幕間 一方その頃
アクセスありがとうございます!
「リーちゃん、ユーちゃん。相席いいかにゃ~」
第三試合が終了して間もなく、周囲の笑いや談笑に紛れて聞き慣れた声が。
「……どうしてここにいる」
「サボりっすか」
視線を向ければ予想通りラタニの姿。
しかし今はカフェの手伝いをしているはずとニコレスカ姉弟は訝しむも、ラタニは平然と手をパタパタ振る。
「サボりちゃうちゃう。ティーちゃんが用意したお手伝いさんが有能でさ、ケーちゃんも余裕あるからこっちの様子見てくればって勧めてくれたんよ」
実際にティエッタの使用人は有能で戦力としては充分だが、アヤトやカナリアといった叱り役が不在になるなりラタニが使えなくなったのでケーリッヒがやんわりと戦力外通告をしたのだがそれはさておき。
「あたしもアヤトに教え子の成長見守れってほざいたし、ちょうど良いかもってね。ただ一人で見ててもつまんないから、二人を探してたわけ」
「特別講師っすからね。ただ相席つっても空いてる席ないっすよ」
特別講師のラタニなら整理券もがなくとも顔パスで入場できるも立ち見も踏まえて座席はなく、まさか隣りの者に譲らせるわけにもいかない。
「ここで良いよん。てなわけで、どっこいしょ」
だが問題ないとラタニが腰を下ろしたのはリースとユースの前。
最前列なので前に誰も居なくフィールド内が見える位置とはいえ、通路に座り込むのはどうかと思うがそこはラタニ。周辺の観客から奇異な視線を向けるが二人は呆れるのみでなにも言わない。
「んでんで? 今どんな感じ? つーかモーちゃんはなんでボロボロのディーちゃんに説教してんの?」
「ああ、それはっすね――」
矢継ぎ早な質問にユースはこれまでの対戦カードと結果、説教の経緯を簡潔に説明。
「なるほーろねー。んじゃ、あたしがモーちゃんを説教だ」
「……なんでそうなるんっすか」
したはずなのにラタニは意味不明な宣言、ユースは肩を落としてしまう。
「いやだって暴発狙いなんて状況や集約する精霊力の異変で気づけるし、ガキ共のケンカの審判するならそれくらいの判断してやるのが見守る大人の責務ってもんでしょ」
「それくらいって……」
「もちね、意図的な暴発って危険な行為にはメッて注意するのも責務。ただ必死ぶっこいて勝とうとして頭使いまくったガキの頑張りまで否定しちゃあかんよ。それにガキだからこそ、何しでかすかわかんないんだから、そこ踏まえて見守ってやらんと」
「…………」
「だからこんな方法もあるっしょ、その為にはこんな訓練しな、みたいな助言も踏まえてメッてしないと説得力ないし、メッてされた側は萎縮しちゃって可能性潰すことになるからねー。要はガキの頑張りをただ危険だから、無謀だからって理由で叱りつけてるくせに、自分は暴発狙い程度の判断できなかったモーちゃんもお説教されるべきってね」
「……そっすね」
「ラタニはたまに良いこと言う」
ただ叱るだけでなく成長を促す助言、子供だからこそ可能性を潰さないよう配慮するのが大人の責務との持論を聞いてユースだけでなくリースも感心を。
普段は威厳もない、ユルユルなラタニだがこうした持論を口にするだけでなく実践しているから多くの学院生に慕われているのだ。
「とにかく一回戦はロロちゃんが聖女さまに勝って、二回戦はシーちゃんがランちゃんに勝って、三回戦はフロちゃんが勝ってディーちゃんが笑いを掴んだと。随分おもろいケンカしてんねー」
「確かにディーン先輩のオチも含めて、見応えあるっすね」
「特にロロちゃんが聖女さまにね~」
「ラタニさんには意外な結果だと?」
「ロロが負けると思ってた?」
うんうんと感慨深げに頷くラタニの様子にユースは興味本位に問いかけ、リースは親友を過小評価されたと睨み付ける。
「ん~……なんつーかあたしの見立てで聖女さまはアヤトが楽しめそうな遊び相手に入ってたから、ちょい驚きビックリしただけ? みたいな」
赴任時にラタニが予想し、アヤト自身も目を付けた遊び相手は四人、その一人にミューズが含まれていたことが予想外で二人こそ驚いてしまう。
というのもミューズは噂以上の実力者、特に鉄壁とも言える防御はロロベリアでさえ崩せず、リースも抜けるビジョンが浮かばないほど。
だが闘争心の乏しさも噂以上、膨大な保有量を持ちながら使用した精霊術は迎撃と霧を生み出す補助的なものだけ。
よく言えば優しい、悪く言えばやる気を感じさせないミューズのスタイルを目の当たりにしただけに、アヤトの遊び相手としては妙な違和感がある。
「でもま、今はロロちゃんが一番楽しい遊び相手になってるわけだし? よく考えればこの結果も当然か」
「まあ、現にオレも遊び相手候補だったけど、今じゃ興味ないらしいし」
「ロロが強くなった、それだけ」
それでもアヤトの遊び相手は実力よりも意外性、なんせ同等の実力を持つ相手がいないだけに基準そのものがあやふやと結論づけた。
「それよりも残るはレイちゃん、カイちゃん、ティーちゃんの三強にエレちゃんか。顔ぶれ的に面白いメンバーだねぇ」
「実力は当然、家柄も申し分ないっすからね。どの組み合わせでも期待感半端ないっすよ」
ラタニの意見にユースも同意しつつ苦笑する。
序列四位のフロイスは精霊士、つまり学院生四強の精霊術士が残った。
カナリアの私感ではエレノアが若干劣るも、これまでの三戦で二人の序列上位者が敗北、勝利したフロイスも決して楽な試合内容ではなかっただけに盛り上がること間違いなし。
ただここにいる観客は恐らく別の期待感から、次の対戦カードに興味津々で。
お説教を終えたディーンが肩を落として退場し、入れ替わりでクジ箱を手にフィールドに現れたグリードにみなが注目し。
モーエンが引いた二枚の木札を読み上げるなり地響きのような大歓声が起こった。
「これも神さまのイタズラ?」
「いやいや、マヤはこの子らのケンカに興味もたんって。つまりマジ偶然でしょ」
「どちらにせよ、先にやるだけマシでしょうね」
あまりに出来すぎた対戦カードに各々が感想を口にする中、序列メンバーが控えている観覧席で立ち上がったのはカイルとティエッタ。
「……やれやれ」
「良き試合をしましょう」
つまり第四戦は序列二位と三位の好カードに決定。
同時に最終戦はレイドとエレノアの王族同士の対決が決定した。
序列戦が始まってから出番の無かったリースとユースにラタニが合流、まあラタニらしい理由ですがこれで役者も揃った感があります。
そして第四戦はカイルとティエッタ、結果として最終戦はレイドとエレノアに決定!
それぞれがどのような戦いを繰り広げるのか、まずはカイルとティエッタの対決をお楽しみに!
みなさまにお願いと感謝を。
少しでも面白そう、続きが気になると思われたらブックマークに登録、評価の☆をお気持ちのまま★にして欲しいです!
更に『いいね』をポチッとお願いします!
また感想、誤字の報告もぜひ!
作者のテンションがめちゃ上がります!
みなさまの応援が作者の燃料です!
読んでいただき、ありがとうございました!