまえばもう笑うしかない。


 ちなみに昨日はシャルツとミラーにミューズも訪問、ツクヨが滞在していると知らなかった三人は驚きながらも交流だけでなく訓練も受けられたりと充実な時間を過ごしていたりする。


「なんかすんません……」


 それはさておき、自分の武器を打ってもらっている結果のすれ違いなのでお茶を煎れつつユースが謝罪するもレイドはやんわりと手を振った。


「ああ、気にしなくて良いよ。元々の優先はキミだからね。しかし羨ましいね、出来ればボクもツクヨくんに一振り打って欲しいよ」

「俺もだ」

「? なら打ってもらえばいい……です」


 レイドの呟きに同意するよう残念がるカイルにリースが素朴な疑問を。

 二人なら実力は当然、ツクヨの拘りも互いの存在でクリアしている。

 問題は精霊石の採取か。カイルはまだしも王族のレイドを秘密裏だろうと霊獣地帯に向かわせるのは問題がある。だがラタニやアヤトがいれば国王も許してくれるだろう。

 後はツクヨとの交渉次第になるも、やはりリースから見ても二人の人柄なら断られることはないと思うわけで。


「そうして欲しいのはやまやまだが……難しいな」

「だね。アヤトくんはまだしも、キミやロロベリアくんだけでなくフロイスくんやランくんがツクヨくんの武器を所持するようになっただろう? その結果、学院内だけでなく国内にも彼女の武器の噂が広まりはじめているんだ」


 特にツクヨの打つ武器は性能だけでなく工芸品としても充分価値がある出来映えから、コレクション目的として手に入れようとする貴族が増えてくる。

 女傑としてやり手のクローネを母に持つロロベリアたちや、武の一族の従者を務めるフロイスのように後ろ盾があれば牽制できるもランは平民。

 無理矢理な交渉を持ちかけたり、手に入れた経緯を聞き出す者が出てくると危惧したレイドやカイルが学院生会という立場から無闇に学院生と接触しないよう睨みを利かせていることで自重が出来ていた。


「なのにボクらまで手にすれば、見返りとして手に入れたと思われる。こうなると説得力が無くなるわけで」

「だからエレノアも我慢している」

「……貴族って面倒」

「姉貴、オレたちも一応貴族だから」


 要は身分によるしがらみと理解したリースが嘆くもユースから突っこみが入る。

 ちなみにロロベリアやリースが所持していた頃、学院生らから入出経路を聞かれたことはあるもアヤトからもらったと正直に話していたりする。

 まあその時点で諦める者が大半で、無謀にもアヤトに直接聞き出そうとした者もいたのだが相手にされるはずもなく、実のところ一悶着はあったのだ。

 それもまたレイドやカイルが仲介に入ったことで事なき得ていたりするので余計にツクヨに頼めなくなったのだが。


「とにかく、ツクヨくんはあまり表に立ちたくないようだからね。王族という立場からすれば彼女の技術は惜しいけど、それでも本人の望みを無視するわけにはいかない」

「だからせめて話だけでもと思ったんだが……本当に間が悪い」

「あの……お二人は夕刻までは居られるんですよね? ならお話くらいは可能かと」


 心底残念そうな表情を見せる二人に同情してか、せめてもの気持ちでロロベリアがフォローを入れる。

 製法技術が秘匿なので詳しく説明出来ないが、ツクヨが受け継いだ製法は精霊力を利用するので刀以外の武器を打つのに半日かからない。

 ユースにどんな武器を打つかは聞いていないが、前回も遅くて昼過ぎには一振り打ち終えている。もちろん疲弊しているので手合わせは出来ないが、話くらいは出来るはず。


「……あの業物をそんなに早く完成できるのか?」

「こうなると余計に話すのが楽しみになるなぁ……」


 二人もロロベリアが助手として製法に携わっていると知るが故に、製法に関して慎重になるのも察しているので多くは聞かないが、だからこそ興味深いと視線が無意識にツクヨが籠もっている鍛冶場に向けられた。


「ああしんど! 白いのちゃん、なんでも良いから飲み物くれねーか」


『…………』


 が、同時に訓練場に通じるドアが勢いよく開かれ唖然。

 噂をすれば何とやら、入室してきたのはツクヨでようやく対面できたが二人は気まずげに視線を下へ。

 というのもツクヨは今まで鍛冶を行っていたのだ。

 ロロベリアも助手として同席させてもらったが鍛冶場はとにかく暑く、見ているだけでもクラクラしたものだ。

 更にその中でツクヨは鍛錬をし続けるので暑さも非ではない。なので水精霊の周季にも関わらず上半身は薄手のシャツ一枚になのも分かる。

 だが汗でぐっしょり濡れていることでシャツが身体に張り付きうらやま……もとい、ツクヨのメリハリあるボディラインが際立ち同性のロロベリアの目にも扇情的で。

 つまり身分関係なく人前に、しかも異性が居る場では決してしてはならない姿。


「ツクヨさんなにか羽織って下さい!」

「やだよ暑いし。それよりも飲み物くれよ」


 なのでレイドやカイルは配慮し、ロロベリアが慌てて訴えるもツクヨはどこ吹く風。

 ちなみにロロベリアがなぜ慌てているか分からないリースは首を傾げ、ユースは苦笑しつつも背を向ける配慮をしていた。


「…………なんだ客人がいたのか。これまた随分と色男だこと」

「分かったならなにか羽織って下さい……」


 それはさておき、ようやくレイドとカイルに気付くがツクヨはカラカラと笑うのみで仕方なくロロベリアがタオルを用意。


「初めまして。ボクはレイド=フィン=ファンデル」

「俺はカイル=フィン=アーヴァインだ」

「……ちなみにレイドさまはエレノアさまに兄君で、カイルさまは侯爵家のご子息です」


「ほんと、アイツの交友関係はわっかんねー」


 タオルで上半身を隠しても念のためと二人は視線を下に向けたまま名乗りを上げ、ロロベリアが補足するもやはりツクヨ。


「まあ知ってると思うけどツクヨ=ヤナギだ。つーかお二人みてーなお偉いさんの前でこんな格好も失礼なんで、ちょいシャワー浴びさせてもらいますわ」


「……ツクヨさん」


 二人の身分を知ったところで緊張もなく、最後まで恥じらいを見せないままバスルームに入ったツクヨを見送りロロベリアは脱力。


「さすがアヤトくんの友人だね」

「……色々とな」


 僅かな対面でもツクヨをとても理解できたレイドとカイルも安堵の息を吐いた。




レイドとカイルもようやくツクヨとご対面……ですが、ツクヨさんですからね。

アヤトだけでなくツクヨさんにもさっそく苦労をかけられてます。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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