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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
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聖女の目に映るは

アクセスありがとうございます!



 選抜戦の際、リースの訓練に専用訓練場を使わせてもらった繋がりでミューズもあやとりを始めたこともあり、移動中の船内ではあやとり大会が行われていたりする。

 あやとり大好きなロロベリアとしてはあやとり仲間が増えるのは嬉しいこと。

 例え訓練の合間にアヤトがミューズに請われあやとりを教えていたと知ってもやもやしようと嬉しい物は嬉しいのだ。

 ただ意外にもミューズは手先があまり器用ではないらしく。


「……お恥ずかしいです」


 選抜戦から練習しているのに上手く紐を象ることができず、度々指に絡ませていた。

 ただ完璧に思えたミューズの意外な一面が可愛く、ロロベリアはなにかずるいと感じてしまう。

 またミューズに続いてレムアも始めたようで、こちらは普通に上手いのは出来る専属従者由縁か。ただカナリアもあやとりを嗜んでいたようで。


「想像力の訓練に良さそうでしたから」


 遊びではなく精霊術の訓練の一環として取り入れる辺りが勤勉なカナリアらしく、ロロベリアと良い勝負が出来るほどの腕前。

 小隊では他にスレイも取り入れているらしいが、訓練の一環と言うより何故か部屋の片隅でブツブツと卑下しながらあやとりに興じる姿が容易に思い浮かべた。

 ラタニ、モーエン、ジュシカはチマチマとした作業が嫌いなので出来ないらしいが、思わぬあやとり仲間を見つけてロロベリアはやはり嬉しい。

 

 そしてあやとりと言えばアヤト。

 サロンで始まったあやとり大会も全勝……なのだが、そもそも誰に言われるでもなくサロンに顔を出して参加したことにロロベリアやカナリアは思わず絶句。

 出発前にそれなりに気をつけると口にしたのでミューズに対する配慮か、それでもロロベリアは一瞬でもマヤと入れ替わったのかと疑うほど。

 それでもロロベリアが本人と断言できるなら違うと自信はあるだけに、どんな気まぐれだろうとこうした交流の場にアヤトが加わるのは良いことで、あやとり勝負を楽しめたのも良いこと……例え上手く出来ないミューズに面倒げでも教えている姿にもやもやしようと良いことだとヤキモチは我慢した。

 ちなみにそれなりに気をつけるなら態度もそれなりに気をつけて欲しいとカナリアは嘆いていたが、アヤトにそこまで望むのは無理ではないかと諦めの境地。


 夕食後はもちろんそれぞれに当てられた客室で。

 イディルツ家の招待だけあってロロベリアとカナリアに当てられた客室はかなりのもの。使用人も一人こちらに回してくれて至れり尽くせりな待遇だが、平民のカナリアと貴族家の養子で元平民のロロベリアは若干落ち着かなく回してくれた使用人に何も頼まなかったのは言うまでもない。

 またアヤトも同じ待遇を受けたらしいが、読書かあやとりをして過ごしていただろうとは予想できた。


 翌日の朝食もアヤトはちゃんと顔を出し、食後の団らんも(面倒気だろうと)一緒に過ごしたりと違和感ありまくりでも船旅は順調で。


「みなさま、お楽しみの最中失礼します。もう間もなく到着となりますので下船の準備を」


 昼食後に始まったチェス大会中にレムアが一礼を。

 ちなみにチェスの勝敗はアヤト、カナリア、ミューズ、ロロベリアの順となったがそれはさておき。


「わあ…………っ」


 サロンの窓から外を見るなりロロベリアは感嘆を漏らす。

 遠くに見える教国領は一面真っ白で、快晴なことから日差しが反射しキラキラと輝いている。

 まさに白銀の世界との表現に相応しい光景で。


「美しいですね……」

「お褒めいただき光栄です。アヤトさまは如何でしょうか」


 カナリアもまた見惚れる中、祖国の光景を褒められたミューズはとても嬉しげにアヤトにも感想を求める。


「いかがもなにも寒そうだ」


 が、苦笑交じりに返されたのは情緒もへったくれもない無粋なもの。


「白いのも寒さ対策しておけよ。バカでも風邪は引くからな」


「……あのね」

「……はぁ」


 挙げ句、嫌味を残して一人先に客間へと戻ってしまい、ロロベリアはその背中にジト目を向けカナリアは頭に手を当てため息を吐く。

 対しおざなりな対応をされたミューズは嘆くどころかクスリと微笑み。


「さすがはアヤトさま。お優しいです」

「……そうでしょうか」


 思わずカナリアが疑問視するもサロンから出て行くアヤトの後ろ姿を見送ったミューズは一度ロロベリアへと視線を向け、カナリアと目を合わせて頷く。


「ロロベリアさんのお体を気遣っておられましたから」


「「…………」」


 あれはたんにバカにしただけ、との言葉をぐっと飲み込みつつミューズこそさすがと称賛してしまう。

 これはアヤトに対する妙な妄信か、それともどんな発言だろうと善意に捉えてしまう心根か、どちらにせよ聖女と呼ばれるだけある清らかさで。


「またお優しいお気遣いをロロベリアさんに向けられたのは、アヤトさまにとってそれだけロロベリアさんを大切にされているのだなと伝わりました」


 それもたんにロロベリアがからかいやすいだけ、と本人までも自信を持って断言できるも、ミューズはロロベリアを真っ直ぐ見詰めて。


「ロロベリアさんがちょっぴり羨ましいです」

「……えっと」


 その言葉にロロベリアは反応に困ってしまう。

 やわらかな笑みと声音から嫉妬心は微塵も感じない。

 ただミューズから羨む発言をされると、もしかしてアヤトに好意を寄せているのかと焦燥感を感じる反面、理由もなく罪悪感も感じるわけで。


「ではわたしたちも準備をしましょう。カナリアさん、ロロベリアさん、また後ほどです」


 そんなロロベリアとカナリアに一礼し、ミューズはレムアと共にサロンを後に。


「とりあえず……私たちも客室へ戻りましょう」

「……ですね」


 言い表せない感情のまま二人も下船の準備を始めるため客室へと向かった。



 

ミューズからはアヤトとロロの関係はどう見えているのか。


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読んでいただき、ありがとうございました!



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