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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
339/779

待ち受ける事実

最近度々遅い時間になり本当に申し訳ありません!

アクセスありがとうございます!



「このような協力をお願いしてしまい、申し訳ございません」


 ロロベリアやカナリア、使用人らに見送られて馬車が出発するなりミューズは対面に腰掛けるダリヤに謝罪を。

 というのも自らギーラスの元へ出向いたところで面会は難しい。

 特に降臨祭目前の時期にレイ=ブルク大聖堂への出入りは関係者以外禁止で、孫娘といえど余程の事態がなければ取り次いでもらえない。

 故に聖教士団所属のダリヤに面会希望をしてもらうよう願ったわけで、立場を利用した方法や無理を言って協力してもらうことがミューズは後ろめたい。


「事態が事態だ、気にするな。しかしミューズにこのような協力を頼まれる日が来るとは思わなかったよ」


 そんな気持ちを紛らわせるようダリヤは軽い口調で肩を竦める。

 幼少期のミューズならまだしも本格的に神子を志してからは規律を守り、相手側を尊重する余り自分の気持ちを抑え、わがままも言わなくなった。

 にも関わらずアヤトの窮地を救いたい一心で、ギーラスに直接相談したいと言い出したのだ。

 伯爵家令嬢といえどミューズの発言力は低く、使える人員も少ない。

 しかしギーラスは枢機卿という地位から発言力も使える人員も圧倒的。

 もちろん強引な解放や自警団への圧力と言った相談が目的ではない。そのような不正行為をギーラスが許すはずもないし、そもそもダリヤが拒否する。


「お爺さまならアヤトさまの処遇について妙案を頂けるかもしれません。それに教会関係者の方々から何か聞けるかもしれませんし……今はアヤトさまの無実を証明するために些細な情報でも集めるべき」


 なので申し訳ない気持ちが先行しつつもミューズが話してくれるように目的はアヤトの処遇や今後について話し合うことで、最善の手を打つ方法を探る為で。


「お会いするのも、お話しするのも難しいかもしれません。ですが無理だとなにもしないままでいれば何も得られません」

「……そうだな」


 力強く言い切るミューズにダリヤは微笑みかける。

 ギーラスにも、ダリヤにも無理を言って頼る選択は意外ではあるが、周囲の顔色を窺い中々行動に移せなかったミューズが自分の意見を主張し、誰かに頼る強さを得たのは姉貴分としてダリヤは嬉しく、少しでも力になろうと思えるわけで。


「心配するな。ギーラスさまはお優しい、きっとお会いしてくれるだろう」

「はい」


 ギーラスも同じ気持ちでいてくれると疑わなかった。



 ◇



 今朝から降り続ける雪によって時間は掛かったが、無事レイ=ブルク大聖堂に到着。

 まずはダリヤが単独でギーラスの元へ赴いている間、ミューズとレムアは近くの馬車待機所で待つことに。

 大聖堂や宮殿への出入りは正装が基本。ミューズも修道服を纏い、ダリヤも聖教士団の詰め所で団服に着替えてからになる。

 なので面会が叶うまで時間が掛かると待機所で暖を取っていたが――


「ミューズさま、お待たせしました」

「……え」


 僅か一〇分ほどで呼びに来たのはダリヤではなく顔なじみの司教で、さすがのミューズも反応が遅れてしまった。


「ギーラス枢機卿がお待ちです。ご案内しますのでこちらへ」

「あの、ダリヤさんは……」


 しかもギーラスと取り次いでくれるらしく、困惑するミューズに対し司教は首を振り。


「詳しくはギーラス枢機卿から。あなたはここでお待ちください」

「…………畏まりました。レムアさん、いってきます」


 状況が飲み込めないがミューズも了承、待機を命じられたレムアを残して待機所を後にする。

 渡り廊を伝って宮殿に入ったミューズは違和感から落ち着かず、ただ前を歩く司教の背中を見つめるのみ。

 というのも降臨祭を目前にも関わらず宮殿内は妙に静かで、すれ違う人がほとんど居ない。ミサのために大聖堂へ人為を裂いているにしても少なすぎる。

 またいくらギーラスを通じて顔なじみの司教とはいえ自ら待機所へ出迎えに来るのも妙。

 なにより目の前に居る司教を始め、すれ違う関係者から視える精霊力の輝き。

 淡く白い輝きが全くと言って良いほど揺らぎがなく、僅かな曇りさえ視ることが出来ない。

 聖職者といえど穢れなき純白の感情など持ち合わせていない。現に最後に司教とお会いした際も揺らぎや曇りは視えたのだ。

 なのにこの感情を統制されているような感覚、そして温もりを感じさせない輝きが別人のようで。

 宮殿内で雑談も違うと理解しているが、道中一言も発しないのも違和感を大きくさせる。

 ただ精霊力の視認はアヤト以外に明かしていない秘密。感情の妙について問いかけるわけにもいかず。


「どうぞお入りください」


 結局、会話も無いまま会談室に到着し、ドアを開けてくれる司教に会釈のみでミューズは室内へ。


「ミューズ、待っていたよ」

「お爺さま……っ」


 中央のソファで腰掛けていたギーラスが立ち上がり、微笑み出迎えてくれてミューズは安堵の表情。

 道中の違和感から不安になっていたが祖父だけは変わらず、視える精霊力の輝きも感情という温かみが感じられて。

 思わず抱きつきそうになるも、場所が場所だけにグッと堪えてギーラスに深く頭を下げた。


「お爺さま、お忙しいところ面会を許可してくださり……ありがとうございます」

「構わないよ。ちょうど呼び寄せるつもりだったからね」


 まずは無理を通してくれたことへ感謝を伝えるも、その返答にミューズはキョトン。


「こうした巡り合わせも神の思し召し、やはりお前は選ばれたのだろう」

「あの……」


 更に感慨深げに頷く仕草と言い回しに戸惑ってしまい。


「もしかしてお爺さまも……アヤトさまの為に、なにか……お考えを……」


 それでも自分を呼び寄せるつもりでいたなら、アヤトの処遇に関することと問いかけるも言葉が続かない。


「ミューズ……彼のことで嘆くことはない。もう、良いのだよ」


 何故ならアヤトの名を聞くなりギーラスの表情に愁いに沈み、精霊力の輝きも悲しみに曇っていたからで。

 いったい祖父は何に悲しみ、励ましてくれているのか再び不安が過ぎる中――


「神は全ての命に平等だ。きっと()()()()()()()()()()()()()殿()()()()()()()()()()()()()()()


「――――っ」


 続けられた言葉にミューズの心臓がドクンと跳ねた。

 この言い回しはレーバテン教に伝わる犯罪を犯した者に送る冥福の言葉。

 例え神の教えに従わぬ邪教徒だろうと、全ての命に平等な死という浄化によって穢れが焼かれた魂を生命神レーヴァは受け入れ、新たな生を与えてくれると。


 つまりアヤトは犯罪者として()()()()()()――


「なぜですか!」


 ようやく頭の理解が追いつくなりミューズは声を荒げギーラスへ詰め寄っていた。


「なぜアヤトさまが……お爺さまもアヤトさまの無実を信じられていたのになぜ……っ」


 祖父が冗談でこのような言い回しをするはずがない。

 そもそも傷害罪で拘束された翌日に処刑されるなどあり得ない。


「お爺さまのお言葉でも信じられません! アヤトさまが……そのようなこと……わたしは信じません!」


 故に信じられなくて、なぜ祖父がこのような悪質な冗談を口にするのかと。

 理解したからこそ理解できず、取り乱すミューズに対しギーラスは変わらず憂いの眼差しを向けていて。


「すまないね、ミューズ。これは私の過ちだ。私がもっと早く気づいていればお前を悲しませずに済んだのに……」


 精霊力の輝きからもギーラスが嘘を言っていないと。

 本当に後悔していると伝わり。


「でも、もう良いんだ。私が必ず使命を果たさせてあげるからね」

「なにを……仰っているのですか? 使命とは……」


 慈愛に満ちたギーラスの笑みが薄ら寒く感じたミューズは恐怖から逃げるように後ずさるも。


「だから今はゆっくりと眠りなさい。目覚めた時には――」


 ギーラスの言葉を最後まで聞き取るより先に、ミューズの意識は途切れた。


 

  

ギーラスの言うミューズの使命とは?

そしてアヤトは本当に天に召されてしまったのか?

真実はもちろん後ほど。



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みなさまの応援が作者の燃料です!


読んでいただき、ありがとうございました!



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