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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
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アヤトなりの気遣い方

今回も九時を過ぎてしまい申し訳ございません!

アクセスありがとうございます!



 降臨祭に向けて忙しいギーラスが急遽帰宅することになり、観光を中断してこちらも急遽帰宅を。


 まあギーラスが帰宅するのは夕食前の予定、帰宅してすぐ面会にならないのが唯一の救いか。


「いいですかアヤトさん。約束したんですから、くれぐれも失礼のないようにしてくださいね」

「いい加減聞き飽きたんだが」


 故にいったん客室に戻ったアヤトの元へ訪れたカナリアは念入りにクギを刺すのは仕方のないことで、ソファに寝そべり書庫から持ち出した本を読むアヤトがうんざりしているのも仕方のないこと。

 ただカナリアの懸念をロロベリアも理解できる。

 教国に来てから当主のリヴァイ、剣聖のダリヤ(ついでのフロッツ)とこれまで顔を合わせた大物は不意打ちから。ギーラスとの面会は元より予定通りで僅かながらも時間があるなら口酸っぱくも言いたくなるだろう。

 加えてリヴァイとは僅かな顔合わせ、ダリヤはミューズが目的で会いに来ているがギーラスの目的はアヤトに感謝を伝えること。

 つまりただ面会して終わり、または感謝を伝えて終わりとはいかず、アヤトは主賓としてギーラスとそれなりに言葉を交わすことになる。

 こうなると二人がどんな会話をするのか、ギーラスの質問次第でアヤトが何を返すのか予想も出来ないからこそカナリアが恐れるのは当然。

 なんせ相手は枢機卿という立場、いくら客人とは言え不敬を買っては問題になる。


 しかしこの場は元より決定していたもの。

 リヴァイに対する態度はもちろん褒められたものではないが、約束通りアヤトはそれなりに自重を続けているし、元より荒れ事を好んでいるわけでもない……口と態度の悪さと素直すぎる性格から無自覚に相手を怒らせているが。


「カナリアさま、アヤトも約束してくれてるんですからそのくらいで」


 とにかくギーラスとの面会ありきでここに居るなら今さらと、変に度胸が付いているロロベリアはアヤトの気持ちも分かるとフォローを。


「……それもそうですね。ここまで来たらなるようになるしかありませんか」


 カナリアもロロベリアの言わんとしていることを察したのか、半ば諦めの境地ではあるも落ち着きを取り戻す。


「ですがアヤトさん、くれぐれも面倒ごとを起こさないでくださいよ」


「なるようになるしかないんじゃなかったか」

「あはは……」


 が、もう性分なのかクギ刺しが止まらないカナリアにアヤトは呆れつつ、やはり両者の気持ちも分かるロロベリアは笑うしかなかった。



 ◇



「みなさま、もう間もなくギーラスさまがお帰りになるそうです」


 落ち着かないカナリアを宥めるロロベリア、自分のことで悩ませているのに我関せずと読書を楽しむアヤトと各々時間を潰しているとレムアが呼びに来た。

 ちなみにギーラスとの面会でも特に着替える必要はなく、普段通りでいてくださいとミューズに言われているので三人ともコートは脱いでいるが外出着のまま……なのだが、言うまでもなくアヤトは朧月と新月を帯刀したままダリヤとフロッツと顔を合わせた応接室に移動を。


「レムアさん、ありがとうございます。みなさまもどうかおかけになってください」


 既に待機していたミューズが笑顔でお出迎え。

 今回の招待での主賓はアヤトなのでとりあえずミューズの対面に、ロロベリアはその隣りを。カナリアは二人の付き添いとして一人側面のソファとレムアに薦められるまま着席。

 祖父と会うのがよほど嬉しいのかミューズはそわそわ、カナリアは別の理由でそわそわ。

 対しアヤトとロロベリアは落ち着いたもので。


「ギーラスさまがお帰りになりました」


 使用人が通達に来くるなりさすがのロロベリアの背筋が伸びる中、クルトを連れだって金の縁取りがされた真っ白な法衣を纏った御老人がゆったりとした足どりで入室。

 肩下まで伸びた白髪と同色の髭を顎に携え、うっすらと開かれている瞳の色は赤。

 背丈はロロベリアやミューズと同じくらい、しかし法衣越しでも背筋はしっかりと伸びているようで七〇才近い年齢を感じさせない堅牢さがある。

 この御老人こそ三人の枢機卿の中でも最年長のギーラス=リム=イディルツ。

 法衣と歩く所作もあってか、ただ居るだけでもロロベリアはどこか神聖さを感じられた。


「お爺さま!」

「ミューズ、よく帰ってきた。元気にしておったか」


 が、久しぶりの再会に感極まり席を立ち抱きつくミューズを両手を広げて迎える姿は孫に甘い祖父のそれで。


「はい! お爺さまも息災そうでなによりでございます」


 またミューズも普段のお淑やさが嘘のように祖父に甘える孫そのもの。

 とにかくリヴァイの面会のような重苦しい空気はなく、ほのぼのとした空気感が二人の普段の関係を物語っているがそれはさておき。


「ミューズさま……お気持ちは分かりますが、今はお客人の前でございます」

「あ……す、すみませんすみません! わたしったら……つい……」


 レムアの申し訳なさそうな進言を聞くなりギーラスからばっと離れたミューズはこちらに向かってぺこぺこと頭を下げる。

 ロロベリアとしてはむしろほっこりさせてもらったので構わないが、甘える様子を見られたミューズは歩を朱に染めて恥ずかしそうで。


「レムア、王国滞在中はミューズが世話になった」

「お褒めいただき光栄にございます」


 対しギーラスはレムアの進言にも不快はなく労いの言葉をかける。

 その対応はリヴァイとは全く違うもので、この御老人がリヴァイの父親とは思えず。

 まあ、リヴァイは婿養子なので血は繋がっていない上にギーラスと違い聖職者でもないのなら似てないのも仕方がないとリヴァイに対して良い印象のないロロベリアは若干失礼なことを考えてしまう。


「そして王国のみなさん、良く来てくださった」


「失礼しました! お初にお目に掛かります、ギーラスさま。カナリア=ルーデウスと申します」

「ロロベリア=リーズベルトと申します。ギーラスさまにお会いできて光栄でございます」


 ギーラスの視線が向けられるなり慌てて立ち上がるカナリアに遅れてロロベリアも立ち上がり恭しく一礼を。

 ミューズの思わぬ行動で呆気に取られたとはいえ、着席したままお迎えしたことは失態で。


「ギーラス=リム=イディルツと申します。お二人もそう畏まらず、くつろいでくださって構いませんよ」


 しかしギーラスは気にした様子もなく丁寧な一礼を。

 さすがミューズの祖父と言うべきか、枢機卿という立場でありながらも尊大な態度が微塵もなくできた対応……なのだが。


(アヤトさん!)


 カナリアの訴えの視線が突き刺さるように、アヤトは未だ名乗りもせず腰掛けたまま。

 いくらギーラスの許しを得たとは言えくつろぎすぎで。


「……アヤト」

「やれやれ……」


 これはないとロロベリアが小声で急かせばとても面倒げに立ち上がり。


「ご挨拶の前に御仁へ一つ願いたいことがある」


((ちょ――っ))


 やっと名乗るかと思えばギーラスと向き合うアヤトは言葉遣いこそそれなりに気を遣っているが態度は太々しく、これにはカナリアだけでなくロロベリアも驚愕。


「なんですかな?」

「俺はしがない平民故に御仁のような高貴な方との面会は不慣れでな。現に先ほどもそこにいる保護者からもたいそう心配されるほどに礼儀正しい作法なんざ知らん」


 そもそもロロベリアが知る限りでも国王や皇女のサクラ、白銀としてではあるが皇帝との面会も経験済みなので何が不慣れかと突っこみたいがアヤトは止まらない。


「つまり御仁のお言葉に甘えさせてもらい畏まらず、くつろがせてもらうが……もし目に余るほど不躾に感じるならご遠慮なく叩き出してくれ」


 もう既に叩き出すレベルの不躾具合にカナリアは口をぱくぱくさせてしまう。

 しかしやはりミューズの祖父と言うべきか。


「これはご丁寧に。しかし今の私はイディルツ家ではしがない隠居の身、今はミューズの祖父としてここに居る故に身分などお気になさらず」


 ギーラスはアヤトの申し出に柔和な笑みを変えることなく受け入れてしまい。


「感謝する。では改めて、アヤト=カルヴァシアだ」

「ギーラス=リム=イディルツと申します。こちらこそ、ミューズを救ってくれて感謝しております」


 改めて互いに名乗り様子に顔面蒼白のカナリアには申し訳ないが、サクラとの初対面に比べればよっぽど気を遣っているなとロロベリアは妙な感心してしまった。




アヤトくんの気遣いは完全にずれています……が、さすがに今まで振り回されているだけあってロロの神経も図太くなりましたね(笑)。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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