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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第九章 聖女の騎士編
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見送りと約束

アクセスありがとうございます!



 風精霊の三月、試験も終わり学院は長期休暇に入った。

 今回の長期休暇は年をまたぐ為、学院生のみならず学院関係者もラナクス出身以外はそれぞれ帰省となる。

 なのでロロベリア、リース、ユースも王都へ帰省。アヤトも(別行動で)王都にあるラタニの住居で過ごすらしいのでラナクスの住居に戻るのは年明けの五日を予定。

 長期間ラナクスの住居を空けることになるも、留守中はディーンやランが様子見してくれると名乗り出てくれた。

 また住居を王都からラナクスに移しているケーリッヒが管理してくれるらしく、安心して留守を任せられるがフィーナは少し残念そうだった。

 長期休暇中は年越し祭があるのでケーリッヒに好意を寄せているフィーナからすれば一緒にイベントを過ごせないので仕方ないかもしれないがそれはさておき。


 火精霊の長期休暇は親善試合でゆっくり過ごせなかったロロベリアたちは今回の長期休暇も忙しく。

 まず帰省した二日後、リースとユースが予定通り寄り合い馬車でゼレナリアに向けて出発。

 ユース専用の武器をツクヨに打ってもらうためで、事前に手紙を送り了承を得ているのだが。


「行ったら行ったらで一悶着ありそうだわ……」

「……頑張ってくださいとしか言えません」


 出発前からゲンナリしているユースにロロベリアは同情してしまう。

 というのもゼレナリアへはニコレスカ姉弟だけでなくロロベリアやアヤト、マヤも向かう予定でツクヨにもそう話を通していた。

 しかし手紙を送って間もなくミューズの誘いを受けたロロベリアとアヤト(元はアヤトのみ)は急遽予定を変更して教国へ行くことに。

 しかもこの変更をツクヨは知らない。予定変更から手紙を送れば間に合うも、アヤトが下手に教えればツクヨが乗り込んできて最悪入れ違いの可能性があると拒否。

 その意見にロロベリアたちも同意できるが、だからこそアヤトが行かなければツクヨはまず機嫌を損ねるだろう。

 一応フォローとしてアヤトは謝罪の手紙を持たせているも、果たしてツクヨが機嫌を直してくれるかは微妙なところ。

 もちろんロロベリアも謝罪や残念な気持ち、また次の機会は必ずとしたためた手紙を渡すようお願いしている。

 そしてサーヴェルやクローネも見送りこそ出来なかったが手紙を持たせたりとユースは若干配達員の気分で。


「ツクヨさんのご機嫌取らないとオレの武器を作ってもらえないし、これまでの努力も水の泡になるから頑張るしかないんだけどな」


 それでも死ぬ気で集めた精霊石やバイトの日々を無駄にしないとユースは頭をかきつつ覚悟を決めた。


「で、姉貴はいつまでそうしてるんっすかね」


 からの、冷ややかな視線を向ける先はロロベリアに抱きついたリースの姿。本人曰くロロ成分を補充しているらしい。

 ユースとしてはだからロロ成分とは何だと突っこみたいが、二日遅れで教国へ向かうロロベリアが帰国するのは二七日予定。

 ツクヨの機嫌を直して武器を打ってもらい王都に戻ってもロロベリアが帰国するまでは別行動になる。

 二人が親友となってからこれだけの期間会えないのは初めてのこと、ロロベリア大好きなリースとしては寂しいのだろう。

 ちなみに予定変更を聞いた際、リースも一緒に教国へ行くと言い出したが、ただでさえアヤトの意味不明な交渉で招待されていないロロベリアの同行が決定した状況。

 これ以上増やせばさすがに相手側に迷惑をかけるとロロベリアとユースで宥めた……いくらミューズなら許可してくれそうでも。

 だが後に保護者としてカナリアの同行が決定して更にリースが機嫌を損ねると出発前から既に一悶着があったりする。

 お陰で別行動が決まって以降、リースはロロベリアにべったりで。


「ロロ、風邪引かないでね。気をつけてね」

「ありがとう。リースも気をつけるのよ」


 ただ慕われるのは嬉しくもあり、ロロベリアもしばらく会えないのは寂しいとリースの頭を優しく撫でる光景がユースは微笑ましく。


「アヤトのやらかしで面倒ごとに巻き込まれないよう祈っとくよ」

「神さまに?」

「……このネタ使えないの忘れてたわ」


 それでもロロ成分の補充とやらを待っていれば馬車が出発するとユースは荷物を手にするもロロベリアの切り返しに肩を落とす。

 相手側の招待とはいえアヤトのこと、何かしらやらかすのは目に見えているがそれを避けるようマヤ()に祈れば面白そうとより引っかき回しそうで。


「なら聖女さまにヤキモチ焼かないように」

「……焼きませんから」

「後は、ちゃんと予定通りに戻ってこいよ」

「ん?」


 改めて荷物を背負い忠告してくるユースにロロベリアはジト目を向けるも、含みをもたせた言い方に首を傾げる。


「年越し祭、今年は姫ちゃんのいつもので過ごすんだろ」


 が、立てた小指をクイッと曲げ伸ばしするユースの意図に頬を緩ませた。

 クロと初めての年越しで交わした約束。

 年越しは家族でのんびりと過ごすクロと、家族で年越し祭に参加して賑やかに過ごすシロ。

 自分のやらかしから物置部屋で一緒に年越しをする際、毎年交互にお互いのいつもの年越しを一緒にしようと約束したが、クロとお別れしたことで叶わず終い。

 だから次の年越し祭は絶対にクロと一緒に参加すると、ロロベリアはこれまで参加しなかった。

 しかし今年は約束を叶える機会に恵まれた。

 予定通りに帰国すれば年越し祭に参加できるわけで。


「まあ、あいつはクロちゃんじゃないかもだけど、それでもな」

「ユースさん……」

「ずっと果たせなかった約束が叶うんだから、旅行中に姫ちゃんとして一緒に楽しむ約束を取り付けるように」


 もちろんロロベリアが交わした相手はクロであってアヤトではなく、アヤトには関係のない約束なのは理解している。

 それでもユースの言う通り、一緒に年越し祭を楽しみたいなら新たに約束を交わせばいい。

 例えクロでなくても、年越し祭でアヤトが一緒に居ることはロロベリアの心に潜むシロの気持ちが報われるだろう。

 ただアヤトが一緒に居ることで報われるのはシロとしての自分だけ。


「ユースさんも一緒に、ですよ」


 今を生きるロロベリアにとって大切なのはクロだけじゃないと微笑みお誘いを。


「もちろんリースも。今まで私の拘りに付き合わせていたし……シロはクロと一緒が良いかもだけど、ロロベリアとしてなら二人や……出来ればお義父さまやお義母さまとも一緒に年越し祭を楽しみたいとずっと思っていたので」


 アヤトだけでなく大切な家族と一緒に過ごす年越し祭を望むのは贅沢かもしれないがきっと幸せな時間で。


「マヤちゃんは今さらとして……姫ちゃんに遠慮しなくて良いなら、ラタニさんも加わりそうだな」

「賑やかな年越し祭になりそうですね」


 マヤは二人で過ごしていようと関係なく観察を楽しむだろうが、マヤだけでなくラタニもアヤトの家族として。

 みんなで迎える年越し祭に今から心が躍る気持ちでロロベリアとユースは笑いあう。

 問題は人混み嫌いなアヤトが年越し祭に参加してくれるかどうか。


「なら賑やかな年越し祭を楽しむために、一番厄介な自由人をちゃんと口説いとけよ」

「任せてください」


 ただその程度の困難で幸せな年越し祭を過ごせるなら安いものとロロベリアは自信を持って約束した。


「期待してるよ。そんじゃオレたちも気をつけて行ってくるわ」

「いってらっしゃい」


 そしてお互いの無事を祈り右手をパンと合わせてユースは馬車へ。


「…………姉貴も、早く行こうぜ」

「あと二日充電する」

「長い! というか姫ちゃんと一緒に教国行くつもりだろっ?」

「ならあと一時間」

「馬車が出発するわ!」


「あはは……」


 最終的にロロベリアの説得が実り、出発前から疲労困憊のユースと不満顔のリースを乗せた馬車を無事見送った。



 

教国へ行く前に出発したリースとユースのお見送りと、年越し祭についての約束でした。


少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして頂ければ嬉しいです!

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読んでいただき、ありがとうございました!


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