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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
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対峙

アクセスありがとうございます!



「どうしてツクヨさんが? リースやユースさんは? そもそもどうして教国に居るんですか!?」


 ツクヨが教国の、しかも自分のピンチに駆けつけた理由を知らないロロベリアは状況も忘れて質問攻め。


「どうしてどうしてって白いのちゃんは相変わらずの構ってちゃんだよな。つーかアタシじゃ不服か? やっぱアヤトに来てもらった方が良かったか?」


 対するツクヨはカラカラと笑いつつ意地悪な質問返しを。


「ま、詳しい事情は後回しだ。いまは――と」

「え……!?」


 そのままロロベリアの手を掴むなり壁を利用して跳躍、死角から襲いかかってきた偽ミューズを躱して距離を取った。


「……なるほどな。アヤトがアタシを呼ぶわけだ」


 偽ミューズの動向に注意しつつアヤトのように月守を肩に乗せたツクヨは愉快げに目を細めた。


「御伽噺の聖女さまみてーに綺麗な面してるが、貼り付けたような薄気味悪い笑みしてんぜ。なによりあの精霊力だ」

「ツクヨさんには視えるんですね……」

「かなり特種なもんだが精霊力である以上当然だろ」


 頼もしい言葉にロロベリアは安堵の息を漏らす。

 ツクヨの精霊力を色で視認できる感知能力、また精霊力の扱いにかけてはラタニをも凌駕する。加えてその特性を活かせるだけの実力。

 まさに異端の精霊力を扱う相手にこれ以上ない戦力、どんな方法かは謎だがアヤトが呼びつけたのも納得で。


「あんな精霊力に当てられりゃたまったもんじゃねーだろうな。いくらラタニさんの部下でもちと荷が重いか」

「……どこまで知ってるんですか」

「大して知らねーよ。とにかく白いのちゃんはラタニさんの部下……カナリアだっけ? そいつの治療を頼むわ」


 またツクヨもどこまで事情を知っているのか気になるも、この場に留まっていれば足手まといになるのは明白。


「わかりました。ツクヨさん、お気を付けて」


 故にツクヨの指示に従いロロベリアは玄関口へと駆けていく。


「つーわけで勝手に決めて悪いが――」


 と、言葉途中でツクヨは月守を一閃。


「ダチに大事な大事なお姫さまを守れって頼まれてんだ。そう簡単にやらせるかよ」


 ロロベリアに向けて投擲されたナイフを弾き不敵に笑う。

 対する偽ミューズは二度の不意打ちを完璧に対処したツクヨを警戒したのか、ロロベリアへの追撃を諦めツクヨに意識を向けた。


「……どちらさまでしょう」

「なんだ知らねーのかよ。アタシはツクヨ=ヤナギ、アヤトの……まあ悪友みたいなもんだ」

「アヤトさまのご友人……ですか」

「悪友だよ悪友。アタシとしてはダチと呼びたいんだけど、どうも――」


 訂正途中で再び投擲されたナイフをツクヨは横に跳んで大きく回避。


「……おいおい、話は最後まで聞けって。つーかアタシにだけ名乗らせて自分は名乗らないってのはどうかと思うぜ」


「お聞きしたいのですが、なぜそこまで大げさに躱したのでしょう?」


 批判の目を向けるツクヨを他所に、偽ミューズは妙な疑問を口にする。

 恐らく先ほどと同じように月守で弾き返されると予想して投擲したのだろう。

 確かに不意打ちでもツクヨなら余裕で弾き返せる。

 ただそれがロロベリアに投擲したものと同じならで。


「……たく、少しはアタシの話も聞けよ。それだとアヤトみてーになっちまうぞ」


 故にツクヨは態度を変えず、頭をガシガシをかきながらため息一つ。


「そんなのアンタの精霊力が纏わり付いたナイフを弾けばアタシがヤバイからに決まってんだろ」

「…………」


 返答はない、しかし偽ミューズから笑みを消すには充分な効果はあったらしい。

 だがそれは当然の反応。

 自分に投擲されたナイフに僅かながら精霊力が纏っていた。

 それだけなら弾き返しても問題ない。精霊力が纏っていようとただのナイフ、同じく精霊力を纏わせるまでもなく月守は傷ひとつ付かない。

 しかし正面で弾いた瞬間、衝撃によって霧散した精霊力の影響を自分が受けていた。

 彼女はツクヨが精霊力を視認できる特異性を知らないので当然の細工。

 だからこそアヤトは対謎の襲撃者の切り札としてツクヨを回りくどい方法で教国に呼んだのだ。

 王国での襲撃未遂によりアヤトの存在が相手に知られた。しかしそれ以前にラナクスにアヤトを訪ねたツクヨの存在も、その特異性も相手には知る方法がない。


 対するツクヨは彼女の情報はある程度聞かされている。

 マヤ越しではあるがアヤトが彼女と対峙して導き出した、他者の宿す精霊力に影響を与える精霊術のようなものである可能性が高いという情報を。

 命を狙っていた彼女はアヤトにそれを使わなかった……いや、使っても効果が無かったのだろう。なんせアヤトは精霊力を宿していない。ないものに影響を与えるのは不可能だ。


 しかし彼女は――教会側は持たぬ者でも精霊力を僅かながら宿しているのを知らないはず。


 そして異端であろうと精霊力の影響を受けない存在は、神が精霊の友として生み出した人間とは別の何かが生み出した存在となり異端者認定されたのがアヤトの見解。

 まあ精霊力を宿していない時点で充分異端。ツクヨも出会った当初はバケモノ扱いしたので教会の考えも間違ってはないが、結果としてアヤトは粛清対象になったわけで。

 僅かな情報からよくぞここまで導き出すものだとツクヨは悪友の見解に呆れたものだが、しょせんは精霊力を感じることすらできないアヤトの導き出した予測にすぎない。

 実際に対峙して視たことでツクヨはより厄介な相手と認識を改めていた。

 相手の精霊力に影響を与える、というのは間違っていない。

 しかしそれを可能にしているのは精霊術ではなく彼女の制御力だ。


 先ほどの不意打ちで投擲したナイフが壊れないよう見定め纏わせた精霊力、その扱いは自分に匹敵するほどに鮮麗されている。

 加えて彼女から漂う精霊力の色。

 多少の淀みはあるが一般的な精霊士が秘める精霊力の色と変わらないが、所々に()()()()()()()()()()()()()()

 今は風によって散り散りになり、最後は自然界の精霊力に浄化されるだろう。

 しかし密閉空間だと浄化される前に取り込んでしまい、まるで毒のように宿す精霊力を蝕む。

 恐らく相手の保有量が多ければ多いほど浸食も時間が掛かるが持たぬ者は当然、精霊士も僅かな量で影響を受けてしまう。

 また本人にその影響が起こらないのは、毒を持つ動植物が自分の毒に影響を受けないのと同じようなもの、いうのがツクヨの結論。

 それでも従来の精霊力に異物が混じっているのは変わりない。故にその異物も自身の制御下におけるよう訓練したことで精霊力の扱いが上達したのか。

 なにより黒点は微細なもの、一般的な感知能力では本来の精霊力を強く感じ取ってしまい違和感すら気づけない。それが無解放時なら尚更だろう。

 まさに暗殺向きで不意打ち特化の精霊力、いくらカナリアが実力者だろうと精霊力を宿している以上相性は最悪。

 精霊力を纏わせたナイフを安易に武器で弾けば霧散した精霊力で身体が蝕まれ、その隙を突かれ殺されていた。

 故にツクヨは大きく回避したのだが。


(……わかんねーな)


 だからこそツクヨは腑に落ちない。

 ここに駆けつける道中、カナリアの報告を受けたマヤからある程度状況を聞いている。

 教会から戻ってきたミューズが偽者と看破したロロベリアの感知能力はツクヨの知る限り平凡。なのに自分のように視認できないロロベリアがなぜ無解放時の精霊力の違和感に気づけたのか。

 また偽ミューズはアヤトと同じく影響を受けないロロベリアも異端者と断定して粛清しようとしたらしいが、なぜロロベリアは影響を受けなかったのか。

 自分が視た限りロロベリアの精霊力は淀みのない美しい流れはしているも、他に従来の水の精霊術士との違いはない。

 ロロベリアの異常な制御力が何らかの形で作用したのか。

 感知したのもただの偶然か。


 どちらにせよ視認した精霊力を分析したことで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 直接この精霊力に触れたロロベリアの精霊力がどう反応しているのかを視れば何か分かるかも知れないが、それではここに来た意味が無いと即時却下。

 頼まれたのは偽ミューズやロロベリアの精霊力の解明ではなく、アヤトに変わって偽ミューズにお仕置きすること。

 もし興味本位で取り逃がそうものならツクヨがアヤトにお仕置きされる。

 なによりダチの頼み以上に優先することなど何もない。

 故にここからはお仕置きの時間。

 ただアヤトから聞いた偽ミューズの情報や実際に対峙したツクヨは――


()()()()()()()


 我慢できず本音を漏らしていた。




ツクヨVS偽ミューズというより偽ミューズの精霊力について語られる内容でしたね……。

ですがツクヨだからこそよりロロベリアだけがなぜ? との疑問が強くなりますが、そちらは置いといて。

次回はアヤト並みに口に戸を立てないツクヨが偽ミューズを口撃します……もちろんバトルもありますよ?



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