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白き大英雄と白銀の守護者  作者: 澤中雅
第六章 兆しの精霊祭編
195/777

幕間 形無し

アクセスありがとうございます!



 序列戦の最後は激闘を繰り広げた序列保持者全員がフィールドに集い、観客らに向けての挨拶となった。

 ただエレノアの姿はないので全員とは言えないが、フィールドに戻ってきたレイドから精霊力を限界まで消費していたが命に別状はなく、翌朝には目を覚ますとの診断を伝えられ観覧席からは無事を喜ぶ声と、今一度エレノアに向けて惜しみない拍手が送られて。

 今回もっとも沸かせた主役が不在の最後となったが、それでも観客らの反応から序列戦は大成功を収めたと言える。


「随分と色男になったねぇ」


 閉会式が始まって間もなく観覧席の出入り口に移動したラタニはケラケラと笑う。

 観客に向けてスピーチを続けるレイドは顔こそ拭いたようだが身なりはボロボロ、顔にも痛々しい傷や痣が残ったままで。

 治療室にエレノアを送り届けただけで自身の治療をせずに戻ってきたのは観客を待たせない為の配慮だろう。


 ただ痛々しい姿とは裏腹にその表情は晴れやかで。


 レイドとは四年前に国王の頼みで暇つぶし程度に精霊術を教えるようになってからの付き合い。当時から王族といえど達観していて、打算的な考えや穏やかでもどこか冷めた笑顔はおおよそ子供らしくない印象だった。

 しかし最終戦でエレノアと殴り合っていた姿は今まで押さえつけていた感情をはき出していたようで。

 まあアヤトにボコボコにされ、ロロベリアの才覚を目の当たりにして、挙げ句帝国ではベルーザに敗北。これまで同年代では頭一つ抜けていた学院最強の序列一位も男の子としての意地がウズウズしたのか、それとも自分の背中をトコトコ着いてきていた可愛い妹の頑張りに当てられて兄のプライドがウズウズしたのか、その両方か。

 どちらにせよ今回の序列戦はレイドにとって良い時間になったのは間違いない。もちろん他のメンバー然り、両サイドに居た二人に然りだ。


「凄かったな」

「ロロも、みんなも凄かった」


 最終戦終了直後までニコレスカ姉弟は周囲と同じく熱狂していたが、今は普段通りリースは淡々と、ユースはヘラヘラとしている。

 しかし目付きから更なる飛躍が伝わった。

 二人にも序列戦は良い刺激になったのだろう。元より根は負けず嫌いな二人だが、更に上へ上へと見据えるのは良いことだ。

 気にかけている若き可能性の変化にラタニもまた満足で。


「さーてとん、そろそろ戻っておこうかにゃー」


「――ラタニさん」


 閉会式を最後まで見届けることなく階段を下りようとしたラタニを呼び止める声が。


「最後までご覧にならないのですか?」

「まあねん。ケーちゃんのお墨付きとはいえ、抜け出してるのばれたらアヤトが怒るんよ」


 しかしラタニは立ち止まることなく後頭部に両手を当てて歩を進め、代わりに呼び止めた見窄らしいフードを被った男が足早に追いかける。


「? よく分かりませんが、なら途中までご一緒に」

「別に構わんけど、あんたこそ最後まで見なくていいのかい?」


 視線も向けず隣りに並ぶ男に人気も無いなら構わないとラタニはため息一つ。


「つーか第一王子さまがこんなところに居てよく顔ばれせんかったね」

「私が到着したのは最終戦の直前でしたから、誰一人見向きもしませんでしたよ」


 と、フードを取り苦笑気味に答えるのはレイドやエレノアの兄、アレクで。

 もし観客に気づかれれば大騒ぎになっていただろうと呆れながらもラタニは咎めることなく、代わりの質問を。


「んで、第一王子さまがラナクスくんだりまで足は込んでなにしてんの。精霊祭でナンパの一つでもしようとしたん?」

「上手く休暇が取れたのでレイドとエレノアの応援にと思いまして」


 ラタニの軽口をさらりと流しアレクは目的を口にする。


「まあ序列戦の話をしてくれたのはエレノアですが……まさか二人が戦うとは思いませんでした」

「お陰で両方の応援に間に合って良かったねー。にしても、レイちゃんやエレちゃんもだけど王族が護衛も付けずうろちょろすんなよ」

「学院内だからこそですよ。それにここには王国の二大戦力が居ますから、王国で最も安全な場所と思いますが?」

「なんであたしが休暇中にあんたの護衛せにゃならんのよ。アヤトもあんたの相手する暇有るならロロちゃんに構うっての」

「そういうつもりで言ったわけではないんですけど……」

「ならそう言いなさいな。そんで、可愛い弟妹の頑張りはどーだった? 次期国王さま有力候補ってふんぞり返ってる暇ないって焦ったかい?」

「……ふんぞり返ってはいませんよ。レイドだけでなくエレノアも、多くの民に愛され、王としての資質がありますから。私は常に危機感を抱いています」


 歩きながらラタニ相手に軽快な会話を続けていたアレクは立ち止まり、ラタニを見据えて自信に満ちた、しかしどこか自身に言い聞かせるように言い放つ。


「ですが王位を譲るつもりはありません」


「……ふ~ん。いつのまにか野心家になっちゃったんね、先輩悲しいわ」

「別に、そういうわけではなくてですね……」


 にも関わらず歩みも止めず興味なさげに流され、アレクは肩を落としつつ追いかける。


「私はただ、()()()()――」

「まあいいや」


 今度は語気を強めて訴えるも、不意に立ち止まったラタニが遮った。


「休暇中ってことなら()()()()()()()()()()?」


「は……へ……?」


 まさかの誘いにアレクは面食らった。


「実は精霊祭終わった後にさ、あたしの可愛い妹が楽しいイベントを開くんよ。もしよければ参加してはくれんか」


「……ああ、そういう」


 だが思っていたとは違う誘いにアレクは再び肩を落としてしまう。


「……その、可愛い妹というのはリーズベルト嬢のこと、ですよね?」

「他に誰がアヤトの嫁さんになってくれる物好きな子がいるさね」

「……多く居そうに思えますが、それでイベントというのは?」

「それがさ――」


「――おい」


 アレクの質問に答えようとするも、今度はラタニの言葉を遮る声。

 まあ相手がラタニと第一王子のアレクという組み合わせにも構わず、平然と声をかけるような者は少なくとも学院内にはアヤトくらいなもので。


「テメェは仕事サボって何してやがんだ」

「いやいや違うんよアヤト。ケーちゃんに行っておいでって勧められただけで、サボってはないんよ」

「嘘くせぇがまあいい。なら第一王子さまとのお話が終わればさっさと戻れよ」


 更にアレクを無視して用件だけ告げるような者もアヤトくらいなもの。


「戻る戻る。んじゃ、さっきの話に興味あればレイちゃんかカイちゃんにでもお聞きなさいな」

「え? あ、はい……わかりました」


 というよりこの師弟、自分から誘っておいて半端なまま他者へ丸投げしたラタニはアヤトの元へ。


「なんの話だ」

「あんたには関係ないお話?」

「なら良い」

「……少しは興味持とうぜアヤチン」

「誰がアヤチンだ」


 そのままアレクの存在を忘れたように二人は去ってしまい。


「…………はぁ」


 自由気ままな師弟のぞんざいな扱いにアレクは深いため息を吐いた。




第一王子のアレクが久々の登場……ですが、この師弟に掛かれば現在最も王位に近かい王族だろうと形無しでした。初登場よりも喋ってたのにね……。


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