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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第十章 先達の求めた意地編
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新生会長の不満

アクセスありがとうございます!



「ロロベリア、少し良いだろうか」


 翌日の昼休憩時、ニコレスカ姉弟と共にアヤトが切り盛りしている学食に向かっていた

ロロベリアを待っていたのか講師舎前にしたエレノアが呼び止める。


「エレノアさま、どうされましたか」

「ここではな……そう時間は取らせない」


 問いかければチラリと目配せされてしまい、要件は分からなくもロロベリアはニコレスカ姉弟に向けて片目を瞑った。


「先に食べてて」

「わかった」

「お気になさらず」


 二人も察してくれ多くを聞かずそのまま学食へ。

 ロロベリアはエレノアに連れられて講師舎裏手に移動を。


「……ここなら問題なさそうだ」

「それで、ご用件は」


 周囲に人気が無いのを確認して立ち止まるエレノアに早速ロロベリアが切り出すも、わざわざ待ち伏せして自分だけを呼び出すなら内密な事情と身構えてしまう。


「急遽時間が出来たから学院が終わり次第、そちらにお邪魔させてもらうとカルヴァシアに伝えてくれ」

「…………?」


 が、予想に反しアヤトとの訓練参加で首を傾げてしまう。

 先日エレノアは来期の生会長に任命され、信任投票も文句なしの支持率で生会長となった。

 故に引き継ぎや来期の学院生会メンバーの選出と忙しく、時間が出来たなら訓練に使いたいのは分かるが、ニコレスカ姉弟には聞かれても構わないはずで。


「それと……ミューズについて今の内にな」


 しかし躊躇いがちに続けた要件にロロベリアも納得。

 教国滞在最終日に語り合った際、学院復帰が叶ったらエレノアにも秘密を打ち明けるとミューズから聞いていた。

 入学して最初に声を掛けてくれたのは王族として留学生を気遣ったにすぎないが、共に居る時間が増え、いつしか親友と呼べる間柄になったと。

 だからこそミューズは隠し事をしている後ろめたさを抱き、また感情を読み取れると知ったらエレノアにどう思われるかが怖かった。

 それでもエレノアとの絆を信じて、手に入れた勇気を持って打ち明けると決めたと。

 自分以外で知るのはアヤトのみだったが、決意したようにミューズは打ち明けた。

 ならニコレスカ姉弟の前でも話せない内容でエレノアはミューズの秘密を受け入れてくれたとロロベリアは安堵しつつ。


「本当は休養日に聞いたんだが……時間が取れなくてな。後はミューズの居ないタイミングでロロベリアと話しておきたかったのもある」

「そうですか」


 そしてエレノアがミューズを抜きにして自分に用があるのなら。


「ロロベリアの想いは私も知っている。カルヴァシアの事情も含めてだ。しかし、それでも私はミューズの応援をさせてもらう」


 ロロベリアの気持ちを知っているからこそ、他にないと察していた。

 わざわざ伝える必要は無いが、敢えて自身の立ち位置を堂々と宣言するのがエレノアで。

 ならばロロベリアはなにも言わず頷くのみ。

 エレノアはミューズの恋路を応援する。

 しかしこれからも良き先輩として、良きライバルとして互いに高め合おうと伝えてくれただけだ。


「しかし長期休暇の間に何があったのか。随分と様変わりしていて驚いたぞ」

「それは……色々と」


 が、ロロベリアに伝わったと分かるなりエレノアは肩を竦める。

 それだけあの出来事はミューズにとって大きな経験だったと、事情を知るだけにロロベリアは理解できるがはぐらかすのみ。

 なんせミューズが打ち明けたのはあくまで自分の秘密やアヤトへの想い。

 教国で起きた事情はアヤトの秘密に触れる上に、教会が他国で引き起こしていた問題は秘匿にする条件でリヴァイと手を組んでいるので話すわけにもいかなかった。

 なので国王にはミューズを狙う反教会勢力を見つけたのでとりあえず殲滅したとアヤトは報告していたりする。

 ちなみにラタニが霊獣地帯の地形を変えたのは新たな精霊術の実験をしていてやり過ぎたと説明したらしく、こんな報告で納得してもらえる辺りが色んな意味でデタラメ師弟と言うべきか。


 とにかくミューズ以上に多くの隠し事をしているだけにロロベリアこそ後ろめたいが、エレノアは追求することなく懐かしむよう学食に視線を向けた。


「だが良い方向に変わったと感じているよ。その辺りはカルヴァシアのお陰と言えるのか……私のように」


 親友の成長だけでなく自分の成長も促してくれたアヤトに感謝を向けてくれる。


「生会長に任命された時、去年の今ごろの私だったら素直に認められなかったとルビラさんにハッキリ言われた」

「……手厳しいですね」

「しかし私自身が納得しているよ。あの頃の私は視野が狭く、自分を持っていなかったと今なら分かる」


 だがアヤトにプライドをズタズタにされたのを切っ掛けに尊敬する兄の背中を追うのを辞めて、自分の生き方に誇りを持つことができたからこそルビラもエレノアにしかなれない生会長として学院を導いてくれると認めてくれた。

 またエレノアだけでなく他の序列保持者も、リースやユース、ロロベリアもアヤトのお陰で心身共に成長できている。

 裏の目的があったとはいえ、ラタニの狙い通りアヤトという存在が少しずつ学院の改革を進めているわけで。

 レイドたちの想いを引き継ぎ、来期からはエレノアが生会長として学院を良き方向に導くことになる。

 

「私に出来ることがあるなら言ってください」

「なら近いうちに協力して欲しいことがある」


 故に少しでも手助けがしたいと申し出れば早速エレノアから要請が。


「もうすぐサクラさんが入学試験を受けに訪れるだろう」


 その切り出しにロロベリアも何を求められているかを察した。

 マイレーヌ学院の入学試験は水精霊の周季二月の始めで、エレノアを中心とした学院生会が既にスタートしている。

 入学試験を取り仕切るのは講師陣だが学院生会にも役割があるのだが、他国の皇族を招き入れるのは初めてのこと。外交とは関係ないが今回もサクラは数日滞在するわけで。

 今年初めに送られてきた手紙にも楽しみにしているのが伝わり、ロロベリアも再会を待ち遠しく思っていると、要は近しい友人として色々と便宜を図って欲しいのだろう。

 エレノアの要請は予想通りで、加えてアヤトには護衛もお願いしたいらしく。


「今回はサクラさん側もエニシさん以外の従者や護衛を連れてくるので問題ないが……やはりな」


 来期から留学生として滞在するならアヤトが護衛を続けるわけにもいかないが、今回くらいは万全にしておきたいエレノアの気持ちも理解できる。


「それならサクラさまが既にお願いされていましたよ。アヤトがどう返事を書いたかは分かりませんが、引き受けると思います」

「そうか。だが、私からも要請はしておこう」


 なので手紙に書かれていた内容を伝えればエレノアは安堵の笑みを。もちろんロロベリアも学院生会の手伝いを了承し。


「しかしサクラさんの留学は歓迎だが……お陰で生会長として余計に忙しいよ。入学試験後には最後の入れ替え戦も控えているのにこのままでは身体が鈍ってしまう」

「ならアヤトとの訓練は良い気張らしになりますね」

「……そんな心構えで挑めるような生ぬるいものではないのはロロベリアも知っているだろう?」

「身を持って知っています……」

「だからこそ鈍っている身体に活が入るんだが……とにかく、書類整理や引き継ぎの毎日は息が詰まって仕方がない」


 などと珍しい愚痴を零すも、これもエレノアの成長を窺える変化で。


「ロロベリアも時間が空いている時でいいから、序列専用の訓練場で手合わせに付き合ってくれないか」

「喜んでお相手します」



 周囲を頼り柔軟な考え方も出来るようになったエレノアならきっと素晴らしい生会長になれるとロロベリアは確信できた。




ミューズが仲間入りするならやはりエレノアがどのような心情でいるのかは描くべきかと。

また新生会長には順当にエレノアとなりましたが、この子は初登場時に比べると本当に良い感じに肩の力が抜けていますね。

そして新しい学院生会のメンバーのお披露目は後ほどということで。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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