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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
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乗り切ったはずなのに

アクセスありがとうございます!



 ロロベリアの失態で危うい話題に触れたものの、その後は学院のことや教国についてとの世間話が続いた。


「息子がずいぶんと不躾な態度を取ったと聞いています。私からも謝罪を」


 またリヴァイの振る舞いを父として謝罪をされた。

 国王派と呼ばれる財務局に所属しているリヴァイに対しても枢機卿という立場でありながら父としての愛情を向けているならやはり派閥など噂でしかないのか。

 それともたんにギーラスの人柄か判断は付かないものの少なくともロロベリアの中でギーラスの心象が良くなった。

 ただ世間話といえどアヤトとギーラスの会話は避けられずカナリアの胃に負担が掛かっていたりするがそれはさておき。


 一時間ほどの面会後、夕食の用意が出来たところでロロベリアたちは客室へ戻ることに。

 降臨祭に向けて多忙なギーラスは夕食後に戻るらしく、なら祖父孫水入らずで過ごすようアヤトが提案したからで。


「本当にご一緒なさってもよろしいのですが……」


 それでも一緒に食事をしたいとの名残惜しさからミューズが引き留めるもアヤトは首を振る。


「先も言ったように忙しい祖父と過ごせる貴重な時間に割り込むつもりはねぇよ。特にお前は久しぶりの帰郷だ、家族との時間は有意義に使え」

「私も同感ですが……せっかく用意してくださった食事を運ばせる手間をかけさせてしまい申し訳ありません」


 アヤトの言い分にカナリアも同意しつつクルトやレムアに謝罪を。

 まあカナリアはこのままアヤトが一緒に食事をするよりリスクが少なくて済むとの打算ありきで、これ以上胃に負担をかけまいと切実な理由もあったりするがロロベリアとしては純粋に家族の時間を優先して欲しく。


「せめてギーラスさまが出発される際は、お見送りさせてください」

「もちろんですとも。ミューズ、みなさんの気遣いを無碍にするのも失礼だ。ここは甘えさせてもらおう」

「……みなさま、お心遣いに感謝します」


「どういたしまして」

「ではごゆっくりと」

「失礼します」


 ミューズも受け入れたことで三人はクルトに連れられ客室へ戻り。


「楽しい時間であった」

「みなさま素敵な方ばかりです」


 共に食堂へ向かうミューズは幸せな笑みを浮かべ、その笑みで王国での過ごす時間がどのようなものか理解できるとギーラスも満足げに頷き。


「たしかに。家族の時間を大切にするとの気遣いをされるとは思わなんだ。それに良い時間を与えてもらえた」

「はい。みなさまには申し訳なく思いますが……お爺さまと過ごす時間を与えてくださり感謝してなりません」


 その言葉に同意するミューズだが、ギーラスは僅かな間を空けて。


「むろんミューズとゆっくり過ごすのもあるが、客人の前で話すようなことではないと後で時間を取ろうと思っていたからね。アヤト殿の申し出に感謝しているのだよ」

「……お爺さま?」


 訂正と共に向けられた微笑に、なぜかミューズは妙な胸騒ぎを感じていた。



 一方、客室で食事をすることになったロロベリアたちと言えば――



「……ロロベリアさん、分かっていますね」

「はい……すみませんでした」


 食事が運ばれるまでアヤトに当てられた客室で待つ間、カナリアからの冷ややかな視線を浴びるロロベリアは縮こまっていたりする。

 理由はもちろん面会時にギーラスへ不用意な情報を与えたことについて。

 ギーラスの人柄やよく分からない納得でうやむやになったが失態は失態、今後は注意すべきと反省するべき。

 ロロベリアから反省の色が見えるならとカナリアもこれ以上の叱咤はせず、代わりに客室に戻ってから我関せずと窓際で外を眺めるアヤトに不平を漏らす。


「アヤトさんも、分かっていますね」

「なにがだ」

「なにがって……あなたがロロベリアさんと――」

「普段からかって遊んでやっていることへの不満なら、お前こそ分かってんだろうな」


 が、振り返ったアヤトの呆れたような視線を浴びてカナリアは口を紡ぐ。


「つーか無駄に意識しすぎれば、それこそこちら側が何か隠していると相手側が疑心を抱くだろ」

「それは……」

「そもそも俺が選抜戦に出場した時点でこの程度の疑心を抱かれるのは想定内。にも関わらず反応という情報で煽ってどうする」

「…………」


 アヤトの言う通り公の場で実力を示した時点で覚悟していたこと。なのに相手から話題を振られて過剰な反応をしてしまえば知られたくない何か、後ろめたい秘密があると伝えているようなもので。


「要は堂々としてりゃいいんだよ。ラタニというバケモノの元で、頭使って一生懸命がんばりゃ持たぬ者だろうとそこそこマシになる。信じられんならラタニのしごきを受けてみれば良い、くらいの開き直りでな」

「……すみませんでした」


 しかし王国でアヤトの実力を知る者は疑心はあれど、ラタニという規格外な存在が功を奏して強引でもその理由で押し切れている。

 なにより序列メンバーにアヤトがラタニと同等に戦えるほど実力があると示したのはカナリアの提案から、納得させる言い訳も自身で考えたもの。

 他国と言うことで過敏になりすぎていたと謝罪するカナリアを他所に、ロロベリアは側面に座っていた彼女の反応も良く見ているとアヤトに感心していた。


「分かればいい。なら今後は無駄に意識せず気楽にしてろ」

「わかりました……」


 故にアヤトの助言にカナリアも素直に反省する――が、それはそれこれはこれ。


「ですがあなたのギーラスさまに対する態度は別です! 約束しましたよね!」

「だから、それなりに気を遣っただろ」

「気の遣い方が間違っていると言っているんです! ギーラスさまが寛大な御方で事なき得ましたが――」


 根本的な問題を咎めるカナリアをソファに寝そべりあやとりしつつアヤトは聞き流す。


 結局、料理が運ばれるまで続いたことでロロベリアは先ほどの違和感を聞くことが出来なかった。



 ◇



 食後は再びエントランスに集まり出発するギーラスを見送り、中断した教都観光は明日改めてとの簡潔な予定確認で解散。


 とにかく次ギーラスと会えるのは降臨祭後。

 最もアヤトがやらかす心配をされていた面会を乗り切ったことでカナリアもようやく肩の荷が下りたのか、教国に訪れて以来初めてリラックスした表情を見せていた。

 まあ降臨祭後にもう一度面会が待っているが、それまで気を張っていては持たないとロロベリアも夜のティータイムに付き合い労っていた。


 しかし今回の教国訪問はどうも一筋縄ではいかないようで。


「実はダリヤさんが()()()()()()()()()()()()()()()と仰っているそうなのですが……アヤトさま、如何なさいましょうか」


「…………」


 翌日、ミューズの切り出した相談を聞きつつ、気を緩めるのは早かったとカナリアは胃の痛みを感じていた。




カナリアの胃に休みはありません。


それはさておきギーラスとの面会も終わり、ここから少しずつ今章が動き始めるのでお楽しみに!


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!



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