終章 不器用な感謝
いつもより遅い更新になってすみません……(汗)。
アクセスありがとうございます!
「ほいじゃロロちゃん、またね~」
「ロロ、気をつけて」
「こっちは任せとけよ」
ラタニとニコレスカ姉弟が見送る中、誕生日パーティーの片付けを免除されたロロベリアはアヤトと共に帰宅することに。
主役のアヤトはまだ分かるが、なぜ主催のロロベリアも免除されたかは――
『主役をボッチで帰すわけにもいかんでしょ。今回のパーティーはロロちゃん中心でやったなら、最後までエスコート。これ当然ね』
パーティー終了直後、ラタニの発案によるもので。
言うまでもなくロロベリアに対するご褒美か、はたまた少し遅い誕生日プレゼントか、どちらにせよ自分の知らないところでこのサプライズも打ち合わせしていたらしく。
故に後片付けは残りのメンバーで行うと実にらしい言い訳の結果、アヤトと初めての帰宅となった。
まあそのアヤトと言えば――
「やれやれ……」
二人きりになるなり大きなため息を。
普段の仏頂面に加えて疲労が滲むその様子は決して自身の誕生日を祝われたようには思えない。
本来好まない時間を過ごせば気疲れも仕方ないが、それにしてはいつもより覇気を感じない。
「もしかして……余計なお節介だった?」
故に不安からロロベリアは問いかけてしまう。
パーティー中、個々で祝いの言葉を告げされていた際も愛想はなくともアヤトはちゃんと一人一人と向き合い対応していた。
また屋台の料理が中心のパーティー料理でも文句を言わず一つ一つを味わっていたし、数少ない手料理も同じ。
ロロベリアがランやディーンに教わり自作したケーキは『クソ不味い』と辛辣な感想を口にしつつも完食してくれた。
ちなみに一口のみで引きつった笑みを浮かべるほどに不味いケーキをアヤト以外で完食したのはリースとミューズのみ……嬉しいやら悲しいやらの結果だったがそれはさておき。
基本アヤトは嫌なら嫌と口にするし、興味が無ければとことん興味を持たない。故に帰らなければ嫌ではないと捉えていたが、自分の為に開かれた祝いの席を拒むような人でもない。ラタニが言うように一見自己中に見えて根はお人好しなのだ。
「……お姉ちゃんに聞いたけど、あなた嘘を吐いてまで誕生日を教えたくないみたいだったし」
嫌々でも我慢していたのなら喜んでもらいたいと思う反面、自分がお祝いしたかったとの感情を押しつけた結果無理をさせたことになるとロロベリアは申し訳なく感じてしまい。
「騒がしい場とかも嫌いだし……」
「なんの話だ」
「え?」
俯き自然と反省の言葉を連ねていれば、隣から微妙に理解しきれていないアヤトの声。
「だってお姉ちゃんが誕生日を聞かれた時、記憶が曖昧で覚えてないって……」
「あん?」
なのでアヤトと視線を合わせて確認すればむしろ『なに言ってんだこいつ?』と呆れたの視線を返されてしまい。
「本当に覚えてなかったの……?」
「そもそも、隠す必要があるのか」
「あれ? でも自分の年齢とかご両親が亡くなられた年とか……もうすぐ一二才になるとかは覚えてたって。なのに生まれた日だけ覚えてないって……おかしくない?」
「父と母が亡くなった年数は覚えていたが、日付に関してはさっぱりだんだよ。俺が生まれたのも風精霊の周季あたり、程度だ。つーか実験の影響だけでなくマヤと契約をしたばかりだ、所々記憶が混濁しててもおかしくねぇだろ」
「……ごめんなさい」
反論を正論で返されてロロベリアはまず疑ったことを謝罪した。
確かに日付もわからない施設で非合法な実験を受け続けた上に記憶の一部を対価として失ったなら曖昧にもなるだろう。
「じゃあ……本当に覚えてなかったんだ」
「正確には頭の整理が出来るまでだがな」
「ん? じゃあ思い出してはいたの?」
「まあな」
「……どうしてお姉ちゃんに教えなかったのよ」
「テメェの誕生日はいついつです、なんざ聞かれてもないのに答えるか。どこぞの構ってちゃんじゃあるまいし」
「さすがの私も聞かれてないなら答えないわよ……」
むしろ聞かれて困ったくらいだとロロベリアは肩を落とす。
とにかくアヤトは嘘を吐いていたわけではなく、本当に忘れていて思い出した頃には聞かれなかったから答えなかっただけで。
「ならお節介じゃなかったのね……」
「ま、悪い気がしなかったならそうだろうよ」
「……良かった」
開催を決めてから今までの緊張が解れたとロロベリアは心からの安堵を漏らす。
相変わらず素直じゃなく、捻くれた返答をさてもアヤトは喜んでくれたのなら充分で。
なら満足と表情を緩ませしばし無言で歩いていたが――
「いつだ」
不意に端的な問いかけ、何のことかと視線を向けるとアヤトはため息一つ。
「むろん今日顔を見せた物好きな連中にも必ず返すが、なにより白いのに借りを作るのはゾッとすると言ったはずだがな」
そして視線を合わし、苦笑を浮かべて。
「さすがの構ってちゃんも聞かれないなら答えないんだろ」
らしい皮肉から、これまでのやり取りで何を聞いているかを理解する。
「……こう言うのって借りとか、返すとかじゃないと思うけど」
「主催はお前らしいからな。俺が恥じかいた分、他の奴よりもそれはそれは盛大に祝ってやるよ」
「別に私は恥をかかせたいわけじゃなくて……」
「遠慮するな」
「だから……私の話を聞いて」
いつものように自分の訴えを無視して勝手に話を進めるアヤトを批判するも。
いつもとは違ってロロベリアの表情には辟易ではなく幸せの笑みが浮かんでいて。
「本当に祝ってくれるのね」
「俺に二言はねぇよ」
「知ってる。でもアヤトは私をからかうのが趣味だから、ちゃんと約束しておこうかな」
「言いやがる」
立ち止まり、挑発的に左手小指を立てるロロベリアに肩を竦めてアヤトは左手小指を絡ませた。
「それはそれは盛大なお祝いよ」
「大恥かかせるくらいにな」
ゆびきりげんまん――
作者的にはこちらの方がありかな? とお誕生日会の内容は敢えて触れず、その後のやり取りで締めましたが如何でしたでしょうか。
アヤトくんは本当に不器用というか捻くれているというか……ですが少しずつ周囲に歩み寄ろうとしている姿勢になっているかな。
特にロロとですね、主催だからというよりもこの子ロロのお祝いを一番したいんじゃないか? と何気に思いつつ『シロとクロ』が『ロロベリアとアヤト』という関係性になりつつあると作者は感じます。
とにかく序列メンバー含め、アヤトにも様々な兆しが見えた第六章もこれにて終了……ではなくてですね、次回更新はもう一つの終章になります。
こちらも含めて『兆し』となる内容なのでお楽しみに!
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