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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
314/780

関係なく

アクセスありがとうございます!



 ギーラスとの面会から翌日。


 明け方から雪が降り出してはいたが雲の動きからこれ以上激しくなることはなく、昼頃に止むらしいので予定通り中断した教都観光を決行することに。

 なので昨日と同じく昼まで自由時間、その時間をロロベリアはミューズに訓練相手をお願いした。

 序列戦では勝利したものの運要素が強く、ミューズの防御を崩せなかったこともありこの機会に手合わせしたいと考えていた。

 もちろんミューズは快く受け入れてくれて練武館でレムア立ち会いの下、精霊術無しの模擬戦を。


「……ミューズさま、何かありましたか?」

「なにか、とは……?」


 休憩時、水分補給をしていたミューズに聞き返され、質問した側のロロベリアは返答に悩んでしまう。

 と言うのも何度か手合わせして気づいたが、序列戦では全て先読みされたようないなしの防御に繊細さを欠いていたように感じた。

 それでも最後まで崩せず終いなのは情けない限り、しかし僅かな反応の遅れがあったのも確か。

 序列戦から二ヶ月ほど経過し、ユースとの激戦で自分が成長している自覚はあるも、ミューズもまた精進しているなら急激に差が縮まったとは思えないとロロベリアに自惚れはない。

 なら自分の成長というよりミューズが不調だと思うわけで。


「少し心ここにあらずと言うか……お疲れなのかと」


 ただ原因までは察することが出来ず当たり障りない理由を述べるしかなく。

 対するミューズはゆっくりと首を振り。


「特に問題はありません。ただ……アヤトさまが遊んでくださらないのが少し残念でして……」

「……ああ」


 僅かな陰りが含まれた柔らかな笑みにロロベリアも納得。

 朝食後に一応誘ってみたもののアヤトは昨日と同じくカナリアと一緒に書庫に入り浸り。

 ギーラスのお墨付きを得て、了承をしてもらえたことでミューズは楽しみにしていただろう。それだけに断られれば残念だろう。

 ロロベリアもアヤトの訓練が受けられないのは残念ではあるも、教国滞在中は元より期待していない。

 ただそれは他者の前で余り実力を見せたくないと予想していたが、昨日の忠告を聞く限りどうも違うようで。

 フロッツに対する対応然り、ギーラスに対する対応然り、アヤトは無理に自分の実力を隠すつもりはない。またラタニも以前アヤトの好きにすれば良いと言っていた。

 だからといって強さをひけらかすようなタイプでもないが、少なくとも自分が楽しめそうと判断すればわりと気にせず相手になる。現にエニシとの対戦は礼と称して自ら進んで持ち出した。

 ならミューズが頼めば手合わせをするはず。なんせ学院生の中では一番楽しめそうな相手らしいし、滞在中の礼という理由もある。

 なのに断るのなら、やはりあの時に感じたように乗り気にならないのか。

 しかしだとしたら何故急に乗り気ではなくなったのか……相変わらずアヤトは何を基準に物事を判断しているのか分からない。


「まだ滞在期間がありますし、その内相手をしてくれると思いますよ」


 分からないが残念そうなミューズを元気付けようとロロベリアは口を開く。


「それに滞在中に機会がなくともギーラスさまからご許可も得られましたし、今後は気兼ねなくウチで訓練を受けられますから」


 今までは留学生として控えていたが、許可を得たことでエレノアたちのように訓練も出来る。レムアが同行しても問題ないならいくらでも機会はあるとのつもりでフォローするも。


「そう、ですね」

「……ミューズさま?」


 頷くミューズの笑み含まれていた陰りがより深くなったように感じたロロベリアは訝しむも、不意に練武館のドアが開かれた。


「失礼します。ミューズさま、少々宜しいでしょうか」

「問題ありません。どうかなさいましたか」


 一礼するクルトに向ける笑みは普段通りぽわぽわした笑みで、ロロベリアは気のせいかと首を振った。

 要件次第では聞かない方が良いとの判断から距離を空け、一人身体を解していた。


「……フロッツさんが?」


 が、驚きを含むミューズの声に自然と視線が行ってしまう。

 いったい何だろうと思う間もなく、ミューズもこちらに視線を向けて目が合い。


「ロロベリアさん、申し訳ありませんが訓練は一時中断でよろしいでしょうか」

「かまいませんが……どうかされましたか」

「それが……」


 若干の戸惑いながら説明された内容にロロベリアは驚きを隠せなかった。



 ◇



 数分後、ロロベリアと違いカナリアは胃の痛みを感じていたりする。

 訓練をしていたミューズとロロベリアが一緒に書庫へ訪れたのはまだ良い。

 ただもう一人の同伴者が居た時点で嫌な予感を抱いていたが見事に的中。


「実はダリヤさんがアヤトさまとお手合わせがしたいと仰っているそうなのですが……アヤトさま、如何なさいましょうか」

「如何ですか」


 何故ならミューズの相談を引き継ぐように頼んでくるフロッツが居たからで。

 ダリヤがアヤトとの手合わせを希望しているので後ほど一緒に訪問して良いかと了承を得にきたらしいが。


「まず聞くが、なぜお前がパシられてんだ」


 他国の貴族相手にも相変わらずな態度は置いといて、相談内容やフロッツの突然の訪問も意に返さず本のページをめくりながらアヤトが質問を。


「ダリーはちょい忙しいから代わりにな。俺が自由に使える使用人もいないからこうして直接頼みに来たわけ」

「惚れた男の弱みという奴か」

「そういうこと。てなわけで俺の恋路を応援してくれるつもりで受けてもらえない?」

「テメェの恋路を応援する義理はねぇんだがな」


 対するフロッツもヘラヘラと真剣味がない頼み方。これにアヤトは嘲笑と共に本を閉じ、今度は目を合わせて。


「剣聖さまが望んでいるんだな」

「そこは嘘偽りなく」

「……なるほどな」


 変わらず真剣味のない返答にアヤトは何やら納得。

 なにがなるほどかが非常に気になるも、アヤトはダリヤが望めば遊んでみたいと口にしていた。

 またアヤトは無理して実力を隠すつもりがないとカナリアも感じていた。

 正直なところ、ここは断って欲しいが。


「ま、俺としても剣聖さまと遊べるなら望むところだ」


(でしょうね……)


 構わず了承するアヤトにそうなるだろうと諦めのため息が漏れた。


 しかしアヤトの考えを読み切るのは不可能で。


「代わりと言っては何だが、一つ頼まれてくれんか」

「頼み……?」

「俺との手合わせ後、白いのに稽古を付けてくれと剣聖さまに伝えてくれ」

「……どうして私が出てくるの?」

「少しは考えろ構ってちゃん。剣聖さまとの稽古となれば良い経験になる」


 急に巻き込まれたロロベリアの疑問はもちろんお約束で交わされた。

 確かに剣聖と呼ばれるダリヤに稽古を付けてもらえるのは良い経験、しかし教国行きといいなぜアヤトは自分を関わらせたがるのかが必死に考えても分からない。

 まあ本当に自分の為を思っての条件かもしれない……だったら良いなとロロベリアは望む間も話は続いて。


「まあ、良く分からんけど……それくらいなら構わないぜ」

「決まりだな。ミューズ、すまんが観光は明日に回してくれ」

「アヤトさまが望まれるなら」

「ごめんね、ミューズちゃん」


 今回もロロベリアの意思関係なく話は纏まった。

 とにかく急にダリヤがアヤトとの手合わせを望んできたか気になるも、せっかくの機会を無駄にしないとロロベリアは気合いを入れた。



 だが、その疑問は呆れる形で解消された。



 ◇



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 昼食を終えてしばらく、約束通りイディルツ邸に訪れたダリヤから頭を下げられてしまう。

 何に対しての謝罪を迎え入れたミューズが問うより先に隣りに立つフロッツを睨み付けてからダリヤが説明を。

 何でも今回の手合わせはフロッツの独断で決めたものらしく、ダリヤも先ほど聞いたばかりで。

 つまり本人の意思関係なく組まれた手合わせで。


「まったく……余計なことをするな」

「それは素直になれないダリーの為にだな――」

「反省の色がみえんようだ」

「ふぎゃ!」


「「…………」」


 ダリヤの鉄拳制裁に沈むフロッツを当然の報いと、冷ややかな視線を向けるロロベリアとカナリア。

 それでもフロッツは懲りることなく、痛みを堪えて立ち上がり。


「でもさ、アヤトくんと手合わせしたいってのは間違ってないだろ」

「……む」

「学院時代からずっと孤児院の為にって剣を握ってたダリーが、初めて自分の意思で剣を交えたい相手が現れた。ならお堅いダリーに変わってお節介の一つもしたくなるってもんだ」

「……ち」


 珍しく真顔で反論するフロッツに対し、忌々しげにダリヤは舌打ち一つ。

 本人の意思関係なくお節介で組まれた手合わせだろうと、否定できないなら少なくともダリヤにはアヤトとの手合わせをしてみた意思はある。

 その証拠にダリヤは謝罪に来たはずなのに訓練着を纏い、腰に二本の剣を備えているからで。


「で、色ボケ男のお節介とは理解したが、結局どうするんだ」


 アヤトも察した上で皮肉めいた確認をすれば、ダリヤは観念したように向き合い。


「このバカの暴走とはいえ、そちらの予定を変更させてしまったお詫びとしてロロベリアさんの訓練に付き合わせて欲しい」


 まずどうあろうとアヤトの希望を叶えると示した上で、自らの言葉で意思を伝えた。


「だが……アヤトさんも私との手合わせを望んでいると聞いた」

「まあな」


 要はフロッツのお節介関係なく、お膳立てが出来た状態で互いの意思が同じなら。


「ならばお相手願えないだろうか」

「元より俺はそのつもりだ」


 ダリヤとアヤトの刃は衝突する。




天然アヤトVS剣聖ダリヤの遊びが実現……しますよね、やっぱり。

それはさておき、何気にアヤトくんが本気で遊ぶのって過去篇除けば第五章以来……この子も主人公のハズなのに。



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読んでいただき、ありがとうございました!



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