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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
337/779

訪れるは

遅い時間になり申し訳ございません!

アクセスありがとうございます!



 教国に訪れて六日目。


 今朝は分厚い雪雲が空を覆い、大粒の雪が降り続けているがまだ屋台などは開けられる程度。ただ使用人が言うには今夜から吹雪く可能性があるらしい。

 降臨祭を二日後に控えたタイミングでの悪天候となれば準備などに支障を来すと心配していたが、ロロベリアにとっては降臨祭よりもアヤトの方が心配で。

 昨夜はアヤトとの面会を打診してみるも、事情聴取を始めとした捜査が一段落するまでは難しいとの返答。

 加えて自警団はイディルツ家が招いた王国の客人が容疑者、という情報を内密に進めてくれている。こうした配慮をしてもらっている側としては使用人といえど不用意な接触は控えるべきで。

 自警団側からすれば有力な容疑者でも明確な証拠がない上にイディルツ家の客人となれば扱いに困るだろう。

 まあリヴァイはともかくギーラスやミューズがアヤトの無実を訴えているのが大きい。二人の人柄のお陰でまだ大事になっていないのは救いと言えるも、やはり直接会って安心したい気持ちはある。

 なんせ便利な連絡手段も相手次第、夕食後もカナリアの目を盗んで何度かブローチ越しにマヤからアヤトの様子を確認しても――


『兄様でしたら不衛生なのを嘆きながら、ずっとあやとりに興じられていますよ』


 ――これである。


 ちなみにアヤトに事件について詳しい内容を教えて欲しいとの言伝を頼んでみれば――


『二度も言わせるな構ってちゃん。そんなに構って欲しければ事が落ち着き次第暇みつけて構ってやるから大人しくしていろ、だそうです』


 ……本当に便利な連絡手段も相手次第だった。


 ただこの相変わらずな対応こそ深刻にならずに済む理由にもなるわけで。

 とりあえず無事解放されたら暇関係なく大いに構ってもらおうと心に決めていたりする。

 こんな状況下でも心配程度の心労で済んでいるのは相手次第だろうと連絡手段があるからで。

 そもそもアヤトが変な厄介ごとに巻き込まれなければ、もっと有益な情報や自身の考えを教えてくれればもっと安心できるのだがそれはもう今さらとして、とにかく恵まれている自分に比べてカナリアやミューズには連絡手段がない。


「せめて差し入れをさせてはもらえないでしょうか」

「自警団の方々もその点は配慮してくれているかと。もちろん自警団側へも控えるべきでしょう。いくら善意でも賄賂として捉えられてしまいます」

「……そうですね」

「ところでレムアさん。被害に遭われたご夫婦の様子について、何かお聞きしていませんか」

「容疑者らしき人物は既に拘束しているとお伝えしておりますので落ち着かれているそうです。また降臨祭間近ということからあまり喧伝しないようにとも。お二人とも敬虔なレーバテン教徒でしたので、どのような理由であろうと罪を認め反省してくれるのならと了承してくださっております」

「二重の意味で安心しましたね」


 にも関わらず昨夜も、朝食後の話し合いでも二人は終始落ち着いていて自分たちがアヤトに出来ることを模索している。

 もし自分が同じ立場なら二人のように落ち着いていられる自信はないだけに、ロロベリアは不甲斐なさと連絡手段を秘密にしていることが後ろめたく。

 それでも打ち明けるわけにもいかず、せめて自分なりに出来ることを模索しては些細なことでも意見を述べていた。


「ミューズ、アヤト殿は大丈夫なのかっ」


 そんな中、煮詰まらないよう休憩のティータイムをしていると狼狽したダリヤが訪問。

 なんでも降臨祭の期間は聖教士団としての任務が忙しくなるので、今の内に孤児院の様子を見に行けば院長から昨日の出来事を聞いたらしく。

 あの時は混乱していたので院長もアヤトが容疑者として拘束されていると断片的でも耳にしている。故にダリヤも聖教士団としてミューズたちの力になって欲しいと頼まれたそうだ。

 ロロベリアたちが教国で頼れる者は少ないだけに、アヤトの無実を信じてくれている院長の心遣いは嬉しく。


「今のところは問題ないそうです……あの、ダリヤさん。アヤトさまのことですが――」

「言わなくても分かっている。詳しい経緯は聞かなくともアヤト殿の容疑は何かの間違いなのだろう?」

「ダリヤさん……」

「模擬戦とはいえ本気で刃を交えた間柄だ。アヤト殿の剣は人を傷つけるものではなく、守る為に鍛えられた剣。あれほど美しい剣を振るう男が傷害などするはずはない」


 なによりミューズが弁護する前にアヤトを信じてくれるダリヤの気持ちが嬉しくて。


「それよりもだ、ミューズ。このような事態が起きているのになぜ私を頼らなかった。水くさいじゃないか」

「……申し訳ございません」

「謝罪はいい。とにかく私に出来ることは少ないかも知れないが、それでも共に悩むことは出来るんだ。なら私の力が必要なら遠慮無く声をかけてくれ」

「はい……ありがとうございます」


 また姉のように慕うダリヤの存在はミューズにとって大きな力にもなる。

 祖父も父も動けない中、イディルツ家の代表として自分たちに協力するプレッシャーもあっただろう。

 ロロベリアは当然、年長者のカナリアでも勤まらない心の支えになるわけで。


「ダリヤさん、私からもお礼を言わせてください」


 故にカナリアもアヤトの無実を証明する協力以上に、ダリヤの申し出に感謝を。


「ご協力、ありがとうございます」


 もちろんロロベリアも心からの感謝を伝えた。



 ダリヤが加わり今後の対応について話し合いが行われている頃――



『兄様の仰っていた果報はまだ訪れないのでしょうか。あやとりを興じる兄様なんて物珍しくもありませんし、わたくしちょっぴり退屈ですわ』 


『退屈ならその辺でもうろついていろ』


 渦中のアヤトと暇を持て余すマヤを適当にあしらいつつ、変わらずあやとりを続けていたりする。

 もちろん朝食後に聴取を受けはいるが、拘束時と同じで否認と黙秘ばかり。

 また確たる証拠もなく、イディルツ家の客人ということから自警団も強く出ることが出来ず、なによりアヤト相手に口論で勝てるはずもなく終始交わされる結果でマヤとしては楽しめる催しではなかった。


『果報について明確な説明を聞くのもありですが、訪れるのであればもったいないですし。なんせ兄様になんでもして頂ける貴重なカードですからね』


『俺としては遠慮なく使ってくれても構わんがな。つーかなんでもじゃねぇ、俺に可能なことならだろ』


『細かいですね、兄様は。ところで――』


 と、脳内で不毛なやり取りをしている中、マヤの声が途絶え。


『昼食には早いですし、聴取も終えたばかり。つまりようやく果報が訪れたのですね』


『だと良いがな』


 徐々に近づいてくる気配に心なしかウキウキと声を弾ませるマヤに呆れつつ、アヤトはあやとりの紐を指から解いた。




アヤトのマイペースぶりを知るだけにロロやミューズの心労、ダリヤの心意気が可哀想になりますね……。

そしてこの状況を一番後ろめたく感じながら苦労しているのはカナリアでしょう……ほんとお疲れさまです。


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読んでいただき、ありがとうございました!


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